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「もう紡ぐべきでもない記憶でしかないの」

O SPRING -6



本日は休日となっています。
やっぱり休みの方が好きだし、なにより心が落ち着く。
で。家にいるのだけど、このまま外に出ずに引きこもるか敢えて活動的になって外に出るか。

「オウイチロウさーん。冷蔵庫になーんにも食べ物がありませーん」

あ、こいつのこと忘れてた。
宣言通りベッドを占領されてたから仕方なく簡易敷布団を作って眠った所為で寝起きは良くない。

「昨日の今日でいること忘れるなんてないだろ」
「食べるものがないから買ってこいってこと?」
「そうだよ、俺待ってるから行ってきてね~」
「お前草食なんだからお前が外行って落ち葉食ってろよ」
「人間に対して言ってることやばいの自覚ある?」

何故俺がこいつのパシリにならねばならない?
お腹が減ってるなら勝手に外で食べてくればいいのに……

「というかお前今日もうちで過ごそうとしてる?」
「適当な時間になったら出てってやるよ、別に居たくねえしなこんなとこ」
「なら今すぐ出て行きなさい」
「あのボコボコのドアから~……?」
「別にベランダから降りていけるんだろ、ほらここから行きなさい」

親切にベランダに続くガラス戸を開けてやるのだが、嫌そうな顔でまるで動きたがらない。
わざわざ春風がやってきて呼んでいるというのに。

「ナカイさん運動神経はいいけどお前が客人に対して失礼だからやる気でなーい」

冷蔵庫の前で座っていたナカイは外へ続く第二の扉を無視して俺のベッドを占領しに戻ってしまった。
駄目だこいつ。わがまま気まますぎる。

……ってかさ気づかない?」
「何が?」
「毎朝のご挨拶、来なくない?」
「何のこと?」
「興味ないからってなんでも忘れすぎだろお前。後輩君、昨日夜結局来なかったし今日だって休みならすーぐ押しかけてくるのにこないじゃん?」
「そうだったか……?」
「やばいよお前の脳みそ……心配ですわ」

迷惑な訪問のことはすぐ忘れているから……。あ、その迷惑な訪問のことか。
言われるまでなぜか全く思い出せなかったけど確かにあいつの気配すら感じることはなく平和に時間が過ぎていた。
来ないでくれる方が普段はいいけど……あんなことがあった後だと少しは心配に思う。
けれどそれを確認する術は、ない。連絡先も住んでる場所もよく知らない。というかあっちが勝手に来るし必要がないから。
んー。でも心なしかこのマンション付近で出くわす確率は高いかもしれない。

「学校が始まったら勝手に来るだろう」
「そうだねーそうだといいねー」
「良いかと聞かれたら微妙だけどな」
「そんじゃ、とりあえずご飯買ってきてね。ついでにお前の大好きな妹の様子も見てきたら~?公園にいるよ」
「はあ……ついでに、な。代わりにドアの修理依頼しといて」
「やーだよ」
「つっかえねえな!」

いつも通り制服を着て外へと出る。ドアは怒り気味に閉めてやった。
多分あいつはまじで頼んでもやってくれないだろう。
夜は仲良く塩盛りしたっていうのにな……
さて。ここから近いコンビニと言ったら……【噂】のあるあそこになるか。
夜は危険だけど、昼間なら大丈夫だし。

「いらっしゃいませ~!」

独特な入店音と共に品出し真っ最中の見慣れない女性店員に出迎えられる。
あれ、でも最近どこかで見たような……。んー。だからってわざわざ話しかける必要もないしいいや。

「うわっひゃぁ!?」

出入り口のすぐ横にはイートインのスペースがあるのだが、そこから変な悲鳴が聞こえる。
そちらに目をやると、ひどく動揺した様子の男がいた。

「あ、生きてるじゃん」
「はわわ……こ、こんにちは先輩」

和服と黒いマフラーがトレードマークだったのに、今日は黒い長そでのパーカーを着てラフな雰囲気だった。
何故かいつもとは違って俺に対して恥ずかしそうにしている。何?昨日からあざとさ路線に変更した?
はわわてお前。明らかに似合わないようないかつい顔してるだろ。

