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はるの
2022-10-07 21:33:22
86681文字
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ムーンレイカー
全年齢|cherik|2022.10.7|DP後、チャールズが人生に一区切りつける話。チャールズの過去をフリ~~~ダムに捏造しています。
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とある冬の話 - 06
小鳥はふさぎ込んでいるようだった。
書き物机から曇り空の窓を眺めている小さな肩は、かたくなでそっけなく、僕は用もないのに無性に声をかけたくなる。
「散歩に行こうか?」
「行ってらっしゃい」
「音楽でもかけようか?」
「どうぞご自由に」
「おなかがすいたかな」
「わたしはすいてないわ」
僕はとうとう途方に暮れて、ひとりで散歩に出かけた。ちょっと頭を冷やそうと思ったのだ。
通りかかった広場で、露天のバザーが開かれていた。新鮮な野菜や果物、甘いおやつ、生活雑貨から民芸品、そんな雑多なものが並ぶ店先を、僕は首を伸ばして巡回する。小鳥の好きそうなものを買っていこう、と思いついたからだ。
小鳥の好きなもの。
新鮮なレタス。焼きたてのクロワッサン。
ああだめだ、これはエリックにしか持ち込めない。
そうしたら、このオレンジはどうだろう。小鳥は明るいものが好きだった。明るくて華やかなものが大好きなのだ。
小さなブーケ。きれいなブローチ。かわいいパッチワークのコースター。
僕はろくに考えもせず、目についた明るく華やかなものを、片っぱしから買いあさった。両手いっぱいに抱えてから、なんとかかんとか帰宅する。
のこのことリビングに現れたそんな僕に、小鳥はぴゅいっと高い声を上げた。
そしてあわただしく飛んでくると、僕の顔の周りを回る。
「どうしたのよ、こんなにたくさん」
「君へのおみやげだよ」
「わたしへの?」
「君だけの」
「わたしをもので釣る気なのね」
僕のすがりつくような声に、小鳥は警戒して距離を取った。僕は悲しくなってしまって、きっと情けない顔になっただろう。
「もしも釣られてくれるなら、こんなにうれしいことはないよ」
スタンドルーペに止まった小鳥は、その言葉を吟味する。少しの間、考え込んで、小鳥は再び飛翔した。
「わたしがいなくなったら、さみしい?」
なんだかちょっと得意げだ。小鳥はちょんと僕の肩に止まると、そんな意地悪なことを言った。けれど僕としては、もはや願ったり叶ったりだ。
お土産をテーブルに並べていた手を止めて、僕は自身の肩を見下ろす。つぶらな瞳、傾げられた首、何もかも小さくてかわいい、僕の小鳥。
「さみしいよ。だから、いなくならないでくれ」
なんなら明日も明後日も、君の好きなものをなんでも買ってきてあげるから。
僕ができるすべてのことを、すべての僕をささげるから、ずっといなくならないで。
「ねえ、音楽をかけてよ」
小鳥は軽く飛び上がると、ひらりと気楽に飛んでいって、オーディオの前に降り立った。
土曜日の夜は、3人でイルミネーションを見に行った。
小鳥は僕の肩に乗ったり、エリックの肩に乗ったりして、せわしなくベストポジションを探ったのち、一番見晴らしがいいという理由でエリックの頭の上に落ち着く。エリックはとても居心地悪そうにしていたけれど、僕はそのシルエットも表情も、何もかもがかわいくて、始終ご機嫌な気分だった。
見上げるたびに頭に小鳥を乗せているので、僕は全自動エリックを見ると笑っちゃうマシーンと化した。にやにやしていると、エリックはそのうち僕のニット帽を引っ張って、僕の視界をさえぎってくる。僕は仕返しに、エリックのマフラーを引っ張ってやった。すると傾いたエリックの頭から、小鳥がぴゅりっと不機嫌そうに鳴いて飛び上がる。小鳥は非難がましく僕の頬に羽で空気を叩きつけたあと、再びエリックの頭に落ち着いた。やめてよね、とでも言いたそうにつんとした様子の小鳥に、僕らは笑って歩き出す。
公園をぐるりと回って、出入り口のほうまで戻ってくると、売店の立ち並ぶコーナーにはいくつかヒーターが設置してあった。紙コップ入りで売られているホットワインを見つけて、僕らはそれを購入する。もちろん、小鳥用の水も。
「少し温まっていくか?」
エリックはヒーターを一瞥して、僕を見下ろした。僕を、というか、主に僕の赤くなった鼻を、だろう。
「ワインがあったかいからいいよ」
なんとなく、立ち止まってしまいたくなかったので、僕はそう言って売店を抜けた。両手に小さな紙コップを持っている大きなエリックは、片手に小さな小鳥を乗せていて、窮屈そうで本当に愛らしいありさまだ。
僕らはちびちびとホットワインを飲みながら、ゆっくりと帰路についた。
喉をうるおした小鳥は、今度は僕の肩に居場所を据えると、そのうちうつらうつらとしはじめた。
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