はるの
2022-10-07 21:33:22
86681文字
Public X-MEN
 

ムーンレイカー

全年齢|cherik|2022.10.7|DP後、チャールズが人生に一区切りつける話。チャールズの過去をフリ~~~ダムに捏造しています。



インタビュールーム - 05


「おはよう、チャールズ」
 おはよう、ドクター。
「気分はどう?」
 可もなく不可もなく。
「夜は眠れている?」
 ねえ、ドクター。私はもうすっかり両親のことを話してしまったし、もうほかに言うことがないんだ。音楽を聴きながら紅茶でも飲まないかい? 確か、シュトラウスのCDがあるはずだよ。
「いいえ、チャールズ。あなたにはまだ語っていないことがある」
 そうだね、それは山ほどある。つまり、それは誰だってそうさ。なにせ、人ひとり分の人生だ。どんなに言葉を尽くしたって、すべてを説明できるはずがない。
「それは、もちろんそうでしょう」
 君が私から聞き出さなければならないことは、もうさほど残っていないだろう? 私は幼少期の愛情不足が原因で、家族というものにコンプレックスがある。以上だ。
「あなたはそのコンプレックスを満たすために、ジーン・グレイを引き取ったの?」



「おはよう、チャールズ」
 おはよう、ドクター。
「気分はどう?」
 比較的良いよ。
「それはよかった。あなたがいいなら、このまま続けても?」
 構わないよ。けれどずっとインタビューばかりで、君も疲れたんじゃないかい?
「僕のことは気にしないで。あなたが気にする必要はない」
 そうかい? でも、たまには音楽を聴きながら、ただ紅茶を楽しむような時間を取ってもいいと思うけど。たとえばほら、シュトラウスなんかを聴きながらさ。
「けれどチャールズ、あなたにはまだ語っていないことがある」
 ……そうだね。君が知りたいことは何?
「あなたのことです」
 ずいぶん漠然としているな。たとえば?
「たとえば、あなたは自身の不遇の幼少期と、不遇の境遇にあったジーン・グレイを、同一視していたの?」
 ねえ。
「はい」
 ……君に、そんなことを話すのは、よくないと思うんだ。
「何故? 僕は尋ねる人で、あなたは話す人、そういうインタビューだよ」
 本当によくないと思う。とてもよくない。
「いいも悪いもないよ。話すことがあるなら話して」
 それを話して、話すことで、君のための何かになる?
「僕の?」
 これをすべて話してしまったら、君にとっての何かいいことになる? 私はそうは思えない。
「僕のことは考えなくていい」
 何故? 考えるべきだ。私はさんざん、君を傷つけただろう。もう君のよくないことにはなりたくないんだ。君がよいと思うものだけになりたい。これ以上君に嫌われたくない……
「チャールズ! チャールズ、分かった。分かったから。そうだね、今日は音楽を聴きながら紅茶を飲もう。僕が淹れるから、君は音源を用意して」
 まるで子供をあやすみたいに言う。
「それそのものだと思っているよ。君は昔から、手のかかる男だった。だから、これくらいどうってことない」
 本当に? 本当に、そう思ってる?
「そう思ってる」
 でも結局、これも私が言わせてるんだろう?
「ある意味では、そうかもね」
 ハンク。
「さあチャールズ、紅茶を淹れるから。それともあなたが淹れてくれる? でも、あなたは大雑把なところがあるからな。ほら、ぐずぐずしないで」