「あー。夜大丈夫だった?」
「よ、夜ですか?うう……それが……じ、実は!黒い連中を引き連れていった後、不意を突かれて襲われかけたところまでは記憶あるんですけど……その後から朝起きるまでのこと覚えて無くて……
「気絶しちゃったってこと?」
「で、でもそれだとおかしいんですよ!誰が俺を家に帰してくれたんですか?先輩達はあそこにいた訳ですし。しかも腕治ってるし……
「手?」
「気失う前に腕を切られたんですよ、結構深く抉られた気がしたんですけどね……なんもなかったみたいに綺麗なんです。ほら」

袖をまくり、包帯で縛られた腕を見せてくれる。……いや、包帯巻かれてたら綺麗かどうかなんてわからないよ。

「あ、すみません。包帯巻いてるからわかりづらかったですね、該当の箇所が見えるところまでちょっとだけ外します」
「傷はないね」
「でしょう?もし誰かが助けてくれてたならお礼を言わないといけないんですけど、一体誰なのか……
「ふーん。後さ、休日はいつもの着ないんだね」
「そ、それもちょっと。かなり汚れちゃってたので洗濯中です。明日はいつも通りになりますから!」
「そうなんだ」
「こんなところで先輩に姿を見られてしまうとはお恥ずかしい限りです」
「なんなのそのキャラ変は」
「う~。元々、自分に自信がなくって。あの黒マフラーなどは俺なりの強い意志の表れなんです。でもあれがないと!俺なんてクソザコのゴミムシです~……わ~ん……

気弱な様子の彼は小さな子供のように涙ぐみ自分を恥じ続けている。
恐ろしい。これがギャップ萌えか。そんなことされても俺は同情してやらんが。

「演技じゃないんだよね?」
「違います……
「じゃあお前が暴れてる時はマフラー奪えばいいってことか」
「や、やめてくださ~い!先輩にお供として付き添いたいだけなんです……!」
「それがいらないんだけどなあ。」

「お客さーん、そこ邪魔になるので立ち話するなら外でやってくださいませんかー」

後ろを見ると腕を組みそれはそれは不機嫌そうな顔で俺を睨む眼帯の男がいた。
与えてくる威圧感は一層凄まじいものであり、蛇に睨まれた蛙なんて言葉があるけどまさにその言葉が似合う。
ただまあ蛇というよりは狼みたいな獣のそれだが。

「あ……っすいません。買い物したらすぐ帰ります!」
「あははっ。店長~そんなに怖い顔してたら駄目だよ~」

レジの方で暇そうに頬杖をついてこちらの様子を笑顔で見守る深緑の青年。
俺でもわかる程の綺麗な人だった。女性とも見紛う顔立ち、色白な肌、鮮血のように赤い瞳。
多分ハヅキみたいな面食いなら一発で落ちるタイプじゃないだろうか。
あいつ滅茶苦茶イケメン好きなのに俺のことを盲目的に必ず好きなのはなんでだろう……不思議だ。

「おい、ディヴ。レジの前でそんなだらしない格好するな」
「いいでしょ、今は暇なんだし」
「もう……チヅコちゃんを見習ってお前もだな……

店員同士で会話が続いてしまった為、部外者となった俺はそそくさとかごを持って買い物をすることにした。

「先輩何買うんですか?」

さっきまでそこで菓子パンをしょぼしょぼと食べていたのに知らぬ間に食べ終わったのか俺が棚を眺めに行くと、
まるで家の中で飼い主にやたらひっついてくる犬のようにやってきた。
本当に人のふりした犬なんじゃないだろうかこいつは。尻尾が生えてても不思議ではない。

「家になんもないらしいから適当に数日分をな」
「そういうのはコンビニじゃなくてスーパーとかでしっかり買い物するもんですよ」
「自分の健康なんて今更気にしてもどうしようもないからいいんだよ……
「いい訳がなーい!早死にとか許さないからな!!やっぱり毎日俺がご飯作ってあげましょうか?代わりに栄養バランス考えてあげますよ!」
「君のそういうところ重いから嫌い」
「俺なりのただの親切心を重いとか言うな!」

さっきまでのあり得ない程気落ちした様子からは変わって、少しはいつも通りの調子で俺に尻尾を振ってくる。
こいつに俺の生活の大半を握られでもしたらついに逃げられなくなるだろうから絶対に任せることはない。
何なら今もまあまあうるさかった。

