はりぼて自家発電所
2024-12-27 03:47:10
108331文字
Public 因縁
 

天邪鬼のかくしごと 前編

魔法舎に北の魔法使い、オーエンの迎えが来た。記憶喪失、ショタ化など。







 死にたくない。

 溶けていく意識の中でただそれだけを願った。
 闇が恐ろしかった。途方もなく大きな黒い影に、容赦なく押しつぶされて跡形もなく消える夢を何度も見た。
 自分という存在が、確かにここにあるのに。
 母に抱かれた温かな温度を覚えているのに。

 恋しい。

 そう望んで、求めて、目覚めては、消えていく。
 目を閉じることも、目を覚ますことも恐ろしかった。それだけを繰り返し続けて、次第に自分が分からなくなっていった。

『こっちへおいで』

 どこからともなく、そんな声が聞こえる。どうしようも無く焦がれた言葉は、だけど何故か酷く不安を煽った。
 得体の知れない何かが、手を取れとうるさい。相手が誰でも良いわけじゃない。なのに手を伸ばしてしまいそうなのが怖い。まるで、自分の意思がないみたいで、怖くて、分からなくて。

 いっそ、なにも考えず手を伸ばすことが出来たなら、楽なのに。この先に地獄が待っていようとも、この時だけでも救いがあると、そう思えたら良かったのに。

 どうして躊躇ってしまうのか。
 分からないことが、怖くて。

『いや……

 そう言わずにはいられなかった。
 手を取ったら気が狂ってしまう気がした。
 自分のままでいたかった。
 これ以上、裏切らないで。

 懇願すると、黒い手が飽きたように静寂と暗闇に飲み込まれていった。
 遠ざかる手のひらを呆然と見つめた。
 悲しみだけが残った。

 ごめんなさい。
 置いていかないで。
 一人にしないで。

 言葉を募っても、もう遅い。
 視界も、意識も、真っ黒に塗りつぶされて、それから。