DRRV11037
2025-06-13 12:11:00
28595文字
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DRRV: Prolonged 前編



廊下に出るとすぐ、やたら目立つ水玉模様の階段を見つけた。なんと地下があるらしい。才囚学園だっけ?ほんの十数人のための学校にしては大規模だ。

降りてみる?」

「おうッ!」

迷いなく答えた榊くんは一歩先に行ってしまう。置いていかれないように、私もぱたぱたと降りていく。


地下


コンクリートで固められたちょっと無機質な廊下に、幾つか扉が取りつけてある。いかめしいけど、危険な場所ではなさそうだ。

「四葉、ここも見て回ってみようぜ。出口があるかもしれねーし仲間がいるかもしれねー!」

「そうだね!」

出口がそんなに簡単に見つかるとは言い切れない。でも、私は希望を抱いていたかった。

最初に見つけたのは、茶色で両開きの扉。開けてみると図書室だった。ここにもモニターみたいな機器があるけども、それ以上に目立つのは、苔と根の張った床に、棚では収まりきらないほど積み上げられた本だ。

「わぁ何冊あるんだろう?」

むせ返るような本の匂いがする。四方八方を書物に囲まれて萎縮してしまいそうなほどだ。

「数えきれないっスよね!こんだけぜーんぶ頭に入れたら、流石にパンクしちゃうんスかね?」

突然、女の子の声がした。

「!」

びっくりして振り返ると、本棚の影から少女が姿を現した。全身を紫一色で固め、鎧とも見まがう量のバッジをゴテゴテつけた、見るからに危険そうな人だ。耳を突き刺した無数のピアスが痛々しい。

「どーも!釘山くぎやまらくって言います。いちお、“超高校級のメモリーアスリート”なんで。よろしくっス」

女の子はカラフルな飾りでデコられた紫のツインテールを揺らし、にこやかな笑みを浮かべた。目元のクマが笑顔を淀ませてしまっているものの想像したより話しやすい子なのかな。

「メモリーアスリート?って何?」

一番初めに気になったことを訊いてみた。

「んーメモリースポーツは知ってますか?簡単にいうと記憶力選手権っスね!大量の数字や名前を記憶して、その量、正確さ、それからスピードを競うんスよ。釘山はその世界大会でそこそこ良い記録を取って、超高校級に選ばれました」

未だに思い出せない“あの子”のことが頭をよぎる。ひょっとすると隣の榊くんも自分自身の状況を思ったかもしれない。

「じゃあ、記憶力が凄くいいんだね。かっこいいな」

すると釘山さんは、うーんと唸った。

「いい、わけじゃないっスよ。寧ろ悪い方かも」

「え、どういうことだ?」

釘山さんはにへ、と笑った。

「釘山は忘れっぽいんで。なんつーか全部が極端なんスかね。大事なことは消せないし、どうでもいいことは全部忘れちゃうっス」

私は無神経なことを言ってしまったと分かり、相手の心を心配した。

「そうなんだ。ごめん、何も知らずに」

「いやいやいや、気にしてないんで!謝らんといてください。」

ね?と釘山さんは温かい声を出した。それから付け加える。

「ってか、釘山的には忘れたもんは気にしても無駄なんスよ。寧ろ、覚えてるほうが邪魔ですらある。過去よりも、今を全力で楽しんだほうが絶対いいっしょ。」

その言葉は軽いようでいて、真実が持つ特有の鋭さを帯びていた。

「これから一体何が起きるか知りませんけど、この場所も楽しそうっスよね!」

その感想には頷けそうにないけれど。ともあれ、第一印象よりも遥かに気さくで楽しい人みたいだ。