はるの
2022-10-07 21:33:22
86681文字
Public X-MEN
 

ムーンレイカー

全年齢|cherik|2022.10.7|DP後、チャールズが人生に一区切りつける話。チャールズの過去をフリ~~~ダムに捏造しています。



インタビュールーム - 01


「おはよう、チャールズ」
 おはよう、ドクター。これはつまり、カウンセリングの一種かな?
「そうだね。そう定義してもいい。けれどあなたにとっては、ただのインタビューかもしれない」
 それは、私が君の心を読んでしまうから、という意味で?
「あなたは心理学にも造詣が深いから、という意味で」
 造詣が深いことと、実践できるかは別だよ。つまり、君は私の状態を、根掘り葉掘り探らなければならない、というわけだ。うつ病なのか、そうじゃないのかとか。投薬は必要か、だったら何をどのくらいだとか。そういう判断のために。
「たとえば、よく眠れている? というようなことを」
 眠れている……、と、思うけれど。どうだろう、よく思い出せないな。
「気分はどうかな」
 今の? そうだな、少し暑い気がする。窓を開けてくれないか。
「窓を? 今すぐ?」
 今すぐ。面白いね、これは強迫観念かな。空気が通っていることを感じたいんだ。
「分かった。少し待ってくれ」
 私の状態か。よく考えてみれば……、少し、記憶がつながらないところがある。私は倒れでもしたのかい?
「記憶がつながらないとは?」
 私は、車に乗っていたはずだよ。まだ誰も起き出してこない無人の廊下をぐるりと回って、学園から出てきたはずだ。とても静かで……、静かだった。それから……、どうなったっけ?
「それは、僕にも分からない。学園から出たとき、誰かそばにはいた?」
 いいや。
「ひとりで?」
 ひとりで。それで十分だったから。
「そう……
 おかしいな。運転中に倒れたりしたら、それこそ事故でも起こしていそうなものなのに。私はこのとおりピンピンしているし――、もちろん、足はこのとおりだけど。木にぶつかって自損して、気を失ったりしたのかな。それで自分の不甲斐なさにもう何もかも嫌になって、間抜けなシーンは全部健忘してしまった? だとしたら、器用なのか不器用なのか分からないね。本当に忘れたいことはそこなのかって――、ああ、ごめん。私ばかり話しているな。
「このインタビューはそういう趣旨のものだから。続けて」
 いや、もう続かないよ。続けて、と言われて止まってしまうのは、ひどい天邪鬼みたいで心苦しいけど。
「分かった。それじゃあ、今日はこのへんにしておこうか?」
 挨拶だけしかしてない気がするよ。いいのかい?
「何事も挨拶は肝心だって、あなたも言っていたじゃないか」
 そんなこと、言ったかなあ。それに、やっぱり今日だけじゃないんだね。この、インタビュー? インタビューって、ちょっと笑っちゃうな。君、ちゃんと録音はしてる? タイム誌に載せる記事ができたら事前に見せてくれよ。
「これは記事にはならないし、書き起こしたりもしないよ」
 ああ、うん。分かってる。冗談だよ。君、真面目だね。
「こんなところでふざけるあなたが奇特なんだ。もちろん、このインタビューは必要な分だけ続くよ」
 次はいよいよ、家庭環境とか、幼少期のトラウマとかを掘り起こされるのかな。
「あなたのその言葉が指針になる。あなたが必要だと思うことは、だいたいが必要になる」
 ごく最近、そうでもないと思い知ったばかりなんだけどね。