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「もう紡ぐべきでもない記憶でしかないの」
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H SPRING -11
「ほら、あんたの目的地そこよ」
「
…………
」
「イヤホン外せ!」
公園が見えるところで親切に立ち止まってやったというのに相変わらず音楽に夢中なようだ。
私が大声をあげてやることでやっと外す。
「あ。では、ハヅキも行きましょう」
「私言ったわよねえ
……
?」
「ヨージないからイカナイ?」
「そうよ。あんたはあそこで日が沈むまで日向ぼっこするんでしょ。行けば?」
しっしっ、と厄介なものを手で払う素振りをしてみるがアオセはなぜか私の服の端を掴み私を見つめて立ち止まったままだ。
……
まさか私と遊びたいって言うの?こっちとしてはお断りなんだが?
「懇願しても私は折れてやらないわよ」
「ではどうすれば来てくれるんですか?私は、ハヅキと一緒にいたいです」
「学校来たのもなんとなくそうじゃないかって思ってたけどあんたよっぽど私が好きなのね」
「スキ?」
好意すらようわかっとらんのかい。どう考えてもお前私にめっちゃ懐いてるだろうがい。
やっぱりこいつ最近白い部屋から出てこれたばっかなんじゃない?
全てにおいて知識があまりにもなさすぎる。ここまでとなると異常だ。
私が教えてやらなきゃいけないの?1から10まで?
なぜ私がこいつの飼育係に任命されているんだ。
なんなのだこいつは。
知らない。
以前に会ったことなど、私には、ない。
「スキかどうかはわかりません。でも私はただ、あなたと一緒にいたいです。あなたといた時間は楽しかった、と記憶していますから」
「私にはあんたとの記憶はないわ。過去に縛られてないで他に友達作った方がいいわよ」
「トモダチ
……
。ハヅキがトモダチ、です」
「だから!
……
~~だああもう!あんたがしてるのはずっとずっと過去の話なの!あんたが知ってるらしい私はもういないわ!だからいい加減やめろって言ってんの!わかんない?わかんないなら私に執着しないでってことだけわかってくれればいいわよ!」
「
……
では私はもうあなたにとって必要ない、ということですね?」
「そうよ!!」
「わかりました」
妙にすんなりと承諾し、掴んでいた服から手を放す。
私はやっと理解してくれたことにまた溜息をついてもう離れようかと思った。
が。
アオセが突然懐から拳銃を取り出したのだ。
「へ!?」
「では処分します」
「ちょちょちょちょっとまてまてまてまて噓でしょ何考えてんのどっから出したの落ち着け落ち着けって!?」
こめかみに銃口を押し当てようとしているのを慌てた私は飛び掛かり阻止する。
幸い私の方が力が強いので無理やり銃を奪ってやった。
しかし、次にぶちりとなにやら鈍い音がした
……
。
「え?」
「ア。腕モゲタ」
「ギャアアアアアアアアアアア!?」
アオセの腕が、生々しく取れていた。
どうやらアオセから銃を奪う際に腕を引きちぎってしまったらしい。
え?そんなことってあるの?