「あーもう!そんなスナック菓子を1食として摂っちゃダメです!」
「俺のお母さんじゃないんだからほっといてくれ」
「先輩ったらまたこんなにお菓子買って~!美味しいボーは3本までって約束だったでしょう」
「お母さんになるな」

ナカイに渡すことも考えて安い菓子でいいやと思って適当に入れてただけなんだけど、俺が会計しようとカゴを置いた瞬間もう栄養とかいいからせめて三食ちゃんとした飯を食え!と怒りながら何個か弁当や野菜のパックを持ってくるし俺達が言いあってると店長のお兄さんにまた睨まれてしまった為、結局お金を払ってさっさと退散した。

「君はこれからどうするの?」
「このまま家に帰ろうかと思ったんですけど……
「そっか、じゃあね」
「そういう先輩は……?」
「ハヅキ達の様子を少しだけ見て帰るよ」
「ふーん」

俺はそのまま目的の場所を目指そうと思い、歩いているのだが奴はずっと隣を歩いている。
適当な交差点で曲がり帰るんだろう、特に喋りもせず放っておく。
……暫くしてやはりどこまで道が同じなのか気になった俺は問いかけた。

「ええっと、家に帰るんだよね……?」
「え?か、帰るんですか?」
「俺じゃなくてさ。君が」
「え。えっと、考えてたんですがやはりここまで来たらお供すべきと結論に至りました!」
「いやしなくていいんだって」
「いえ!昨晩のこともありますからね!さっちゃんは先輩と共に参ります!今度こそお任せください!」
「強情なのはそのままじゃなくてよかったんだけどな~」

暗黒のように真っ黒だけれど奥にキラキラ光を宿す、まるで宇宙みたいな瞳と屈託のない無邪気な笑顔は彼の純真さを見せつける。
はあ。こういう積極的でしつこいタイプまじで苦手なんだよなあ。どうすればこの子は俺を諦めてくれるんだろう。毎日悩んでいる。
気まぐれだとしても安易に人間なんかに絡まないほうがいいな。だってこんなことになるんだもの。
あくまで他人でいたいのなら、責任を負いたくないのなら。他人と関係なんか絶対に持たないほうがいい。

「暗い顔してどうしたんですか?」
「ううん、なんでもない」
「あ!あそこ!いますよ!」

ナカイが言ってた通り、公園に人の姿が見えた。
二人いてもう一人はアオセのようだ。一緒に遊ぶくらいいつの間にか仲良くなれたんだろうか……
もしくは俺に飽きてしまったのかもしれない。いくらこちらから動いてもそっけない態度を続けるしない訳ではない。
俺と同じ服を着ているところを見るに、二人は昼まで学校がありその流れで公園に寄ったみたいだ。
ハヅキの声は相変わらず遠くでもよく通る。
まだ少し距離があるけれど会話が聞こえてきた。

……―――でね~。先輩ってばね、私のことなんかどうでもいいんだって!ひどくない?」
「ハァ。ソウデスカ」
「ちょっと~!だからちゃんと私の話聞いてって!ゲームより私のこと見て!」
「わかりました確認します」
「目でこっち見ろってことじゃなくて会話してって意味よ!」
「ウムム。言葉とは難しいです」

携帯ゲームで遊んでいるアオセの横で何やら俺の文句を聞いてもらっているらしい。
なるほど。気軽に愚痴を聞いてもらえる相手に昇格したか。
言葉が拙い様子であるから変に口答えもできないだろうし、ハヅキにとっては好き放題言ったとしても否定もせず静聴してもらえると判断したのだろう。
友達というよりまだ都合が良いだけなのかもしれない。

「行きますか?」
「あちらがそうならこちらは驚かしてやるか」
「先輩悪い顔してますねー!」
「お前デフォルトで声でかいんだから静かにしてろ」
「う、うう。ごめんなさ~い……

両手で口を封じ、言わ猿になったんだけどなんだかデジャヴなやり取りだ。
でもこいつも負けず劣らず声がでかいから頭痛くて怠い時には会話したくないし、なにかあったら防犯ブザーの代わりにはなるんだろうな。要らないけど。
話に夢中になってるハヅキ達の所へ少し大人しめに近寄ってみることにした。
とは言っても入口からベンチまでに身を隠せる便利なものはないから気持ちだけではあるが。

