河童の皿箱
2026-07-12 21:11:40
54481文字
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多分投稿してなかった文章まとめ(遊戯王)

文章データをひっくり返していたら出てきたものを纏めた。多分古い順。


([Realiz E ation]の現行版を書いたうえで、途中の展開を書いて没ったものだったと思う)

「よっ、坊主。昨日はお疲れさんだったな」

「シャラクサイさん大丈夫なんですか? すっかり昏睡していましたけど」

「あぁ、もう動けるし問題ねいってぇ!」

 ばし、と、後ろで頬を膨らますセアミンさんに、シャラクサイさんは引っ叩かれた。

「た、叩くこたぁねう、ぅっ

 抗議しようとした瞬間にふらつき、そしてすぐセアミンさんに支えられた。

「見ての通り、まだ大丈夫じゃない。とりあえず、入って。座って話したい」

「あ、はいお邪魔します」

 今のセアミンさんからは、覇気というか、オーラというかそういうものが感じられて、逆らってはいけない気がした。
 部屋に通されて、セアミンさんもシャラクサイさんも靴が脱いだから、それに倣って靴を脱いで上がる。そこには、ミュージシャンと、パペッティアもいた。セアミンさんは、壁際にシャラクサイさんを座らせて、「安静に」と釘を刺した。ぐうの音も出ないのか、それとも僕たちが感じているオーラをシャラクサイさんも感じているのか、もう抗議はしなかった。

「それぞれ楽に座ってくれ。俺もこんなだしな。さて、改めて自己紹介させてくれ。俺は娑楽斎。P.U.N.K.の浮世絵師だ」

「同じく。P.U.N.K.の能楽師、セアミン」

「同じく。P.U.N.K.の雅楽師、ワゴンと申す」

『同じく。P.U.N.K.の文楽人形師、Mme.スパイダー言います。以後よろしゅう』

「あ、とファイアスターターです」

「ファイアだ」

「ミスティガールあ、コードネーム、です」

「コードネーム、エージェント。及びデスブローカーと言う。先日の協力に感謝するとともに、公演の著しい妨げになった件について、謝罪する」

「あー、そういうのはいいって。こうなる可能性はニュースやれなんやれで、計画時点で頭に入れてたしさ。幸い1人として怪我人も出なかったってか、アンタらの責任じゃないだろ、あれはもう。あんな大規模な襲撃、事前に予測できたってどこにも影響を出さないなんてのは無理だ」

理解に感謝する」

「それで、だ。おそらく1番疑問を持っているだろうことについてひとつずつ説明するか。P.U.N.K.は全員サイキッカーなんだ。俺もセアミンもワゴンもスパイダーも、全員な」

「え、サイキッカーって

「平たく言えば超能力者。サイコキネシスやれテレパシーやれテレポートやれの基本的なのは全員使える。んで、それぞれで特色がある。俺の場合は、描いた絵に不可思議な現象が起きる。アンタらがみた通り、描いた絵がひとりでに動いたり、実体化したり、だな」

「あ、あれはサイキック能力だったんですね?」

「そ。で、俺らの超能力はな、テンション上がったりとか、盛り上がってる時にめちゃくちゃ強くなる。ワゴンやスパイダーの演奏がなかったら、ああやってドラゴンを実体化し続けるのは無理だった。ただそーやって強い力を使ってる間は、脳みそフル稼働で精神力がごっそり削られちまってな。気絶までの余力を見誤ったのは俺の責任だ。セアミンのフォローがあったとは言え、恐ろしい目に遭わせてすまなかった」

「あ、いえそんな、謝らないでください」

「ってか、なんで見誤ったんだ?」

「第一に、俺たちは芸術集団だ。イベントや公演には慣れているが、戦闘には慣れていない。で、俺たちの超能力は、心の状態にがっつり影響を受ける。消耗が激しいことをしていた上、慣れている状態ではなかった、というのがひとつ。第二に、あの怪物どもを5体同時に風で巻き上げただろ? あれ、いつもは4つまでなんだが今回は5つ、渦ができた。その影響を小さくみていたのが、ひとつだ」

「その、渦が1個多かった原因はわかるんですか?」

「いやわからん。そもそも、あんな使い方するのはめちゃくちゃ珍しいからな大抵はパフォーマンスにしか使っていない」

「結構いい風だったのに、戦いには使ってねぇのか」

「繰り返しになるが、俺らは芸術集団だからな。とはいえ、こうして出先の土地で起きる……異常事態へは、備えてる。つっても、今回みてぇなことしかはぁ、できねぇ、けど」

「娑楽斎。休憩」

……あー、わぁったよ」

 セアミンさんに支えられながら、シャラクサイさんは横になる。カラーサングラス越しだけど表情が、ぼうっとしてきている気がする。

「補足。P.U.N.K.で1番エネルギーを使うのは、龍を呼び出している状態の娑楽斎。1回使い切ると脳が疲れ切っちゃう。動くのも、起きてるのも大変。回復するまでは、絶対安静」

