インタビュールーム - 01
「おはよう、チャールズ」
おはよう、ドクター。これはつまり、カウンセリングの一種かな?
「そうだね。そう定義してもいい。けれどあなたにとっては、ただのインタビューかもしれない」
それは、私が君の心を読んでしまうから、という意味で?
「あなたは心理学にも造詣が深いから、という意味で」
造詣が深いことと、実践できるかは別だよ。つまり、君は私の状態を、根掘り葉掘り探らなければならない、というわけだ。うつ病なのか、そうじゃないのかとか。投薬は必要か、だったら何をどのくらいだとか。そういう判断のために。
「たとえば、よく眠れている? というようなことを」
眠れている
……、と、思うけれど。どうだろう、よく思い出せないな。
「気分はどうかな」
今の? そうだな、少し暑い気がする。窓を開けてくれないか。
「窓を? 今すぐ?」
今すぐ。面白いね、これは強迫観念かな。空気が通っていることを感じたいんだ。
「分かった。少し待ってくれ」
私の状態か。よく考えてみれば
……、少し、記憶がつながらないところがある。私は倒れでもしたのかい?
「記憶がつながらないとは?」
私は、車に乗っていたはずだよ。まだ誰も起き出してこない無人の廊下をぐるりと回って、学園から出てきたはずだ。とても静かで
……、静かだった。それから
……、どうなったっけ?
「それは、僕にも分からない。学園から出たとき、誰かそばにはいた?」
いいや。
「ひとりで?」
ひとりで。それで十分だったから。
「そう
……」
おかしいな。運転中に倒れたりしたら、それこそ事故でも起こしていそうなものなのに。私はこのとおりピンピンしているし
――、もちろん、足はこのとおりだけど。木にぶつかって自損して、気を失ったりしたのかな。それで自分の不甲斐なさにもう何もかも嫌になって、間抜けなシーンは全部健忘してしまった? だとしたら、器用なのか不器用なのか分からないね。本当に忘れたいことはそこなのかって
――、ああ、ごめん。私ばかり話しているな。
「このインタビューはそういう趣旨のものだから。続けて」
いや、もう続かないよ。続けて、と言われて止まってしまうのは、ひどい天邪鬼みたいで心苦しいけど。
「分かった。それじゃあ、今日はこのへんにしておこうか?」
挨拶だけしかしてない気がするよ。いいのかい?
「何事も挨拶は肝心だって、あなたも言っていたじゃないか」
そんなこと、言ったかなあ。それに、やっぱり今日だけじゃないんだね。この、インタビュー? インタビューって、ちょっと笑っちゃうな。君、ちゃんと録音はしてる? タイム誌に載せる記事ができたら事前に見せてくれよ。
「これは記事にはならないし、書き起こしたりもしないよ」
ああ、うん。分かってる。冗談だよ。君、真面目だね。
「こんなところでふざけるあなたが奇特なんだ。もちろん、このインタビューは必要な分だけ続くよ」
次はいよいよ、家庭環境とか、幼少期のトラウマとかを掘り起こされるのかな。
「あなたのその言葉が指針になる。あなたが必要だと思うことは、だいたいが必要になる」
ごく最近、そうでもないと思い知ったばかりなんだけどね。
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