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「もう紡ぐべきでもない記憶でしかないの」

裏:0:Undeath



意を決してチャイムを押して出てきてくれたハヅキちゃんは僕のことがわからないようだった。

それがこんなにショックだなんて。

でもいいんだ。
ハヅキちゃんにまた会えたことがこの上なく嬉しい。

成長したハヅキちゃんもずっとずっと変わらない、可愛かった。
小学生の頃よりちょっとたくましくなった感じがするかも。

これからおんなじ高校に通えるのかな?
今日が入学式って思ってもしかしたらおんなじ高校かもって考えたらずっと眠れなくてついついここまで来てしまった。

ハヅキちゃんがいなくなったあの日から毎日欠かさずここを通っていた。

それでこの間お母さんに会ったんだけど、その時ハヅキちゃんが帰ってくるって教えてもらってその場で狂喜乱舞してしまうところだった。
僕はちゃんと人前では自分を抑えられるから我慢したけど、偶然後で一回死んじゃった時は思い出した途端暫く笑っちゃったな。
喉がぐちゃぐちゃになっても笑えるくらい。

大丈夫だからね。
ハヅキちゃんがこの町で何の不自由もなく暮らせるように僕がしてあげるから。
僕がどれだけぐちゃぐちゃにされても僕はどうでもいいけど、ハヅキちゃんが不幸せになるのだけはもう許さない。

僕が一人の時ずっと一緒にいてくれた、遊んでくれた優しくて明るい太陽のハヅキちゃん。
事件の後あの赤くて真っ暗な病室でうなだれていた僕が守らなきゃいけなかったハヅキちゃん。


僕はなにも忘れない。

僕は君にすべてを捧げるから。


「あ、いつも見かける子だ」

突然ノイズが耳に刺さる。誰だろうか。
平静を装ってノイズを見るとなんかよくハヅキちゃん家に近づいてくる変なおじさんだった。
相変わらず変な髪型だなあ。

「今日はどうしたの?」
「あ、いえ別に。」
「あらそう?そういや今年から高校生なんだっけ?もしこの家の子に会ったら仲良くしてあげてねー」
お兄さんこそ用事ですか?」
「あ、うん~。今日入学式があってさ。俺が付き添いすることになってるんだ。」
「へえ……

この人ハヅキちゃんと一緒に出かけるんだ。口ぶりからして既にハヅキちゃんとは知り合いなんだ。

許せないなぁ。

「その子はどこの学校に行くんですか?」
「彩町高校だよ」
「ここから近い方の?」
「うん」
「そうなんですか!!」
「えっ?」

確信が持てた途端少し心の我慢が効かなくなってきた。
どうしよう、ちゃんとハヅキちゃんに再会した時我慢できるかなあ。
ううんポーカーフェイスは上手だから大丈夫。
嬉しい。毎日学校でハヅキちゃんと会えるんだ、おんなじクラスだったらもっともっといいな。
いまだけは神様に頼ってあげる。


ああ、すべてが噛みあう瞬間を待っていよう。

今までの君にこれからの君を縫い付けて、追いかけよう。


「僕もそこに通うのでもし入学式で会うことがあったらよろしくお願いしますね」
「うん。こちらこそね。町に戻ってきたばかりで慣れないことが多いみたいだし友達としてサポートしてあげてほしいな」
「はい、わかりました」

なんかこの人、あの人みたいで気に食わないなあ。
邪魔しないでくれるといいけど。