「ム。ハヅキ誰か近づいてきましたよ」

アオセはゲームに夢中に見えて残念ながら気配に鋭いようだ。真面目に隠すつもりもなかったし潔く堂々と正面に出てやる。

「げ。先輩が来たわ!私の恋心を踏みにじった鬼だわ!あの角が証よ!」
「だからそんなつもりじゃなかったんだって」
「昨日言ったわよね?もう来なくていいですって!ふーんだ!!一度雑に扱った想いを簡単に取り戻せるなんて思わないことね!」
「俺のこと幻滅したままでいいから、仲良くはしてほしいんだけどなあ。ハヅキと俺が喧嘩してるって知ったらお母さんだって困ると思うよ?」
「な~に言ってんのかしら?困らせてるのはあんたなんだからあんたが責任取んなさい。それこそ義理ってもんよ」
「わーかった……求めてるものはなんですか?」
「そうねえ。なんでも言うこと聞いてくれるって言うなら――……1日ハヅキちゃん専属になってもらおうかしら!」
「専属ぅ……?って具体的に何を?」
「私と1日中付きっ切りで過ごしましょう!かわいいかわいいこのハヅキちゃんを真心をた~っぷり込めて可愛がってくださいな!もちろん、隣にいるマウント男とかそういうのはナシ。ついてきたらゴミ箱に捨ててでも突き放してもらうわ」
「誰がマウント男じゃ!俺のことをお邪魔虫扱いするんじゃねえ!」
「私はどうすればいいんですか?」
「アオセはいいわよ計画に支障がなければ居ても許したげる」
「ワーイ?」
「先輩!贔屓です!俺はひどい扱いするのに!」
「だってあんた絶対にデートしてたら邪魔してついでに先輩の隣奪っていくでしょ。気に食わないわ。だからアウト」
「ヌギギギギ……お、俺だって気に食わねえよお前なんか!ねえ!こんな奴の機嫌なんか取る必要ないですって!」
「悪いけど帰ってくれ、ちょうどいいし」
「誰も味方してくんないなんて孤独すぎて泣けてきちまいますぅ……

足を組みすっかり女王様気分でふんぞり返るハヅキと、縮こまってしょんぼりと肩を落とす犬。
ハヅキがいい加減機嫌を直してくれないと行動を共にする際に支障がでてきてしまうこともあるだろう。
純粋な気持ちを利用するようで悪いけど、俺には使命がある。
こうなればもう一日従者のように付くのも多少は仕方あるまい。これだってハヅキの為だ。
それに。今の彼女のことはまだ詳しく知らないからこれを機に情報を得ておけば意図して扱いやすくなって良いかもしれない。

「日曜日って大学は休みよね?」
「うん」
「じゃあ次の日曜日を1日いただくわ!首を洗って待っていなさい」
「ハヅキ、1日なにするですか?遊ぶデス?」
「あんたも座ってばっかじゃなくて私と出歩きましょ、連れてってあげるから」
「はい。私はあなたについていきます」
「ロボットみたいだな……
「俺も勝手についてくからな……!」
「お前は我慢しなさい!」
「うわああんなぁんでですかああ!」

泣きながら不公平を訴えてくるが今回はおとなしくお留守番しててくれないだろうか。頼むから……
騒ぎまくるやつは置いといて、ハヅキとアオセは明るく計画について話し合っていた。(というかハヅキが一方的に喋ってた。)

「この町のこと色々リサーチしておいたの!と言っても、なんかどっこも閉店ばっかで全体的にイケてないのよね」
「町が物騒だから営業したくないんじゃない」
「だからさぁちょっと古っぽいお店ばかりしか出てこなかったのよねえ。ナヲ君とこの間見つけたお店は可愛かったんだけどなー。でもその中でも気になるところリストアップしといたわ!」

携帯をこちらに向け、行きたい場所のルートが示されたマップアプリの画面を見せてくれた。通過点をタップするとその場所の外観や内装の画像、そして店舗自体の営業情報がでてくるようになっている。
計画は大体こうだ。
まず、俺が朝ご飯を担当することになっているらしい。つまり俺はこいつが起きる前に早起きして家まで突撃しないといけないと。
それから少し食後はのんびりしてから出発し、新しい服が欲しいらしく服屋を目指す。

