芹沢亀吉
2025-11-03 19:43:35
45065文字
Public 菊タブー
 

逃亡先にて

暴虐な軍国主義者の楠木武が大恥をかく物語の通算120話目。かなり濃厚な性描写もあるので18歳未満の閲覧はお断り。そして⚠️が付いている章は食事中には読まないこと!


第一章 逃亡先は平行世界


「どうか!どうかもうご勘弁を!」

「女みたいに泣きわめくな!甘えたこと抜かすな!この楠木くすのきだって本当はこんなことなどしたくない!だが貴様は余りにも弛んでいる!弛み過ぎだ!だからこの楠木は心を鬼にして弛んでいる貴様に軍人精神を注入してやっているのだ!こんな部下思いの上官はそうそういないぞ!この楠木に感謝しろ!」

などと言いながら嫌らしく微笑むあたり、楠木たけし一等陸佐が単に部下を逆さ吊りにして痛めつける蛮行を楽しんでいるだけなのは火を見るよりも明らか。楠木が持つ精神注入棒は既に至る所に部下の血がべっとり付いている。そして「女みたいに泣きわめくな!」なる楠木の物言いは女性差別丸出しだとここに明記しておく。

 最近TV番組でタロットカード占いを観た楠木はカード番号12番の「吊るされた男」を真似て部下を逆さ吊りにし痛めつける蛮行を思いついた。この蛮行により早くも5人の部下が死亡したにも拘わらず、楠木はそれら全てを事故死として片付け見ての通り6人目の部下に同じ蛮行を加えるのを楽しみ、しかも感謝を強要と卑劣極まりない。そんな楠木は運動不足に加え缶コーヒーの飲み過ぎが祟り弛みきった肥満体型なのだから、部下に難癖を付け暴力を振るう前に文字通り弛んでいる己の身体に対し物理的制裁を加えるのが筋だろう。部下には「すぐ痛がるな!」と怒鳴る癖に自分はかすり傷でも大袈裟に痛がる楠木に己の身体に対し物理的制裁を加える気概など無いのは火を見るよりも明らかだが。

「姿が見当たりません。」

「逃げたか、楠木武。」

 陸自の秘密部隊が楠木の自宅に突入するも、そこに楠木本人の姿は無くもぬけの殻。警察官でも警務官でもなく秘密部隊が動いたのは5人の自衛官を虐待死させた楠木の悪行が世間に知れ渡り陸自、ひいては自衛隊の評判が落ちるのを何としても阻止したい防衛省上層部の意向に依るところが大きい。要するに楠木は口封じのため秘密部隊に抹殺されるのが確定した身だったのである。

「く、楠木一佐、こんな夜中に何用で?」

「うるさい!静かにしろ!」

 真夜中に大河おおかわ隆治たかはるの自宅に乗り込み「うるさい!静かにしろ!」と怒鳴る楠木本人が一番うるさいのは誰の目にも明らか。大河は女子トイレの盗撮により防衛装備庁を解雇されて以来楠木の世話になっている科学者だ。部下5人を虐待死させても全く罪の意識の無い楠木が大河に便宜を図り続けたのは無論温情などではなく、秘密裏に新兵器開発をさせ日本政府を転覆、大日本帝国憲法を復活させ己が主導権を握る計画の駒として利用する腹積もり。もっとも間一髪で秘密部隊の急襲から逃れ逃亡中の楠木に最早その計画を実行など到底不可能だが。

「申し訳ございません!楠木一佐、申し訳ございません!」

「わかった、この楠木は寛大だからこれ以上は怒鳴らん。ところで例の次元転移装置は完成したのだろうな?」

「は、はい、こちらです。」

 大河に案内されガレージに向かった楠木を出迎えたのは和製ハマーことトヨタ・メガクルーザーの民生仕様車だ。

「楠木一佐、完成した次元転移装置はこちらのメガクルーザーに搭載しておりまして、時速110km以上出すと平行世界に移動出来ます。既にこの私自身が搭乗し実験を済ませました。」

「そうか、流石この楠木が見込んだだけのことはある。」