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河童の皿箱
2026-07-12 21:11:40
54481文字
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多分投稿してなかった文章まとめ(遊戯王)
文章データをひっくり返していたら出てきたものを纏めた。多分古い順。
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この背中を追うのは、これで何度目になるのだろう。大きな体に、大きな背中。見上げれば、歩くにつれて揺れる、冴え渡る青空の様な髪。てくてくついていけば、彼はいつも、こちらの小さな歩幅に合わせて歩いてくれる。
今日は、良い天気。空にわずかにかかる雲の奥、お天道様がご機嫌で、まさに春うらら。雪はすっかり暖かさに解けて、堀を流れる水になっている。
だいぶ歩いたな、と、龍の声。ここらで一休み、とベンチに腰掛けた。自分もその隣に座れば、草花の香りが風と共に通り抜けていった。桜の木が揺らぐ。ひらひらと、花弁が舞い落ちる。ひゅうとひときわ強い風が吹けば、それはまさしく桜吹雪。道端に落ちた桜色が風に舞い上がって
…
。
「うおっ!?」
花弁が襲いかかる。思わず顔を覆う。はたはたと、柔らかな。妖精が歩いたら、きっとこんな感じ。通り過ぎるのを待って、ぱたぱた腕を振れば、彼の優しい目はすっと細くなって、口はへにゃりと笑った。
「っははは、すっげぇ付いたな。ほら動くな、取ってやる」
「ん」
ごつごつとした大きな手が、頭についた桜をひとつひとつ払う。毎日毎日筆を持って、たこができては潰れて。ずっとずっと前に巻いた包帯はすっかり取れて、それもまた彼の手を作って、そして彼の手は、煌めく世界を作り出して。
ひとつふたつ落ちていく。でも、まだまだ降ってくる。ふ、と足の赴くままに。桜吹雪の中心へ。花弁が風に揺れて、ひらり、ひらりと。そのひとつを捕まえては、またひとつ。桜が誘うままに足は跳ね、手は伸びて。なんの型にも当てはまらない、ただただ心の躍るまま。
揺らぐ視界の中には、鮮烈な青空に溶けるかのような、澄んだ青色。紅を引く目尻も今日はお休み。粋がりたい彼の、あるがままの姿。舞台の上で歓声を浴びる時と、今は違う。桜が舞い散れば、降ろされた空色の髪はたおやかに、ゆらゆらと。
あの目に込められた心を、知っている。ずっとずっと一緒にいたから、知っている。穏やかな目に、この目もつい釣られてしまって。
幾度目かの花吹雪。舞い上がる。クルクル回れば、嵐の中心に己がいるかのよう。そしてぴたりと手を伸ばせば、爪の先へと降りてきた妖精を捕まえた。きっと、良いことがある。ふらりと隣まで来た彼の青空にも、妖精は降りていた。それも逃さない様に捕まえれば、あぁ、なんて愉快そうに。
その笑顔が、どれだけ勇気をくれただろう。どれだけ、この足に力をくれただろう。
だからこそ、この鱗を捧げてもいいと、そう思ったんだ。
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