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アスナショウコ
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【創作|馬軸】春雷-極光
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【創作|馬軸】春雷 伸長- 日盛りと鶏鳴
※支部からの転載版です。内容は変わりません。四話~六話収録。
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アスコットゴールドカップ前日 夕刻
土砂降りの雨がイギリスを覆っていた。ゲリラ豪雨並みの雨が地面に叩きつけ、パッと止んだかと思えば今度は静かにしとしとと地面を濡らすような雨が延々降り続いている。アスコット競馬場もその雨には抗えず、芝はどんどん雨を吸い込んで馬場状態が悪化していく。
私は死んだ魚のような目で渚ちゃん、国美さんとロジェールマーニュ、ナヴィアヴェラが滞在する厩舎から共に外を見つめていた。音を立てて雨が滑り落ち、厩舎の入り口には大きな泥濘が形成されている。
「
……
ただでさえ重い欧州の芝が」
「さらに重馬場に
……
」
国美さんと渚ちゃんが絶望感漂う言葉を吐いた。前言撤回や。運もいる。運を実力でひっくり返すにはある程度条件を整えなあかん。この土砂降りの雨よ。いやどないなってんねん。どんだけここ一番で大雨降らしたら気が済むねん私は。しかも調教やってる間はずっと晴れてたさかい、ほんまにここ何時間かの間に降ってきた雨やからな。ほんまどないなってんねん。
「__
……
どないなってんねん!!」
頭抱えて私は呻く。大雨の欧州競馬は途端にドイツ馬が強くなるというのは有名で、今回のアスコットゴールドカップにも二頭が出走を予定している。この馬場やったら直前に回避をする馬も出てくるやろなぁ、と私は思いながら寝藁を齧っているロジェに目を向けた。
そんな事は些事だとでも言うような落ち着きぶりは見ていて安心するが、四〇〇〇メートルという長丁場のレースをこの重馬場で? 何かあったらどないすんねん。怖いくらい調子がいいらしいロジェは、顔を上げてじっと私を見た。その様子を見ていた隣の馬房のナヴィアヴェラも顔を出してこちらを気にする。
「ロジェ、ナヴィ
……
ごめんな、私が雨女なばっかりに
…………
」
ナヴィアヴェラは何言ってんだこいつみたいな顔をして馬房に引っ込んでいった。そしてすぐに寝始める。図太いなほんま、と思っていればロジェは私の方へ顔を寄せ、私が着ているジャージの上着を少しだけ噛んで引っ張った。かまえ、ということらしい。特段駄目だと言っても機嫌を損ねることはないのだが、甘えられたら構ってやりたくなる。私は両手でロジェの顔を撫でまわしながら考えた。
欧州という全く日本と異なる環境で、これほどの高パフォーマンスを発揮するロジェ。
ロジェと一緒に行動し、帯同馬としての役割を十二分に果たすナヴィアヴェラ。
そんな馬たちが挑むゴールドカップという大舞台で、私がすべきことは唯一つだ。重馬場だろうが私の全力を以ってすべての馬を蹴散らす。それぐらいの気持ちで挑む。
いや、勝つ。
私がここにいるのは単なる挑戦者としてではない。日本代表としてロジェールマーニュは送り出され、様々な人たちから「ロジェールマーニュ = 白綾后子」と嘱望されている。
その期待には応えなければならない。プレッシャーは大いにあるし、四〇〇〇メートル近い長距離で私自身の体力が先に尽きないかという懸念もある。それでもやはり私の心は間違いなく燃えている。
私は勝ちたい。その思いに嘘をつくことはできない。
(勝つよ、后子。__僕は君を乗せて、地の果てまででも駆け抜けてみせる)
そんな声が、聞こえた気がした。
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