はるの
2022-10-07 21:33:22
86681文字
Public X-MEN
 

ムーンレイカー

全年齢|cherik|2022.10.7|DP後、チャールズが人生に一区切りつける話。チャールズの過去をフリ~~~ダムに捏造しています。



インタビュールーム - 11


「おはよう、チャールズ」
 ……レイブン?
「私よ」
 ねえ、これは夢なんだろう? いつから私は夢を見てるんだ?
「そうね、夢かもしれない。そしてこのまま永遠に続くのかも。けれど、そんなことはどうでもいいの」
 冷たいな。それに、投げやりだ。
「だって、これが夢でも現実でも、どうでもいいことじゃない? これが〝あなたのため〟になるか、それが一番重要よ」
 私の?
「確かに、私はここに存在しない。厳密に言えば、これはあなたのただの自問自答かもしれない。けれど大切なのは、そこに何があるかであって、どこに何があるかじゃない」
 でも、君はいないじゃないか。君は……、私は、君がずっといてくれるように、いてくれるように、頑張っていたんだけどな。
「そうね」
 どうにか、なんとかして……。私はね、君たちと分かり合うために、いつだってこういう悪あがきをするんだ。泥沼で這いずり回る。学園がまだあばらやだった頃もそうだったよ。どう考えても一緒には歩けないのに、僕はいつだって、どうにか、なんとかして……、なんとかできないかと思ってた。
「そのようね」
 スーパーマリオって知ってる? テレビゲームのタイトルなんだけど。あれのとある場面で、壁に向かって無為にぴょんぴょん跳んでいると、突然壁にはまって、するっとゴールまで行けちゃうことがある。プログラム上のバグってやつだ。僕は、あれがやりたかった。明らかに越えられない壁でも、なんとか頑張って通ろうとしたら、もしかしたら通れるんじゃないかって……。僕が壁に頭を打ち続けていることを、その理由を君に伝えていたら、少しは何かが変わったかな。
「私はあなたが記憶している、あなたの中の私だから。あなたの思考は超えられないわ。正確には答えられない」
 うん、そういうきっぱりしたところ、すごく君だ。
「何をしたの、チャールズ」
 それも、すごくたくさん言われたな。何のことだい? ジーン?
「いいえ。あなた自身によ」
 私自身に? 何もできないよ、自分になんて。それとも今回の顛末のことかい? 娘に妻を殺された気持ちは分からないけど、娘が事故で妹を殺してしまった気持ちならよく理解したよ。どうしたらいいっていうんだ? せめて生きているほうを生かしたいと思うことが、そんなに悪いことなのか? たとえばレイブンを殺したのが私だったら、ハンクとエリックは私を殺そうとしたか? 私にとっては、そういうことだった。周りの誰も、私のような人はいなかった。誰も私のことなんて、分からなかったんだ……。じゃあ、もう、仕方ないじゃないか。
「あなたのそういうあきらめのよさは、悪いところね、チャールズ」
 そうかもしれないね。でも、手に入らないものを追い求めるのは、政治活動だけで十分だよ。なかなかに疲れるんだ、本当に。
「よい子にしてよく言うことを聞いて、その代わりに安全を得るやり方?」
 うん、ほんと、そんな言葉にすると本当に、子供みたいだな……
「私だって、最初はうまくいくと思ってた」
 最初は、だろ。君がいずれ破綻することに気づいたとき、見て見ぬふりなんかしてないで、きちんと話を聞くべきだった。
「そうしたら、どうなってた?」
 そうだな――、政府回線を引きちぎって、私たちは私たちのやり方で動くと宣言したら。X-MENの力がどれほどのものかを知っている政府からは、裏切り者の烙印を押されて、ネガティブキャンペーンが開始されたかもね。ミュータント嫌悪を引き起こすようなニュースが容認されて、プロパガンダ合戦をする羽目になったかも。そして頃合いを見計らって、身柄の保護みたいな名目で、制圧と掃討を目的とした特殊部隊が派遣されてくる。私は学園を守るために、逆らう人間を撃退するミュータントの王になっていたかも?
……変なヘルメットかぶる?」
 ふはっ、ははは、ちょ、私がかぶってどうするんだ。嫌だな、この未来は。エリックが止めにきそうだし。それとも華麗に返り咲いて、一緒に戦ってくれるかな?
「チャールズ」
 ……うん。もしもの話なんて、考えていたらきりがないね。――ねえ、レイブン。
「なあに」
 私は本当に、うまくやろうと思っていたんだ。
「ええ」
 全部、うまくできると思ってた。君に『リスク』を問われたときだって、きっとそれを負ってでも、全部うまくできるって。
「そうね」
 別に誰かを傷つけたかったわけじゃない。みんなを困らせたいわけじゃなかった。悲しませたいわけでもなかった。だからって、何をしてもいいってわけじゃないけど……、ただ、本当にうまく――、だって、私は。
「みんなのことが大事だった。大事にしたかったから、あなた、頑張ったのよね」

 うん。
 本当に、それだけだった。
 それだけだったのにな、本当は。

「まあ、やり方は置いといてよ。いくつか下手な手を打った自覚はあるでしょう? だいたい、あんなワンミスで終わるようなプロジェクト設計をするところからへたくそなのよ。政治家には向いてないってさんざん言ったのに。ほら、泣かないでチャールズ。ホットチョコレートが必要かしら? それとも紅茶かな。ああ、この銘柄、昔ハンクがよく買ってきたやつじゃない。ちょっと懐かしいな。最近は酒ばっかりだったでしょう、あなたは注意してもやめないし。アルコールが百薬の長だなんて、愚かな酒飲みしか言わない妄言よ。最近、チェスはしてるの? 怠けていたら、あっという間にエリックに勝てなくなるわよ。ねえ、チャールズ。ほら、顔を上げて」