芹沢亀吉
2025-11-03 19:43:35
45065文字
Public 菊タブー
 

逃亡先にて

暴虐な軍国主義者の楠木武が大恥をかく物語の通算120話目。かなり濃厚な性描写もあるので18歳未満の閲覧はお断り。そして⚠️が付いている章は食事中には読まないこと!


「いや、我らの王は大丈夫だ、王は我々が力を貸さねばならないほど弱くない。王の強さを信じよう。我々は人間同士の後始末をするだけだ。まずは被曝し命を落とした同志達の冥福を祈り黙祷しよう。そしてあの教団に囚われた尾形博士を一刻も早く救出しなければ。もしここで博士を死なせれば危険を顧みず我々に協力してくれた彼女達に顔向け出来ない。」

 ジョナが言う「彼女達」は尾形博士の助手の篠田しのだりんと独立系ジャーナリストの一ノ瀬いちのせ伊織いおりを指す。篠田は純真な実弟春哉はるやがウヨポネ教団にのめり込み姿をくらませた件を学生時代からの親友一ノ瀬に相談し、以来2人は世間がウヨポネ教団に迎合する中その教団の悪事を追うように。そして悪事を追い始めて早々にウヨポネ教団がとある山中にて秘密裏に自衛隊との合同軍事訓練を行っているのを突き止めた。その時愛車のランドクルーザーを運転し口封じのため追ってきた高機動車を山道のぬかるみに誘い込み横転と一ノ瀬の運転技術はかなりのもの。

 現在篠田と一ノ瀬の2人はジョナが用意した隠れ家にいて、尾形博士救出の連絡を待つ。ちなみに春哉は教祖楠木からの指令に基づき姉凛の自宅に行き彼女にナイフの刃を突き付けたところを一ノ瀬に気絶させられ、今はジョナの手引きによりとある場所にて療養中。2人ともウヨポネ教団の悪事を追っていたら陸自の武装車両に追われた上新大久保にて旭日旗を掲げる暴徒共からコリアン達を救出したところをクズ警官に不当逮捕されそうになりジョナに内通する自衛官2人に救われただけに、今頼れるのはジョナ達のみ。

「初めて会った時はテロリストだなんて言っちゃったけど、あの時あの人が来なければ凛も私も間違いなくあの装甲車の自衛官共に殺されていたよね。丸腰の私達を狙って機関砲をバンバン撃ってきた自衛官共の方がよっぽど極悪テロリストだよ。まさか凛が尾形博士共々あの人と面識あってモンスター0を調べていたとは思わなかったけど。」

「ごめんね、伊織。本当は弟と教団のこと初めて話した時にあの人のことも話すべきだったんだけど、国際手配中の反政府活動家をどうやって伊織に信用してもらうのかがわからなくて。」

 一ノ瀬が初めてジョナに会ったのは追ってきた高機動車を何とか振り切った直後に今度は装甲車に追われ最早これまでと覚悟を決めた時のこと。軍用ランドローバーに乗り仲間と共に駆けつけたジョナは一ノ瀬が運転するランドクルーザーを執拗に追う装甲車を見るや否や無反動砲の砲弾を撃ち込み爆砕したのだ。その装甲車は横転した仲間の高機動車を無情にも跳ね飛ばした上ランドクルーザーを狙いこれでもかと機関砲を撃ち続けていたのでジョナが駆けつけるのがあと少し遅ければ一ノ瀬も篠田もまず助からなかっただろう。ジョナが国際手配中だと知っていた一ノ瀬は最初こそ警戒していたものの女性の容貌を「品定め」する他の男共の嫌らしさが彼からは全く感じられなかったのもありすぐに警戒心を解き、危険を顧みず装甲車の襲撃から助けてくれた上自衛隊車両とのカーチェイス時に傷ついたランドクルーザーの車体を綺麗にしてくれた彼に感謝した。ジョナの方もランドクルーザーにパンクした後でも約100 kmの走行が可能なランフラットタイヤを付けている一ノ瀬の準備の良さは勿論、大手報道機関に属していた頃から日本国内のヘイトクライムを熱心に取材する彼女の姿勢に感服し、以来様々な便宜を図るようになったのは前述の通り。

 篠田と一ノ瀬がジョナの話をしていた丁度その時2人のスマホにそのジョナからの暗号メールが。予め教えられていた解読方法により暗号メールを読み始めた2人の顔中から血の気が引いていく。

「東京駅に核攻撃とかやることがえぐ過ぎる。しかも信者を例の地獄行きの霊柩車に乗せてモンスター0に特攻させ本当に地獄行きにしちゃうなんて。都心の地下鉄でサリンばら撒いたあの教団が可愛く見えるぐらいだよ。もし春哉が今も教団にいたら特攻させられていたかも。」

 2人がとある駅に停車中の「臨時特攻烈車あいこく」を目撃したのは軍用ランドローバーに乗るジョナと一旦別れた直後のこと。その時篠田が「烈車」を「地獄行きの霊柩車」と辛辣に評したため一ノ瀬は思わず笑ってしまったとはいえ、その「地獄行きの霊柩車」が本当に特攻するのに使われ大勢の乗客が全員死亡したのを知った今ではもう笑えない。

「ある意味あの教祖サマに感謝しないとね。こっちからあの教団に乗り込んで春哉君を取り戻すのは至難の業だけど、あの教祖サマ自ら凛の家に春哉君を送り込んでくれてお陰で取り戻すことが出来たんだから。」

 実のところ一ノ瀬は教祖楠木が彼女の身体を狙っていることに薄々気付いていて、篠田もまた自分が教祖楠木に身体を狙われていると薄々気付きつつも言えずにいるのは一ノ瀬と同じ。元々教祖楠木は女性にさしたる興味も無くウヨポネ教徒を虐待死させることはあっても性的な意味で手を出すことは一切無かったとはいえ、篠田の写真を見た途端にその聡明な美しさに心奪われ彼女を「クシナダヒメ」と呼び下劣な欲望を滾らせるように。