河童の皿箱
2026-07-12 21:11:40
54481文字
Public
 

多分投稿してなかった文章まとめ(遊戯王)

文章データをひっくり返していたら出てきたものを纏めた。多分古い順。


(没)

 照りつける閃光のグレア、指し示すはスポットライト、向けられるのは無数のカメラ、無数のマイク。数多のマスコミがこのビルの一角に押し寄せては、光の中の椅子に寛ぐように座る男に、釘付けになっていた。
 鍛え上げられた肉体、青い髪に交じる鮮やかな色彩、顔を覆うサングラスと隈取りに、至極余裕そうなニヤケ顔。男、名を娑楽斎と云う。伝統芸能集団P.U.N.K.のリーダーであり、浮世絵師であるそう、それが誰もが知る彼の姿であり、そしてそれが、人々の知る彼の姿の全てでもあった。天空の不夜城に彗星のごとく現れた彼らは、またたく間に歴史を塗り替えた。故に人々は追い求めた。この男は何者なのか、と。だが、彼らは実に、実に、芸術に夢中であった。描く未来を、巧みなる過去に人々を引きずり込み、けれど口は沈黙を貫いていた。
 千載一遇、一攫千金。誰もが視線を向ける、注目のインタビュー。このイベントを十全に終わらせれば、繁栄が待っている誰もが皆、そう信じた。刻一刻と開始時間が迫る。けれど男は不敵に笑うばかり。

 さあ、時計の針が午前2時を告げる。一斉に飛び交う声と声。押し寄せる人の波。けれどそれらが男に触れる直前、部屋は黒い霧に包まれた。どこだ、何処へ行った。折角縛れたのに。騒然の最中、ある人は叫んだ。居ない。やられた。アレははじめから幻だったんだ、と。
 落胆に散ってゆく人々。怒りに身を任せて椅子を破壊する人々。縛り上げていたはずの肉体は消え、代わりに縄のみが残されていた。

 誰もが去った部屋。ふ、と。霧の主は姿を見せては、溜息をつく。これだから嫌なんだよな、とごちれば、傍らには同じ姿が目を細め、優雅に笑っていた。何、あとは帰るだけであろうに。そりゃあそうだけどよ。やり方ってもんがあるだろ。