【創作|馬軸】春雷 伸長- 日盛りと鶏鳴

※支部からの転載版です。内容は変わりません。四話~六話収録。




ラヴウィズミー。ロジェールマーニュ。
フジサワコネクトは掲示板にいない。瀬川迅一はぼんやりと遥かな背中を眺めた。
俺は何をしているんだ。こんな不甲斐ない結果を、ダービー馬をこんな風に沈めてしまうなんて。焦りが募る。名手へ駆け上がっていく后子を見ている事しかできなかった。着順が出るまでなんとも言えないが、確実に六着以降__というのは体感でわかった。

(迅一……、迅一。ねえ、たまにはわたしの事もちゃんと見てよ)
……コネクト?」

瀬川は止まったまま、首をひねってこちらを見ているコネクトの頭を撫でながら必死になって考える。大きな瞳がじっと瀬川を見つめていた。
勝つための方策。二度とこんな大敗を喫さないための戦法。レース選択。牝馬限定戦なら確実に勝てるか。いや、上には名牝たちがいる。この名馬を、ダービー馬となったこのフジサワコネクトという名馬をこれ以上__これ以上戦績に泥を塗るわけにはいかない。
俺はどうすればいい。どうすれば、白綾后子に勝てる。

……いやーっ!!)
「うわ!? ちょ、コネクト落ち着け、ぅおぁ……!!」
(早く降りて!! 嫌い!! もう嫌い、__迅一なんか嫌い!!)

茂みに向かって突っ込んでいったコネクトは、体を振って思い切り植え込みに瀬川を放り投げた。係員と厩務員が慌てて捕まえに来る。植え込みから必死に抜け出して芝の上に戻った瀬川は、怒っているコネクトを刺激しないように少し距離を取った。

「どうしたんだよ、コネクト……。迅、怪我してないか?」
「すみません、大丈夫です。今日は不甲斐ない結果で申し訳ありません」
「気にすんなよ。そんな日もある。勝ったラヴウィズミーが強かった」

それだけだよ、と厩務員は笑った。大人しく捕まっているコネクトは耳を絞って、何時でも瀬川を蹴り飛ばせるように臨戦態勢を取っている。よっぽど虫の居所が悪いのか、それとも何か気に障ることをしたのか__瀬川は思考を巡らせた。だが一向に答えは出ず、こちらを睨むフジサワコネクトから視線を逸らし、歩いていく厩務員について少し離れて歩いた。


(迅一の馬鹿。もう知らない。……もう、しらない)

そんな声が、コネクトの後ろ姿から聞こえる気がした。