はるの
2022-10-07 21:33:22
86681文字
Public X-MEN
 

ムーンレイカー

全年齢|cherik|2022.10.7|DP後、チャールズが人生に一区切りつける話。チャールズの過去をフリ~~~ダムに捏造しています。



インタビュールーム - 07


「おはよう、チャールズ」
 おはよう、ドクター。
「気分はどう?」
 さあ……、分からないな。悪くはないけど、良くもない。
「いつもどおり?」
 うん? ああ、いつもどおり……、そうだね。
「今日は歯切れが悪い感じだね」
 使いすぎてなまくらになったのかも。もう研ぐ必要もないし。
「何か話したいことはある?」
 インタビューなんだから、君が聞きたいことを提案すべきだろう? それとも、やっぱり君のことは、私が操ってしまっているのかな。私は今、理想郷にいるのかい?
「理想郷?」
 私の思いどおりの世界だよ。もしくは、目につく全員すべてが私と同化した世界だ。私はこれをやって、レイブンにものすごく怖がられたことがある。
「レイブンが?」
 彼女を私の妹とするときに、ちょっとね。うん。あれは実際、怖かったな。みんなが同じものになってしまうなんて、やっぱり恐怖でしかない。
「あなたの思考をトレースした人間が、そう怖いとも思えないけど」
 私が喜んで笑えばメイド全員が笑って、私が悲しんで泣けばメイド全員が泣くんだぞ。ちょっとしたホラーだよ。
「ああ、そういう……
 私が死にたいと思えば、全員速やかに死ぬんだろう。私はあのとき、理想郷は語るためのもので、実現するためのものではないと悟った。早めに分からせることができてよかったと思ってる。
「分からせる? レイブンに?」
 いいや、私にだよ。
「チャールズ?」
 うーん。私が操っていないのだとしたら、君の存在自体が私の妄想でしかなくて、これは頭の中で起こっていることなんだろうか? だって、君がこうして話してくれていること自体、ちょっとおかしな話じゃないか。
「どうして? 僕はあなたの主治医みたいなものだろう」
 君は私のことが嫌いになった。
「ええ? なんだって? ずいぶんと単純な話だな」
 笑うようなことかい?
「笑うようなことだよ。あなたは存外、物事を単純な差し引きで計るんだね」
 そうかな?
「そうだよ。たとえば君は、みんなに人権を説きながら、人権の根本的なところを、いつも見落としがちだった」
 そう……、なのかい?
「そうとも。君は良い子にしていれば、周りの人がやさしくしてくれると思ってる。何か良いことをすれば、誰かが返してくれると思ってる。『人間の役に立てば、ミュータントに価値ができて、必要としてくれる』と思ってる」
 それは……
「人にはね、チャールズ。たとえどんなに無価値でも、生命と自由を確保する権利がある」
 ああ、うん。そうだとも。そうだね……、私は。
「それが、人権というものだ。良いことをしなくても、きちんと生きる権利がある。君がそれを見落としがちなのは、ずっとそうして生きてきたから?」
 私は、そうだね……、私は。
「報われたかった? 報酬を得たかったのかな」
 それは――
「自分が傲慢でないと言うなら、君が何も得ることのない結末でも、率先して選べるかい? もし、やり直すことができたら、君は自分の行動を変えられる?」
 待ってくれ。ちょっと、ひどいことを言うんだな。
「君は、自分を変えられる?」
 いったんやめてくれないか。このとおり、お願いだ。
「どうにかうまいことやれば、誰からも愛される素敵なチャールズ・エグゼビアになれるって、本当に思っているの?」
 ―――
「そんな馬鹿みたいなおとぎばなしが、本当にあるって?」
 君は、ハンクじゃないな。いったい誰だ?