芹沢亀吉
2025-11-03 19:43:35
45065文字
Public 菊タブー
 

逃亡先にて

暴虐な軍国主義者の楠木武が大恥をかく物語の通算120話目。かなり濃厚な性描写もあるので18歳未満の閲覧はお断り。そして⚠️が付いている章は食事中には読まないこと!


「早い!早過ぎる!まだ第二段階の筈!?神祖様!今すぐ止めさせて下さい!このままだと我々の命が!」

 松永をはじめ本営にいた人達が皆教祖楠木とばかり思っていた男は口髭が奇妙な形に歪み、今ここで何が起きているのかを全く理解出来ていないのかただ茫然と佇むばかり。

「き、貴様、神祖様ではないな!」

 松永は漸く気付いた、皇居外苑の本営にいたのは教祖楠木本人ではなく顔中に特殊メイクが施された影武者であることに。敬虔なウヨポネ教徒である影武者曰く教祖楠木から直接代役を頼まれ喜んで引き受けたとのこと。影武者は左耳に付けた小型イヤホンにより現在岐阜県内の教団施設にいる教祖楠木本人からの指令を聞き、教祖の声色、口調を真似て喋っていたのだ。ちなみに先程無線越しに松永達と話していた時の声は教祖楠木本人のもの。

「神祖様はもうここにいない、いや、最初からいなかった。ということは、まさか!」

「そのまさかだ、ドルフィン博士。既に最終段階は始まっている。」

 無線に向かってそう呟いた教祖楠木が冷たく、そして不気味に微笑む。教祖楠木の目の前の画面は松永達が狼狽える様子を映していて、これは影武者の襟元に仕込んだ小型カメラの映像だ。

 F-15戦闘機並びにF-2戦闘機により編成された戦闘機部隊が400km遠方から多数の通常ミサイルに加えデコイも発射、標的がミサイルの飽和攻撃に手間取っている隙に本命の「クサナギソードニュークリア」即ち空対地戦術核ミサイルを撃ち込む、これが教祖楠木の言う「最終段階」の骨子。教祖楠木にいつか使い捨てにされる不安を拭えずにいた松永ではあるものの、キングギドラの対応に追われていたのも相俟ってまだ自分が皇居外苑の本営にいるのに「最終段階」を始めたりはしないだろうと油断していた。松永達が本営にいるのは影武者だと気付く前に「最終段階」を実行に移す、それが教祖楠木の非情かつ非道な企み。

 元々「最終段階」では通常兵器として史上最大の破壊力を持つ航空機搭載爆弾MOABに匹敵する爆弾を製造開発し使うことになっていた。しかし在日アメリカ軍の上層部を篭絡し小型核兵器の製造技術を手に入れることが出来、教祖楠木も松永も折角なら核兵器を新造し使おうと考え、「クサナギソードニュークリア」が開発されることに。

 何十年も前から戦術核兵器デイビー・クロケット、原子砲といった核兵器を沖縄に持ち込んでいた在日アメリカ軍だけあって、教祖楠木から近いうちに東京にキングギドラが飛来すると聞かされ沖縄は勿論岩国をはじめ本土のアメリカ軍基地に小型核兵器を持ち込むのに何の躊躇も無い。非核三原則など絵空事だったのだ。その小型核兵器の製造技術がウヨポネ教団側に流れ「クサナギソードニュークリア」の完成に繋がったのを踏まえると、在日アメリカ軍の核兵器持ち込みがとんでもない事態を招いたと言えよう。

 まだ本調子ではない上「ドルフィン粒子溶液」を浴び弱っているキングギドラは各首が懸命に引力光線を吐き四方から押し寄せるミサイル群に抗うも、「クサナギソードニュークリア」の東京駅構内への着弾を阻むのに失敗した。最早上空待機避難のため上昇する時間など無いと本能的に気付き巨大な両翼を大きく広げ全身を包み込み地に伏せる方を選んだキングギドラの優れた判断力は目を見張るものがあるが。直後に東京駅を中心に巨大なキノコ雲が上がり、松永、影武者をはじめとするウヨポネ教徒、そして自衛官が多数いる皇居外苑も爆炎に飲みこまれた。

 都心に上がった巨大なキノコ雲を画面越しに眺める教祖楠木の微笑みは今までに無い残酷さを孕む。

「鼻に傷のあるイルカは太子である俺の生け贄になるべき存在なのだ❗️皇族無き今、俺はこの国の太子となり、後は現人神となるのだ❗️」

 皇室とウヨポネ教団の関係を端的に言えば持ちつ持たれつ。具体的に述べるとウヨポネ教団は皇室にとって目障りな人物を秘密裏に始末し、皇室はそんな教団が日本の政官財への影響力を行使出来るよう便宜を図るというもの。元々小規模だったウヨポネ教団が僅かな期間にここまで巨大化したのは皇室の威光の賜物と言っていい。教祖楠木はキングギドラが地球に迫っているのを早い段階で皇族連中に伝えつつ、皇居にいた方が安全、自衛隊を動かし政官財を挙げ国体護持のため身命を賭すと進言していた。皇室の威光を過信していた皇族連中は避難を拒み続け結局皇居もろとも核爆発の餌食に。勿論これは教祖楠木の狙い通り。