DRRV11037
2025-06-13 12:11:00
28595文字
Public
 

DRRV: Prolonged 前編



倉庫


私たちはすぐ近くの青いドアを開けた。

「ここは倉庫かな?」

「すっげーデカいな」

天井まで届くほどうずたかく収納された物資の種類ときたら数えられない。日用品、お菓子、スポーツ用品などなど何でも揃っていそうだ。もっとも、仮に一生物に困らない暮らしが送れるとしても、一生ここで過ごすのは受け入れられないけど。

…………ひっ、いるっ、二人いるっ」

息を呑む音。目を遣ると、私たちは物陰にしゃがみこんで口元を抑えている黒っぽい存在を発見した。その存在はこちらを視認するなりぷるぷると震えだし、一歩近づかれる度にびくっと肩を跳ねさせている。

「そ、そんなに怯えなくても。どうしたの?」

苦笑しながら腰をかがめて声をかけた私に、初対面特有の緊張はなかった。私が学級委員をしているクラスでも、似たような大人しい子にときどき話しかける。

……ご、ごご、ごめんっ。ごめん……………君たちの姿を見たら吐きそうになって

私は絶句した。
……えっ……そんなに嫌い!?何か気を悪くさせちゃったかな?」

「ち、ちが、ぁの、会えてほっとしたのに緊張しちゃったというか」

彼はずっと目線の合わないまま、指先を慌てさせながら焦って弁解した。

「難儀だな」榊くんが呆れた。

「落ち着いて。とりあえず自己紹介しよう?名前教えてよ」

その人はびくびくしながら立ち上がり、何か言おうとしてまた言葉を詰まらせた。切れ長の目もここまできょどきょど左右に揺れると、何だか弱々しく思える。

はじめまして、になるのかな。ぼ、僕は黒原舟、です。“超高校級の探偵”

「へぇ!黒原くん、探偵なんだ。かっこいいね」

探偵って実在するんだ、と私は驚いた。推理小説やゲームの世界にしかいないものだとずっと思っていたのだ。

「私は四葉結。超高校級の幸運に選ばれたんだ。よろしくね」

「オレは榊光。超高校級とかはよく分かんねーけどよろしくなッ」

先程から平身低頭の黒原くんが僅かに目を上げて、場違いに濃い紫色の虹彩を覗かせた。

ゎ、分かんないっていうのは

「記憶がないっつーか心当たりがないんだよな。ここに居るからにゃ何かの才能があるはずなんだけどよ」

さすが探偵というのか謎に敏感で、黒原くんは黙り込んで考えはじめてしまった。本当に顎に手を置くんだ、とささやかに驚いているうちに、彼はまた一瞬だけ榊くんに目線を送った。

……。因みに、学校はどこの出身?」

「??それも覚えてねー!よく考えたらヤバイな!?」

常に明るく振る舞う榊くんに、なかなか踏み込めないものの……本音は相当、心細いに違いない。

……。困ったな。超高校級は毎年調べてるから、少しでも情報を覚えてたらよかったんだけど……ごめん。」

黒原くんは細い肩を更に縮こめて申し訳なさそうに言った。ここを出るまでに榊くんは自分のことを思い出せるのかな。