DRRV11037
2025-06-13 12:11:00
28595文字
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DRRV: Prolonged 前編




扉を開けて外に出た私たちを迎えたのは









青い空。

照りつける日差し。

心地良い風。

そして_______________









「何これ?お、檻?壁……?」

……恐ろしく巨大な隔たり。
つまり、私たちは出られなかった。

ガラスの半円球がこの学園に覆いかぶさっているのだ。世界から隔絶されたスノードーム……そうとしか形容できない。加えて、鉄格子を模した暗色の柵が数十メートルの高さまで右も左も、後ろにも立ちはだかり、すっぽりと全空間を取り囲んでいる。

「何だよ、これ!?あっちもこっちも囲まれてる!」

「どうなってるの?」

私たちは暫く呆然として、手の届かない空を見上げているほかなかった。










『『『『おはっクマーー!!!!』』』』

また、変なヌイグルミの群れが現れた。赤色のモノタロウが喋りかける。

『あの檻にビックリしてるみたいだね。まぁ、その気持ちはわかるよ。オイラも初めて見たときは歯と爪がボロボロになりましたもん』

『驚いただけで、そんな悲惨な症状にっ!?大変だわー!』

『けど、さすがのデカさだぜッ!“果ての壁”って名に相応しいデカさだよな!』

果ての壁?」

あんまり壮大な名前だから、つい尋ねずにはいられなかった。“果て”ってどういうこと?

『ふつーは、壁って2つの場所を仕切る為にあるやろ?けど、あの壁は違うんや。ただ単にこの世界の果てにあるってだけなんや』

「分かんないよ。何の話してるの?」

ん?何の話やったっけ?』

モノスケがおどける。他のヌイグルミもみんなふざける。

『えっ?誰が話してたの?オイラが話してたんだっけ?』

へへへははははははははは!!』

「おい。笑ってないでちゃんと説明しろよッ!!」

榊くんが怒気をはらんだ声を出した。モノファニーがぱちくりと瞬きする。

『説明も何もないわ。そういう事だから諦めてとしか言えないの』





そうしてすっと見上げた。

ここからは出られないのよ。あの壁に出入り口はないし、よじ登ったり壊そうとしても無理なのよ。』

私は突然怖くなって、何かせずにはいられなくて、モノクマーズも榊くんも置いて駆け出していた。学園玄関から敷かれた広い暖色の石畳の道路をローファーが蹴る音も、耳から遠のいていくみたいだ。

「だ、だれか、誰かっ、」

私は浅く息を吸い込むと、精一杯の声で叫んだ。



「誰かぁぁ!!助けてーーーっっっ!!!」



自分のものか疑ってもいいような声が飛んでいく。届いているだろうか?清々しいくらいの青空に、押しつぶされそうだ。何の反応も返ってこない。人の姿も全然見えない。



…………、っ、助けてーーーっ!!!この大きな壁の中にいます!!!」



景色を映しだすガラスの壁が、私の声を跳ね返して反響させる。それに負けないように、もっと声を、喉を痛めるくらいに張り上げた。壁の向こうに向かって叫び続ける。



「誰かぁぁぁ!!助けてください!!!」



おかしいよ、誘拐事件なんだよ?こんな大きな建造物があるんだよ?誰も気づかないなんてあるわけないんじゃない。硝子のドームは何も答えない。答えてくれない。

「だ、れか……はぁ、はぁ
私はうなだれた。どうしようもなく虚しくて怖くて、喉がズキズキと痛んでいた。

『もうやめてよ!』

『いくら叫んだところでどうせ誰にも聞こえねーんだ!』

いつの間にか追いかけてきていたモノクマーズが私を止めに入った。私はまだ全然叫ぶことができた、誰も答えてくれないなんて認められなかった。

榊くんが卒然に呼びかける。

「誰にも聞こえない?なんでテメーら、そう言い切れるんだよ」

すると彼らは一斉に黙りこくった。

「おい、壊れちまったのか?エラく自信満々に言うんだから、何か理由があるんだろ」

……流石は、モノダムだね。心を開いてないだけあってさっきから一言も喋らないよ。』

モノタロウが急に話題を変えた。

『その切っ掛けを作ったのはミーの壮絶ないじめなんだぜッ!』

『もー、仲良くしようよ』

『うっさい、ボケ!ワイらはギスギスしてこそのモノクマーズや!』

……この学校は一体何なんだよ。」

榊くんは俯いて足元の影に独りごちた。モノクマーズがその言葉を拾い上げてこう言う。

『それはキサマラ自身で調べるんだよ。自分の足で、手で、目で、調べてみなよ』

『ただ、足元には注意して探索してね。この学校ってまだ工事中なのよ』

工事中?」

こんなに巨大な建造物が用意されているのに?私は顔を上げ、改めて外の様子を見た。

……本当だ」

校舎の上の階にはシートと鉄骨が張られている。外観で初めて分かった。さっきまで私たちが居た校舎は建設途中のようだ。

廃校だった場所を改造してるのか?それとも一から建ててるのか

『どっちにしても、工事はすぐに終わらせるよ。エグイサルを自動操縦モードで働かせるんだ』

「エグイサル?」

聞きなれない単語だ。

『エグイサルは暴走族上がりの土木作業員で、歌とダンスの夢を捨てきれねー妻子持ちって設定だぜ!』

ロボットにそんな設定いる?』

『車のフロントにはゲーセンで取ったヌイグルミを並べてて、ハンドルはもちろんヒョウ柄なんだよねー?』

『苦手なタイプやな!ええ加減にせえ!キミらとはやってられんわ!』

『『『『バーイクマ!!!!!』』』』





何の脈絡もなくモノクマーズはいなくなった。

……全部、訳が分からなかった。私の知る確かなものや真実味のあるものは全てここに無かった。代わりにあるのは、この括弧付きの“外”と、動いて喋るぬいぐるみが残していった荒唐無稽な言葉だ。

ここからは出られないのよ。あの壁に出入り口はないし、よじ登ったり壊そうとしても無理なのよ。』

脳を落ち込ませていく言葉を追い払うように、私はかぶりを振った。──諦めるにはまだ早いよ、早すぎる。そうしてどうにか持ち直すと、思考を巡らせる。

今、助けを呼ぶことは試せた。向こう側から反応が届かないのは、私の声の大きさが不十分だからかもしれないし、逆に相手の反応がこちらへ到達しなかっただけかもしれない。一旦、他のことに手をつけるのはどうだろう?救助要請以外にもできることはたくさんある。たとえば……

「どこかに抜け穴がないか探してみよう。私たちはみんな壁の向こう側から内側へ連れてこられたんだ。だったら出入り口は絶対あるはずでしょう?」

そうだな。オレたち二人だけじゃねー、ここには同じ境遇の仲間が十六人いる。全員で協力すればぜってー何か見つかるはずだぜッ!」

榊くんがにかっと眩しい笑顔を見せた。ちょっとずつまた希望が生まれていく。そうだ、まだ諦めるには早すぎる。みんなで力を合わせればきっとどんなことだってできるよね。