DRRV11037
2025-06-13 12:11:00
28595文字
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DRRV: Prolonged 前編



『おはっくまー!』

右半分は白、左半分は赤いクマが繰り返す。丸っこいフォルムをしていて、星飾りのついたマフラーを巻いていて、口におしゃぶりを咥えているのによく喋れるなーって……

「っそもそもなんでヌイグルミが喋るの!?」

『うわああああ!人間が喋ってやがるぜ!』

『人間は喋るんやで』

「うおッ、なんだこいつら!バケモノか!?」

『バケモノなんて酷い言われようだよそんな事を言う人間の心の方がバケモノだよ』

『でも、バケモノだとしてもぷりちーなバケモノよね』

「??オレはバケモノじゃねーぜ!」

『それは思う。この姿で生まれて良かったって思うもん。その時点で勝ち組だよね』

「な、何なの?どうして喋ってるの?これ、ヌイグルミじゃないの?」

一斉に喋り出す騒がしいヌイグルミたちに、私は全然ついていけない。

『ミー達は、モノクマーズじゃねー!ヌイグルミだッ!』

半分が青色の、ギターを抱えたクマが叫ぶ。

『台詞が逆になっとるで?』

半分が黄色の、算盤を持ったクマが正した。

モノクマーズ?」

聞いたことのない言葉だ。このクマたちの集団の名前なのかな。

『あっ!知ってるの!?』

桃色が尋ねてくる。

「ご、ごめんね、心当たりがないかも。動いたり喋ったりするヌイグルミは初めて見たの」

落ち込むかと思いきや、寧ろモノクマーズはみるみる嬉しそうな顔つきになった。どうやって表情を変えてるのか分からないけど。

『やったー!大成功ー!』

互いの顔を見合わせて喜び合うモノクマーズに、私は再びついていけない。一体何が成功してこんなに嬉しそうにしているんだろう
と、痺れを切らした榊くんが彼らに手を伸ばし赤のクマをぐいっと頭の高さにまで持ち上げてしまった。まっすぐ睨みつけて尋ねる。

「テメー、何者だ?」

赤色はぱたぱたと足を動かして慌てだした。

『わーっ!オイラはモノタロウだけど離してよー!』

続けて桃色、黄色、青色が喋り出す。

『モノファニーからもお願いするわ、降ろしてあげて!』

『このモノスケが考えるにしゃーないことやで。見ず知らずの土地で見ず知らずのクマに囲まれて混乱しない人なんて居らへんわ』

『ミーはモノキッド!仕方ねーから1個ずつ順番に説明してやろうぜェ!』

「おう!説明するんなら降ろしてやる」

榊くんは頷くとあっさり赤色のモノタロウを床に降ろした。モノタロウはほっとした様子。

「じゃ、四葉!何から質問する?任せるぜ」

「わ、私?ええっと

聞きたいことなら山ほどあるんだけど、取り敢えず

「ここってどこなの?何だか、学校みたいだけど

窓に有刺鉄線があって、近未来的で、やたら植物だらけなこの空間。ここがどこなのか少しの手がかりでも欲しいんだけど

『あのね、ここは才囚学園だよ。』

モノタロウが得意げに明かした。

「才囚学園?聞いたことねー学校だ」

「私も

『そりゃそうよ。キサマラ16人の為の学校だもの』

「16人?」

この教室には私と榊くんの2人しかいない。

『せや!この才囚学園には16人の超高校級がおるんや。もちろん超高校級のことは知っとるやろ?政府が実施してる特別な奨励制度ご存じ“ギフテッド制度”から派生した称号や。』