でも
……
でも
…………
手品とかでもなく本当にアオセの手があったらしい部分が消えている。
そして恐怖で取り乱し床に落とした腕は力なく転がっている。
わ、私、人を、人の腕を
……
。
心臓は急激に暴れだした。
「私は不良品ですし。これは後で捨ててもらいましょう」
「はあ
……
、はあ
……
!!」
「さてもう一度」
「うわああああああああやめろって!やめて!お願い!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「謝罪の必要はありませんが」
「死ぬな!死ねなんて言ってないから!なんでそう極端なの!私が存在理由って重すぎるわよあんた!」
「しかし私はハヅキとの約束を守る為に待っていましたから。果たせないとなると肉体など活動の必要はありませんし
……
」
「キー!そういう中二病みたいなこと言ってないでまじで死ぬのやめて!私が嫌!うう、気分悪くなってきた
……
」
「エ。大丈夫ですか?」
「なんか、頭の血が
……
引いて
……
もうだめ
……
」
ずっと大声で叫びまくったり、もげた腕から飛び散った血のにおいとか惨状とか見てた所為か耐えられなくなる。
ふらぁっと私の視界は横になってやがて真っ暗闇に落ちる。
意識を失っている間、また夢を見た。
また夕暮れの夢だ。
今回は家じゃなくて、あの公園みたい。
ペンキでまんべんなく塗られたように真っ赤な土の上を歩く。
視界は低い。公園にある滑り台も、ブランコもいつもより大きく見える。
「ハヅキー」
誰かが私を呼んでいる。
振り返るけど、誰もいない。
気のせいか。と思うけどまた聞こえる。
「どこ見てるんだよ?ほらこっちだよ」
聞けば聞くほど安心する声だった。
その声の主を私は覚えている。
だから、喜んで近づいてしまったのだ。
「■■■■■!そこにいたのね!」
真っ暗な茂みの方だった。
がさがさ茂みをかき分け声の主を見つける。
「きゃあ!」
形容しがたい肉の塊がそこに落ちていた。
血をどぼどぼと垂れ流し内臓は穴から零れ落ちていて、その内臓の不快なにおいを喜んだ蠅が飛び回っている。
穴は、口のようににんまりと笑い腸を腕のように伸ばし、私の手を引こうとする。
「なあ
……
どうしてもっと早く
……
俺を見つけてくれなかったんだ
……
?」
「やだ、やだ!離して」
「お前が呑気に俺を置いて好き放題するから
……
」
「嫌
……
っ」
「俺が死んじゃったんじゃないか!!」
「きゃああああ!」
触手のように暴れ狂う内臓の波に飲まれ窒息しそうになったところで目が覚めた。
「大丈夫ですか?」
目を開けた瞬間、目の前にはアオセの顔があった。
「うぇえ!?」
夕方になっていた。
少し硬い枕に頭を預けているんだけど。えっと。まさかこれって
……
。
私は恥ずかしながら急いで飛び上がって上体を起こす。
想像通りアオセの膝枕であった。
「膝枕だああああ!」
「元気そうですね良かったです」
「あれ、私気を失ったのは覚えてるけど
……
まさかあんた」
「ハヅキが起きるまで待ってました」
どうやら公園のベンチで気を失った私を膝枕で休ませてくれていたらしい。
大分うなされていたので心配してたんだと。
確かによくわかりたくない最悪最低な夢を見た。
「ハヅキ、泣いているんですか?」
「ふぇ。あ。」
アオセの膝元が確かに濡れている。私がよだれをたらしたか泣いたかしかない。
「ちょっと、怖い夢見ただけよ」
「怖い夢ですか。ヨシヨーシ」
「オヒャァ!?おい!お前もかい!」
アオセは私の頭を優しく撫で始めた。オウイチロウさんだったら喜んだけどお前もするんかい。
「いや、でも。その
……
ごめん。さっきまでずっとひどいこと言いまくったわね。優しくしてもらった手前仇ばかりで返すのは悪いわよね」
「ヒドイコト?ですか?どれがですか?」
今やっと落ち着いて考え直してみた。
さっきまで衝動的にアオセを突き放すことばかり考えていた。
しかし
……
本人は傷ついたつもりはないみたいに言いつつも私を友達だと言った時、目に見えて寂しそうにしていたのだ。
私はあのゲーム機のこと昔のこととか色々自分にとって良くない気がかりが多くて勝手にイラついてばかりでアオセの気持ちなんかどうでもよかったけど
……
よく考えてみれば別にこいつ悪意とかなく純粋に私と友達でいたいだけなんだしちょうどいい距離に置いておけばいいじゃない?
深すぎず、でも友好的にお互い関わっていけばそれで。
ただまあ、問題が他にあるとすればこの超絶世間知らずな発言にこれからも頭を抱えていくことにはなるが
……
。
「
……
まだ友達でいてあげてもいいわよ」
「ヘ?」
「だから!ハヅキさんはまだあんたの友達でいてあげてもいいって言ってるの!」
「ハヅキはまだトモダチ?」
「そうよ。でも過去の話はあんまりしないで私昔の話されると具合悪くなるの」
「ムカシバナシしなければトモダチ?」
「そうそう」
「ではこれから私と一緒にまた遊んでくれます?」
「暇な時ならいいわよ。付き合ったげる」
なんだか子供を相手してる気分になってきた。
「私は
……
あなたがいなくなってからもここでずっと待っていました」
「昔の話はしないって今約束
――
」
「おかえりなさい、ハヅキ」
ずっと無表情だったアオセが茜色を背にやっと優しく微笑んだ、ように見えた。
私達の時間が今やっと動き出した。
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