「今日は絵描きも禁止にせねば」

「そ、それは勘弁してくれよ! せっかく描きてぇのがあるのに!」

『まずは元気になってからどすえ。無理して動いたらどないな後遺症出るか、わからしまへんさかいね』

「後遺症?」

「P.U.N.K.の超能力の源は、心や精神力。この分野は、過度な使用で心の変容が起きた事例報告が見られる。まるで人が変わるみたいな、依存症みたいな、そんなイメージ。だから、普段のP.U.N.K.は普通の人と同じように、超能力は使わず生活する。パフォーマンスには、芸風として活かす。それを無理やり、戦闘に転用したのが昨日。貴方たちがいてくれなかったら、娑楽斎がそうなってそうなっていたのかも、って。そう考えたら、すごく、すごく、怖い。だから、手を貸してくれて、ありがとうございます」

 セアミンさんはそう言って、頭を下げた。きっと、怒っているのはその心配があってのことなんだろう。続けて、ワゴンさんやスパイダーさんも頭を下げた。

「私達にとって娑楽斎はなくてはならぬ存在だ。無論、それは誰であれ変わらない。誰ひとりかけることなく日の出を迎えられたのは、他でもない貴方がたのおかげと存じる。感謝申し上げる」

『そも、あの怪獣は一体なんやったのやろう。お話、お聞かせ願えるのん?』

「はい。あれは、本の中のヴィランが人を乗っ取って、現実世界に実体化した姿なんです。昨日の怪獣も、最近刊行されたコミックスのヴィランなんです」

「補足させてもらおう。昨日の事件で保護されたのは5名。全員意識もあり、会話可能、負傷もなかった。このように、体を乗っ取られ、それで交戦したと言っても、基本的にはヴィラン本体との戦闘となる」

「じゃあ、人を傷つけたとかじゃ、ない?」

「はい、その認識であっています」

よかった」

「ヴィランがなぜそんなことをするのか、なぜそれができるようになったのかは、まだわかっていません。ただ、それができるのはヴィランだけじゃないみたいで。ファイアはヒーローなんですけど、僕に力を貸してくれたんです」

「そ。俺も元はコミックスのヒーローだ。ただ、なんで出てこれたのかは全くわからねぇ。この少年が少女を助けようとした時に、俺は初めて誰かに力を授けられたってぐれぇだな」

「私も、この絵本に登場する妖精が力を貸してくれているんです。その子もやっぱり、なぜできるのかまでは……

「これらについては現在、魔術的要因及び超能力的要因の双方から調査中だ。科学的な要因はほとんどありえないだろう。だが、各地でこのような事件が発生し続けているのも事実。そこで出動するのが私達本の力を借りる術者たち。便宜上、リブロマンサーと呼称している」

「なあ、ヴィランでもヒーローでも、出てくる本の媒体に規則性はあるのか?」

「いいえ僕はコミックスで、彼女は絵本、エージェントさんは小説基本的には絵があれば出てきちゃうかも」

「前は画集とかから出てきてたよね?」

「画集からも、か……しっかし、難儀だな」

「あぁ。リブロマンサーは現状、我々3人しか確認されていない。対策が進まないのが現状で、ことが起きてからでしか対処が不可能なんだ」

「そうか。知った以上、力を貸せたらいいんだが、生憎こんなんだし俺たちにもスケジュールがあるからな。とはいえ、ここで出会ったのも何かの縁。せめて連絡先だけでも交換しないか? 絵や超能力のことなら、普通よりもちょいと知識はあるしファイアのことも気になるしな」

「は? 俺?」

「俺が原因じゃねぇ絵の実体化だなんて初めてなんだよ。こんな具合じゃなきゃもっと話したいところだ。なぁ、せめて手だけでも握らせてくれねぇか?」

別にいいけど、ただの手だぞ?」

 そう言って、体を起こした娑楽斎さんに、ファイアは手を差し伸べる。そっと両手で包み込むようにしては、まじまじと観察しているようだった。

……すっげ、マジでただの人の手だ体温もある、血も骨も筋もある。気付けないわけだ。元が漫画なら描き方は写実主義じゃねぇだろうし画材も最終的にゃぁ印刷インクだろ? いや、媒体は関係ねぇのかどういうことだ? ってかコミックスなら量産品のはずだよな。なんで坊主のだけ昨日は坊主を変身させてたしなあ坊主、こいつのコミックス持ってたりしねぇか?」

「あ、あります! えっと

「おい少年?」

「これ以上は、ダメ。止まらなくなる。今は休むのが最優先、やるならまたの機会」

「ぐっま、セアミンのいう通りか。ファイア、あんがとよ」

「お、おう

 こんなに戸惑ってるファイアを見たのは、初めてかもしれない。まあでも、こういう興味のもたれ方をするのは初めてか。こんなに興味を持ってくれてるんだから、見せたかったなぁ、コミックス。でも、具合悪そうだし、仕方ないか。

「これ、連絡先。」