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「もう紡ぐべきでもない記憶でしかないの」
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H SPRING -1
暖かい日差しが差し込む窓辺の席に一人、私は揺られていた。
これからへの期待なのか不安なのかはわからないけどそわそわしながらぼんやり考えながら流れる景色を眺める。
やっぱりお父さんについてきてもらった方が良かっただろうか
……
とか。
忘れものは本当にしてないだろうか
……
とか。何度も確認したはずだからきっときっと大丈夫。
『次はー彩町ー、彩町に止まりますー
……
』
あ、目的地そろそろか。
昨日まで住んでいたところからは結構離れている為、かなーり長旅だった。
乗り換えアプリがなければ多分今頃知らないところについていたかもしれない。ありがとう乗り換えアプリ。
もうすぐ停車という時に席を立つ人は私しかいない。いや、もちろん車内にはほかにも人はいるのだけど。
ドアへ向かう私に、不思議というかあまり良くはない雰囲気の視線が向けられる。
うう。きまず。なんなんだろう?私はただ帰郷しにきただけだっていうのに。
ドアが開いたなら無視してさっさと出ることにした。
駅に降りると、ホームはかなり廃れた様子で私を迎えた。
自然で神秘的というよりは不気味で嫌な感じ
……
。
ゴミ箱には生だろうが缶だろうがお構いなしなゴミがいっぱいに詰まっていて、床にはところどころ赤黒い染みがある。錆
……
なのかな?
帰郷というにはとてもじゃないが空気をおいしいとは感じられない。
改札には何人か人が待ち構えていて、一人だけ私の前にでてきた。
「入場許可証を拝見致します。」
「えっあ、は、はい
……
。」
挨拶でもなんでもない言葉をかけられて動揺する。
ここに来る為には役所で事前に入場許可証を発行していなければならかった。
なにやら条件があるらしく「この町の関係者であることの証明」「どういった目的でこられるか」「その他注意事項や重要な契約」とか
色々確認してはサインさせられて
……
あ、あとなぜか健康診断も必要とかもあってとーにかく色々やらされて
……
。
まじであり得ないくらい疲れて割れそうなくらい頭痛を感じたりもしながらこなしたんだった。
鞄から取り出したそんな血と汗と苦しみの結晶を渡すとその人は鋭い眼差しで隈なく確認しはじめる。
「
……
―――
よし。確認完了。改めてようこそ、おかえりなさい彩町へ。」
「「ようこそ、おかえりなさい彩町へ!」」
「ど。どうも
……
?」
なんだか飲み込みきれない私だったがとりあえず笑顔を取り繕って返した。
「移住先や市内のご案内は必要ですか?必要であればガイドをつけさせていただきますが。」
「え、い、いいです!大丈夫です!一人で行けますから!」
「そうですか
……
?では、お気をつけて
——
……
。」
「
……
?」
気を付けるようなことなんてあるのかななんて思いながらきまずい集団から離れる。
昔住んでた場所なら別に案内なんて無くても記憶を頼りになんとなく帰れるでしょう。
・ ・ ・
家へ向かう道、桜並木は可憐な桃色の花を舞い散らせていた。
まるで私のようだ。
春っていいなあ。ただ町を歩くだけでもこんなに素敵な始まりを予感させてくれる。
次第に緊張も薄れてきて私の中にはただきらきらしたものだけが踊っていた。
なんか色々めんどくさかったけど、これから私を明るい未来が彩
——
……
キイイイイイイイイッ!!!
「
———
え」
バイクが猛スピードで私目掛けて迫ってきてる。
きてるけど。動かなかった。
体にまで理解は浸透してなかったから。
「あぶないっ!!」
「きゃっ!?」
誰かに突然、抱きしめられる形で道の端へと倒れこんだ。
「ああ、よかったー。幸いどっか行ったみたいだな。」
「わ、わわ、あわわ
……
」
「あっ。急に無理やりごめんな。怪我とかしてないか?」
私をゆっくり座らせて、心配する知らない人。
偶然通りかかったのかバイクから助けてくれたのだ。
礼を言おうと顔を向けどんな人かまじまじとこの目で確認もする。
暗ーい色の学生服を着ていて、これまた暗ーい青い髪。しかも牛の角みたいに毛がぴょんっと生えていた。
でもそんな地味さや奇妙なところより、私は顔を見ていた。
水色に光る海のような瞳とそれそれは
……
イケメンなそのフェイス。
ああ、まじか。
「け、怪我ないですっ!助けてくれて有難う御座います
……
!」
「礼はいいよ。助かったならそれで。じゃあ俺はこれで~」
「ちょ、ちょっと待って!」
「ん?」
「聞いてほしいことがあるんです、わ、私
…………
私
……
っ」
「あなたに一目惚れしてしまいました
……
っ!!」
「
……
は?」
私
――
……
△□△ ハヅキは。
この春、記念すべき1日目に。
まるで少女漫画のように『運命』に結ばれたのです。
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