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「もう紡ぐべきでもない記憶でしかないの」

H SPRING -6



入学式から少し時は過ぎて、明日は始業式。
今日は前日なんだけどWIREでナヲ君と出かける約束をしていた。
この間オウイチロウさんと二人きりになりたいからってお断りしちゃったお詫びも兼ねて遊ぶことにしたのだ。
ナヲ君はいつでも遊べるって言ってたけど、私が前日に指定した理由は「明日から一緒に学校頑張ろうね」って意味も込めていたり。
ハーフアップに仕上げた暖かいピンクの髪に、着慣れた黒のシャツの上にはお気に入りの白のエプロンワンピースで明暗を作る。
白黒で彩られたシンプルな見た目でも私の髪色が明るいから自然と顔に注目してしまうはずだ。私ってとってもかわいいからね。
そろそろ集合時間という頃にちょうどナヲ君が家までやってきたようだ。

「やっほーナヲ君!今日はおもっきしあっそぼーぜー!」
「うん!えへへ……ハヅキちゃんと二人で出かけられて僕は幸せものだな~」
「そうでしょそうでしょ!こんなに可愛い私を独り占めできちゃうんだからこの上ない幸せよね!」
「当然だよ」
「よくわかってるじゃない!」

ナヲ君は私の喋ることに対してあまり否定しないタイプのようだった。ま、お世辞だろうけど。
こないだの様子を見るに、きっと誰に対してもこうやって優しい子なんだと思う。
イケメンで優しいなんてそりゃ人気も出るわ。うんうん。
明日からハーレムを作るんだろうなこの子は……

「なんだか頷いてるけど、どうかしたの?」
「ナヲ君ってモテるんだろうなあって思って」
「僕?うーん。そうなのかな……。昔はむしろ見た目で馬鹿にされたりしたんだけどな」
「えー!?こんなに金髪美少年なのに馬鹿にされる要素があるの!?馬鹿にする方がおかしいのよそれは!」
「ハヅキちゃんから見て僕は金髪美少年なんだ?」
「うん」
……そういうの好き?」
「好きよ」
………………。ちょっと待ってね」

何故かそっぽを向いて俯き、両手で顔に暗闇を作るように覆う。照れてるのかな?
30秒位はそうやってどれだけ話しかけても聞こえない程固まっていた。
相当な照れ屋さんなのね。と、ナヲ君が固まってる時はそっとしておいていた。

「ご、ごめんね。精神統一してて」
「えっ。うん?うん……別にいいわ、よ……?」
「褒められ慣れてないからびっくりしちゃったんだ」

困り眉で照れ笑いを見せるナヲ君に私は理解の意味をこめてふふっと笑顔を返す。
あれ?でも、こないだ女の子から滅茶苦茶褒められまくってたよね?
その時は全然こんな感じじゃなかったような……

「そうだ!ハヅキちゃんはゲーム好き?好きならゲームセンターの場所知ってるよ」
「え……
「あ、あれ、好きじゃなかった……っけ」
「いや……えっと……ゲー、ム、ね……

ゲームが好きか、と聞かれて考えていると何故だか私の頭の中が、胸の中が、急激に曇っていく。
さっきまで快晴だったのに。
悪い雲が雨を降らそうとすべてを覆いつくそうとする。

「な、何これ?何……?やだ、ダメ、ダメよ……!こないで……!」
「ハヅキちゃん?」
「うう、あ……っ!」
「ハ、ハヅキちゃんっ!しっかりして!」
「やだ……やだよ……お兄ちゃ……っ」

(すっかり元気になったのかと思ってたのにこれじゃあ全然じゃないか!)