「私だってもっとおしゃれなお店で服を選びたかったんだけど……このちょっと錆びた大きい服屋さんしかなかったのよ!みんなどこで服買ってんのよ!」
「ああ……まあ~服装気にしてる奴は大体通販で購入してるんじゃないかな……。別にここで買い物してる奴もいると思うけど」
「うわあああんせっかく好き放題歩き回れようになったのにまたオンラインなのーー!?」
「いや好き放題歩き回らないでほしいんだけどこっちとしては」
「ネット通販はね!現地で実物を見て自分でものを選ぶ喜びがない!!画面に並んだ絵共を見て、なんとなく良さそうか考えるの!試着なんてできないのよ!?だからやっと実物が届いたと思って着たら「あれ、これサイズ合わないな?」とか「ちょっと画像と違くない?」とかなって結局着れずに売るとかそうなっちゃうのよーー!こんなんガチャよ!服ガチャ!今着てるやつだってそうやって選ばれた猛者なんだからね!」
「苦労したのはよくわかった」

猿のケツより真っ赤な顔で地面を割らんとして地団駄を踏むハヅキの姿を見るにあちらで不便なこともあったようだ。
ハヅキがこないだまでいた黒庭市は学校の旅行で少しだけ訪れたことがあるけれど、観光もほどほどだったし詳しくは知らないからなあ。
ただこちらよりは都会というか色々ありながらもめげずに発展し続けていると方である。なんならモダンからクラシックに偏ってきている彩町よりは確実に近未来的な場所だとは聞いている。
なのにこの様子とはお父さんも結構過保護にしてくれてたんだろうか。どんな風に生活してたんだろ。

「ま、ともかく様子見ってことでここは行く。予想を上回っていただけると信じて」
「望みの薄い期待だな……

そして服を見て回った後の次なる目的地はそこからすぐ近くのインテリアショップとなっていた。

「ここで新しく棚とか注文しようと思って……お母さんにはちゃんと許可を取って予算を確保しているわ!」
「それこそ通販でいいじゃん」
「それが嫌だから行くのよ!!1日を確保するってなって行くところが狭い理由くらいなんとなく察しなさいよ!」
「暇町の方いけば大きいモールもあるぞ、ってかあっちの方がここらより色々ある」
「まずは近辺からなの!近場の利便性をこの身で把握しておきたいの!私まだここに来て日浅いのよ!?」
「あーあー……ごめんて……
「ハヅキハヅキ、でしたらゲームセ――……
「よーーーしっ!行こうなああ!!」
「急にうるさいわね」
「先輩が突然おかしくなった」

危険ワードが聞こえかけ咄嗟に聞こえないよう遮る。この子ハヅキと遊びたいが為ならすぐさま危険ワードを放ちそうだわ。恐ろしい。
さっきまでただの同行者として見ていたけれどこいつは歩く地雷なのかもしれない。
ハヅキの機嫌も窺いながらこの子が投げ入れてくる爆弾処理もする……ハードな一日になりそう。

――で、最後は回転寿司食べて帰るの!これが一日の計画ね!」
「そこは夜のムードとか重視しないんだ」
「私が今お寿司食べたいから食べる」
「そっか……
「オスシ食べたことアリマセン」
「やだぁ、あんた遅れてるわねぇ。これを機にお寿司食べましょ!先輩が奢ってくれるから」
「しれっと俺の金!?」
「大人なんだから金持ってるでしょ、詫びろ」
「お詫びという体を使い、お兄さんに対して徹底してパワーハラスメントしてくる高校生こわいよお……
「パワ……シラス?」
「聞き慣れない単語だからっていちいち聞かない」
「スミマセン」

たまに漫画を買うくらいだしお金がない訳じゃないけど……
他人の金だからこそ食いまくるようだったら俺の財布のお札たちは一気に昇天していくことになる。
さっきも犬の所為で無駄に金使わされたのに……

「それでは!この計画を元に、たまーにアドリブも加えつつ~日曜日は愛情いっぱいのご奉仕お願いしますねせーんぱい!」
「俺は執事か?」
「執事にしては身なりがちょっと、そうよね……
「はいはい俺は地味で青黒くてゴミカスの排水溝にドブ水として吸い込まれるべき男ですよー!」
「なんで急に自分のことありえないくらい下げたの?」

計画発表が終わると、突然ポケットの携帯が震えた。
ロック画面にはナカイからWIREの通知が来ている。

『お前の金でかっぱ巻き食い放題やったー!俺も行くから。待ってて』

こいつは食い逃げで捕まってもらおうか。