芹沢亀吉
2025-11-03 19:43:35
45065文字
Public 菊タブー
 

逃亡先にて

暴虐な軍国主義者の楠木武が大恥をかく物語の通算120話目。かなり濃厚な性描写もあるので18歳未満の閲覧はお断り。そして⚠️が付いている章は食事中には読まないこと!


「尾形博士の研究を手伝っていて、並外れた再生能力を持つプラナリア、紫外線が見えるミツバチ、環境に応じて性別を変えるオキナワベニハゼ等雑魚とか虫けらとか言われがちな生き物が人間には決して出来ないことを普通にやっているのを学んだ。人間が万物の霊長なんて地球を支配した気になっている傲慢な文明人が勝手に言ってるだけ。そして巨大な積乱雲を自分の手足のように操りあっという間に関東全域を暴風雨に飲み込んだモンスター0は最早地球の生物の概念を超えていて、龍神そのもの。そんな龍神を軍事力でねじ伏せる発想自体が愚の骨頂。」

「仮想戦記とかだと御用学者が弱点を見つけて自衛隊がそこを攻撃し大勝利という予定調和が待っているんだろうけど、現実はそんなに甘くないよね。あの教祖サマのことだからその仮想戦記を真に受けてまだ俺は勝てるとか思っていそうだけど。」

 続けて届いたジョナの暗号メールによると、岐阜基地を発った爆撃部隊がもうすぐ東京上空に到着し爆撃開始とのこと。

「凛、いよいよ始まるね、愚かな爆撃が。」

「モンスター0にやられるのがほぼ確定しているパイロット達が可哀想と少しだけ思っちゃったけど、あいつ等だってあの教祖サマが東京に核撃ち込んで膨大な数の命を奪ったクズと知っててその悪事に加担しているんだから結局自業自得だよね。」

「前の地獄行きの霊柩車もそうだけど、凛は時々怖いこと言うよね。その怖さは恫喝的な怖さじゃなくて、物事の真理を的確に突く感じ。物事の真理を的確に突ける慧眼があるから、凛は世間から極悪テロリスト扱いされている人達が警察も自衛隊も手玉に取るあの教団と対峙していることにいち早く気付けたんだね。そんな凛が私の親友で本当に良かった。」

 親友から褒められ、篠田の両頬がみるみるうちに紅潮していく。

「ありがとう。でも伊織だって危険を承知であの教団を調べるのを手伝ってくれたし、自衛隊の連中の追跡振り切る時のハンドルさばきとか本当に凄かった。春哉が来た時だって伊織が素早く対応してくれなければ春哉も私も取り返しのつかないことになってたよ。」

 今度は一ノ瀬の両頬にほのかな紅が差す。

「赤くなった伊織って可愛い。そうだ、まだ春哉が帰ってくる前の話だけど、あるお寺に行って早く春哉が帰ってくるよう願をかけた時お坊さんが言ってたんだ、般若心経が説いているくうの思想は全ての物事は変化し続け、たとえどれほど変化しても本質は変わらない、世の中の価値観に囚われないってことだって。よっ、よく考えたら、れっ、恋愛を男女の関係に限定している時点で、わっ、私は世の中の価値観に囚われていたし、いっ、伊織と私の関係が親友のそれから変化しても、ほっ、本質は変わらな、ないよね。」

 両頬ばかりか両耳まで真っ赤にしてたどたどしく話す篠田を目にして一ノ瀬は気付いた。彼女の愛しの想いに、そして己の心の奥底に秘めていた愛しの想いに。

「観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空度。一切苦厄舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識亦復如是。舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。是故空中。無色。無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。無眼界。乃至無意識界。無無明亦。無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。無苦集滅道。無智亦無得。以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罣礙。」

 篠田と一ノ瀬は般若心経を唱え終わるのと同時に抱き合い、唇を重ね合う。親友から恋人同士になっても心底信頼し合う2人の本質的な関係は何一つ変わることは無く、2人共恋愛を男女限定のものとする世の中の価値観に囚われていないのは火を見るよりも明らか。

 操り主のキングギドラが平然と皇居の敷地内に踏み込んだことにより巨大台風が皇居全域を蹂躙し、皇居内の建物はほぼ全壊。宮中三殿は跡形も無くなっていた。岐阜基地を発ち現在東京上空の成層圏にいるF-15JSI改戦闘機の編隊は皇居への爆撃を躊躇うも、結局教祖楠木の厳命により台風の目にJDAM爆弾を投下していく。

「駄目です!全く標的に当たりません!」