DRRV11037
2025-06-13 12:11:00
28595文字
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DRRV: Prolonged 前編



玄関ホール


「榊くん、ここって玄関ホールだよね?」

私は真剣な顔で尋ねた。広い吹き抜けの空間には、閉ざされた大きな扉が構えている。

「おう、そうみてーだなッ」

「ということは

扉は、思いのほか薄く、思いのほか軽そうで、外側から板一枚をすり抜けて光が差し込んでいるようにすら思われた。

「あの扉が玄関なんだよね?あそこから外に出られたりしないかな?」

私の言葉ではっとした榊くんは、今すぐ扉に近づこうとしたものの険しい顔で立ち止まった。警戒を滲ませて扉を睨んでいる。

「そう上手くいくのか?例えばほら、爆弾が仕掛けられてたり!」

くす、と後ろから笑い声が聞こえた。

「心配無用だよ。その扉はすでに僕が確認したんだ。」

振り返ると、水色の艶やかなポニーテールが目に入る。何だかとても綺麗な顔立ちの───女の子?いや、声を聞く限り男の子───が歩み寄ってくる。濃く長い睫毛が一度瞬いてから笑んだのが、蝶の羽ばたきのようだった。

「ごきげんよう!僕は三品博行。作家なんだ。」

三品くんは柔らかいアルトの声色で名乗り、美しく微笑んだ。

「作家さん?」

「ああ。暗闇作家、“超高校級の小説家”だなんて最近では呼ばれているよ。」

あっ!本屋さんで見たことあるよ、貴方の書いた小説!」

「本当かい?」

彼は大きな青色の瞳をまんまるにした。

「うん、確か『タブラ・ラサであったもの』みたいなタイトル。」

「僕のデビュー作だ。中等部3年のときに書いたんだよ……。」

「じゃあ、15歳で!?凄い!流石は超高校級だね。あのとき買っておけばよかったなぁ」

「ふふ、その言葉だけで何よりの光栄さ。もし興味がおありならね、僕のはいつもホラー小説だから、夏は冷感グッズに、冬は薪の足しにおすすめだよ。そうだ、二人はどんなジャンルの小説が好きなんだい?」

あんまり読まねーかも?昼休みはいつもサッカーだからな」

「私は……恋愛小説かなぁ。甘い気持ちや切ない気持ちに浸れるから。」

三品くんはきらきらと笑った。
「いいね!どちらも素敵な時間の過ごし方だよ、」

急速に和やかになっていく会話を、榊くんが起動修正する。

「でも、今はそれより、扉だろ?オレ等は閉じ込められてるんだからよ。三品、教えてくれ。あの扉で外に出られたのか?」

「!それは……

三品くんは答えに詰まった。

……ああ、出られたけれど、出られなかったんだ。」

「??どういうことだ?」

謎めいた答えだけを残して、三品くんは悲しげに睫毛を伏せた。

「その目で確かめてみるといい。あれを見て、僕は言葉を失い、立ち尽くすほかなかった。正しくSFでしか有り得ない、理を超えた仕掛けだ……。」

不吉な予感がした私は、榊くんと顔を見合わせる。外に出られたけど仕掛けがあるの?一体どういうこと?

私は玄関扉に近づいた。でもなかなか開ける勇気が出ない。さっきまで私の希望だったこの扉の向こうに、一体何が待ち構えているのか

「四葉、」

榊くんの碧色の目が、まっすぐ私を見た。
そうだよね。何があっても進む方向は前しかない。
私は扉に手をかけ、ひんやりと冷たい感触に驚きながらぐっと押し開いた。