DRRV11037
2025-06-13 12:11:00
28595文字
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DRRV: Prolonged 前編



食堂


次に、倉庫からほど近い食堂に足を踏み入れた。薄黄色を基調とした近未来的な食堂には、大きな長方形のテーブルを囲う十数脚の椅子。
モニターはここにもあった。どこにでもあるらしい。一体何のためだろう。

こんにちは」

ぎこちない日本語で話しかけられた。見るとそこに立っているのは、刺激的なピンク色の髪をお団子にまとめて、現代風にアレンジされた着物を身にまとった女性だ。見上げるほど背が高く、自信に満ちて背筋がまっすぐで美しい。目鼻立ちがくっきりしていて……もしかして。

「ア、アイキャントスピークイングリッシュ、」

反射的に定型文を唱えるとその女性は眉を釣り上げた。

「Oh good for you, わたしは日本語話せます。何か問題ある?」

発音が少しぎこちないものの、彼女の言葉ははっきりとこちらに伝わった。英語が不得意な私とは大違いで、とても上手だ。

「ご、ごめんね」

流れを見ていた榊くんが割って入った。
「はじめましてッ!お前も超高校級の生徒で合ってるか?」

「もちろん。」彼女は即答した。

「わたし、清忌レナ。ミシガンから来た“超高校級のダンサー”。会えて嬉しいです」

「ミシガンってアメリカの州だよね。日本に引っ越してきたの?」

「No、わたしは留学生。でも気に入ってるし、未来には本格的に日本で活動するために移住するのも可能な話。'Cause, you know わたしはずっと日本のファンとの交流を楽しんでるし、日本で公演すら予定しているの、本当にもうすぐ。」

「公演……凄いね。」

「興味があればどうぞ。譲れるチケットが余ってるかどうか確かじゃないけど、わたしは必ず成功させて次回を開くから心配ないわ」

……すごい

凄い以外に何と言えばいいのか分からない。まるでインタビュー記者になった気分だ。プロ意識が高すぎて、生きている世界が違いすぎて、どうしたらいいのか分からない。

「おっ、な~んかえらい楽しそうやな。俺も混ぜてくれる?」

そのとき厨房のほうから現れたのは、陽気な声の男の子だった。もさもさした黒い髪に大きな丸眼鏡、そばかすの散った鼻──全体的に素朴な容姿だ。彼は足をスタッカートの調子で軽やかに跳ねさせ、此方へやってくる。

「ど~も!俺の名前は小栄なずな。気軽にナズって呼んでな?趣味は音楽を聴くこと、これからどーぞよろしゅう!」

彼はにこにこと笑みを作り、ぴょこりとお辞儀をした。

「ひょっとして貴方も超高校級だったりする?」

そう尋ねると、小栄くんはすぐには答えなかった。

「おっ?ということはお三方もそうやったりするん?」

「実はそうみたいなんだ。私は四葉結。“超高校級の幸運”だよ。特にこれといった才能はないんだけど、抽選で選ばれたんだ。」

「榊光。多分何かの超高校級らしいぜッ。よろしくな」

「わたしは清忌レナ。“超高校級のダンサー”で、ダンスコンテストなどに出てる。よろしく」

小栄くんは、驚いたような、どことなくほっとしたような、曖昧な表情を浮かべた。

「へぇ〜!!超高校級が3人もおるなんて珍しいなぁ。へへ、な〜んか安心したわ。俺も一応“超高校級の音楽家”ってなってるんよ。おんなじってことは、俺ら仲間やな!」

さっき“趣味は音楽を聴くこと”なんて語っていたけど、遥かに大きなスケールの音楽好きに違いない。

「音楽家……!って、何をするんだ??」

「楽器弾いたり、曲作ったり。全部引っくるめての才能らしくって、こんなボヤっとした名前になってもうた。」

「へェ。おーるらうんだーってヤツだな!凄ぇじゃねーか」

「いや〜全然大したことあらへん。俺なんて一人じゃ何も演奏できんのに、みんなにおんぶにだっこでこんな称号まで貰ってもうたから、場違いも場違いで。」

そこまで言って笑うと、小栄くんは一瞬目を逸らした。一見明るいのに、彼はときどき自信なさそうなそぶりを見せるので、話していると自分まで不安定な気分になる。

……早く帰れたらいいんだけど」清忌さんが肩を竦めて話を変えた。

「それかせめて、今日が何日なのか知る必要がある」

「そ、そうだね……。家族に心配かけちゃってるだろうから」

私は呟いた。 私がいつまでも家に帰らないことに気づいたら、お父さんとお母さんは学校や警察に相談するに違いない。もしかすると、自分たちでも辺りを捜してくれているかもしれない。ちくりと心が傷んだ。

昨日締切の宿題も俺の帰りを待ってくれとるやろうなぁ」
小栄くんがぼやいた。

「気にすんな、こんなことに巻き込まれたんだから締切なんか無効──って昨日かよ!?全力で気にしろ!真面目にやっとかねーからもう

榊くんが呆れて溜息をついた。