DRRV11037
2025-06-13 12:11:00
28595文字
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DRRV: Prolonged 前編



寄宿舎を出ると、付近の藤棚のベンチに、稀な白いスーツ姿の男性が長い脚を組んでゆったり腰かけていた。白色の髪と紫色の瞳がちょうど藤の淡さに溶け込んで、謎めいた儚さを見せるさまには、まるで絵画の世界の住人を前にしたように感嘆してしまう。

「ちょっと大人びてるけど、アイツも高校生だよな?話しかけてみようぜ!」

「そ、そうだね。でも、どうしよう?なんて話しかけたらいいか

「??何迷ってるんだよ?」

「だ、だってほら、分かるでしょう、独特なオーラがあるから絶対 芸能人だよ、どうやって声をかけたらいいの?」

躊躇いなく駆け寄ろうとする榊くんを引き留めていた。どうしてだろう?あまりに神秘的で美しいから、声をかけることさえも畏れ多い。

とそのとき、

「“ごきげんよう”じゃいけませんか?」

いつの間に近づいていたのだろう。男が此方を覗き込んで、愉快そうに微笑みを浮かべた。

「わぁっ!?」私は身体を強ばらせた。

「おやまあ、そんなに緊張なさらないで。」

男は手を差し出した。てっきり握手をくれるのかと思って躊躇いがちに手を差し出したら、彼はまるでお姫様に従者がするように恭しく跪いて、私の手を柔らかな指先で包み込む。

「はじめまして。僕の名前は楸谷ひさぎやとおる。夜の街のNo.1、支配人にして“超高校級のホスト”です。どうか覚えてくださいね。」

そうして私を見上げて、とどめとばかりにウインクをひとつ。私は、頬がかっと熱くなるのを感じて──

「ストーーーーップ!!!!!!テメー何やってんだよ!?!?!?」

榊くんが楸谷くんを引き剥がした。

「オラッ、離れろナンパ野郎!」

「痛いです!やめてください!」

二人が喧嘩している間、私は速まった動悸を鎮めようと胸に手を当てた。びっくりした……。あんな風に声をかけられたのは、生まれて初めてのことだった。

「ひ、楸谷くんだね。ホストなんだ?」

深呼吸の後、私はどうにか会話を続けようと言葉を発した。私から3mほど引き離された楸谷くんは、榊くんの監視を受けながら、物腰柔らかに答える。

「ええ。杯を交わし、会話でお客様を楽しませるのが僕の仕事です。」

「でもお前、高校生のはずだろ?飲むって何をだよ。ジュースか?」

楸谷くんは一瞬嘲るような表情になった。

「っふふ、あぁおかしい!ジュースだなんて飲みませんし飲ませません。なにせ単価が、安いので。ねぇ、このイケメンのお顔をどうぞ惜しみなく覗き込んじゃってください。お顔が天才でしょう? 僕に相応しい品といったら、高ぁいお酒に決まっているじゃありませんか。」

楸谷くんはそれから、ふっと悲しみを瞳に宿すと、私だけを見つめてこう言った。

……僕、お金が必要なんです。」

「ど、どうして……?何か困ってるの?」

私が心配になると、楸谷くんは唇に人差し指を当てて、寂しそうにも悪戯っぽくもみえる微笑を浮かべた。

「秘密です。今日は僕らの“初回”ですから、まだそういう話はお答えするのが怖いんです。……もし、貴方が、もっと知りたいと思ってくださるのなら、どうか僕を“本指名”にしてくださいな。少々、先立つものは必要ですがね♡」

「ではまた会いましょう」と言い残すと、楸谷くんは去っていった。