『ちなみにギフテッドっていうのは、天才とか英才を意味する言葉なのよ』

モノファニーが補足した。

『ヘルイェー!簡単に言や、ギフテッド制度ってのは国家的に天才を育成する為に設立された制度で将来有望と見込んだ高校生にさまざまな特権を与えてくれるっつーわけだぜ』

『授業料免除は当然として、選挙権も被選挙権も与えられるし奨励金だって貰えちゃうんだよねー?』

『で、そのギフテッド制度に選ばれた生徒が通称“超高校級”と呼ばれてるっちゅーわけや。』

『ヘルイェー!選ばれし超高校級の称号は、全国の学生の憧れの的だぜッー!』

『それで、キサマラにはどんな才能があるんだったかしら?言ってみて!』

私は、直感的に答えていた。

「超高校級の幸運。」

寧ろ口に出した後から、漠然と、それが私だと思った。

「全国の高校生の中から抽選で一人だけ選ばれるの。他の超高校級たちと違って私だけは、これといった特技があるわけじゃない普通の高校生なんだけどね」

『運も才能のうちってことやで!飛行機事故やロシアンルーレットで生き残れるかもしれへんからな』

モノスケが励ましてくれるけど、そもそもそんな危ないものに巻き込まれたくないなぁ。

『それで、キサマは?』

モノファニーが榊くんを見上げる。

へっ、オレ?」

榊くんは目を泳がせて、困ったような声を出した。

「実は、そもそも超高校級って言葉に心当たりがないっつーか高校生なのか?オレ自分でも何が何だかさっぱりで。」

『ああっ、どうしよう!失敗だわ!』

“失敗”という言葉が何を意味するのか定かでないけれど、モノクマーズはいっそう騒ぎ始めた。

『ま、まだだ!まだ間に合う!壊れるまでぶっ叩いて直すんだ!』

『アカン!もっとバカになったらどう始末つけるんや!』

『ねぇ、そもそもこれってシナリオ通りだっけ?』

………………。』

一瞬、モノクマーズの間に沈黙が走った。

『ヘルイェー!非常事態だぜ』

『ワイらの手には負えんで、お父ちゃんに報告せなアカン』

『そうね!キサマラ、アタイたちは用事ができたからもう行くわ。』

私は慌てた。
「待ってよ!ねぇ、貴方たちは榊くんのこと知ってるんじゃないの?」

モノキッドが自信満々に叫んだ。

『行きつけの理容室から靴下のサイズまで知ってるぜッ!!』

「それなら教えてあげてくれない?」
私は頼んだ。

『クマに頼ってばっかじゃ成長しないぜ!』

「だ、駄目なの?」そう食い下がる。

『駄目駄目。主人公なんだから、ここからは自分の力で頑張るんだよ!』

『今のうちに、この才囚学園について調べたり、他の超高校級をリサーチしたりしておくといいわ』

あとでアレする相手やからな。』

終始黙っていた緑のクマが、私たちを無機質無感動な目で見つめる。その視線にぞくりとしたときには──

『『『『『ばーいくま!!』』』』』

こうして、騒がしいヌイグルミはみんな居なくなってしまった。

突然しんと静まり返った教室を紛らわすかのように、榊くんが明るく浮いた声を出した。

「ありがとな、聞き出そうとしてくれて!頼もしかったぜ」

「こちらこそだよ。自分自身のことを思い出せないなんて、きっと凄く不安なのにさっき励ましてくれて、ありがとう。」

「不安?」

榊くんはきょとんとした。

「あんまりそういうの無いっつーか気にしてるわけじゃねーんだぜ?寧ろ、楽しみ!」

「楽しみ?」

「だってここに連れられてきたのは超高校級の生徒たちなんだろ?オレにも何か特別な才能が眠ってるってことだよなッ!へへ、ワクワクするぜ。早く思い出せるといいんだけどよ」

そんな考え方もあるんだ。彼の目が眩しくて私は何度か瞬きをした。

なんだか、私も楽しみになってきちゃった。思い出せたらきっと教えてね」

「もちろん。」彼は力強く頷く。

「あ、それは四葉もだぜ?“あの子”って奴、早く思い出してやれよ。大事な奴なんだろ」

「うん。きっと思い出して……帰らないと。」

そうだ、家に帰らなきゃ。榊くんにも私にも帰りを待っている家族や友達がいる。寂しいような勇気づけられるような、郷愁の気持ちが胸を襲った。

「行こうぜ、四葉。この扉ふつうに開くみてーだ」

彼は教室前方の扉をがらがらと開けた。注意深く左右を確認しおいでと手招きする。私は頷いて、彼に続いて扉を抜けた。