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はりぼて自家発電所
2024-12-27 03:47:10
108331文字
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因縁
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天邪鬼のかくしごと 前編
魔法舎に北の魔法使い、オーエンの迎えが来た。記憶喪失、ショタ化など。
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目を覚ましたオーエンに、賢者が魔法舎で大人しくしていて欲しい、と説得するとオーエンはあっさりと首肯した。
あの北の村の魔法使いたちはおそらく、オーエンの心臓の場所を知らない。知っていたとしてもオーエンを利用する気なら暫くは手を出さないはず。その説明に納得したというより、話を聞く前からどこか諦めたような雰囲気であった。
自分の心臓のことなのに、どこか他人事のようだ。
「ああ、そう」
素っ気ない返事に、寂しさと罪悪感のようなものを覚える。心臓を隠したのも、それを使って脅したのも自分たちではないはずなのに。
あれから、面倒くさそうにしながらも、オーエンは大人しく魔法舎に留まってくれている。それを、喜んでいいのかも分からない。もう千年もその胸の中が空っぽであることは、そこに大切な臓器があるべき、という感覚をも麻痺させているのかもしれない。
全然大丈夫なんかじゃないのに、大丈夫だと言い含められて、無理やり飲み込んでいるだけ。結局、なにひとつオーエンの心を救い上げることはできていないのだ。
「オーエン。良かった。ここにいたんですね」
魔法舎の中で遭遇するたびに、賢者はほっとして、声を掛ける。対するオーエンは、容赦なく賢者を睨みつけていたかと思うと、唇の端を持ち上げて笑った。
「いたら悪い?」
「い、いえ!! ちゃんといてくれるのが嬉しくて!!」
「ここにいれば、騎士様が守ってくれるって言うからさ」
賢者が安心をアピールするように笑ってみせると、オーエンは馬鹿にしたようにうっそりと笑みを返す。けれど、目が笑っていない。その圧力にぐっと言葉を詰まらせながらも、賢者はオーエンを見つめた。
「カインが守ってくれるなら安心です。でも、知らない人にはついて行かないでくださいね」
子供に言い聞かせるように言ってしまってから、馬鹿にするなと、怒られそうだなと思った。慌てて言い繕う方が不自然だと思って、できるだけ真剣な顔をする。
現に、真剣だった。
オーエンにとって、賢者も、賢者の魔法使いも、それ以外の人間や魔法使いも、同じ穴の狢だ。信用出来るのは自分だけ。だから賢者は、オーエンを心配していること、敵意がないことを必死に伝えようとする。彼の嫌がることは絶対にしたくない。
数秒見つめあって、賢者が目を逸らさないとわかると、オーエンはつまらなさそうに目を背けた。
「そんな奴がいたとして、僕が信用するわけないだろ」
「
……
そうですね」
少なくとも、ここに残ってくれるということは、見知らぬ存在よりかは信用して貰えているのだろうか。確認すれば、違うと言って出て行ってしまいそうだから黙っておくけれど。
「もしなにか、他に困ったことがあればいつでも相談してくださいね。私じゃなくても、誰か話せる人にでいいので」
「相談? 僕は北の魔法使いだよ。そんなことするわけない」
「わ、私たちが、心配なんです! もう、一人で何処かに行って欲しくなくて
……
」
オーエンは不思議そうに眉を上げた。賢者の言っている意味が心底分からないとでもいうように。
わかって欲しいのに、わかって貰えない。だけど、ほんの少しでも、オーエンを想っていることが伝わってくれたら。
「僕は自分の意思で何処へだって行くし、一人が好きだよ。そもそも、魔法使いは孤独な存在だ」
「わかっています。それでも、出かける時に一声掛けてくれるだけでいいんです
……
っ! お願いします、
……
一人で、抱え込まないで」
「馬鹿馬鹿しい」
オーエンはそう言い捨てて消えてしまった。
彼は、一人であることに、疑問すら感じていない。今まで一人で生きてきて、誰かを頼ることなんてなかったであろう、北の魔法使いを説得するのは、思っているよりずっと難しい。
だけど、だからこそ繋ぎとめておきたいと思うのだ。
人が暖かいことを知って欲しい。そんな冷たいところに一人でいるよりも、こちらの方が心地よいのだと、感じて欲しい。独りが好きだからって、放っておくことは、したくない。
だけど、それは賢者のエゴだから。例え敵わずとも、少しずつ、少しずつ、歩み寄るしかない。
賢者はそう決めると、オーエンを見かける度にしつこく声をかけ続けた。「わかったから、構うなよ」と鬱陶しそうにされると、本当に分かってくれたのか、そう言って自分を遠ざけようとしているのではないかと疑心暗鬼になって、ますます気になってしまう。二人の間に信頼関係などない。だからといって、聞いた言葉全てを信じて行動を止めるのは、ただの怠慢な気もする。案の定、拒絶を乗り越えていく賢者を、オーエンは避けた。ここまでくると、逆に面白くなってくる。
「賢者様は、僕のことを信用してくれないんだね」
悲しげな演技に、惑わされそうになる。けれどここで諦める訳には行かない。
「オーエンこそ、どうして避けるんですか? 信用して欲しいなら、逃げないでください。それとも、やましいことがあるんですか?」
「
……
」
オーエンの、左右で色の違う瞳がきゅう、と細まる。恐ろしいほど冷たい視線だった。殺されるんじゃないかとすら思う。だって賢者はなんの力も持たない、ただの人間で。オーエンは指先ひとつでこの息の根を止めることができる。気に入らなければ、あっさりとこの命を奪ってしまえる。赤子の手をひねるよりも簡単に。
「おまえを殺して、世界を滅ぼすのもいいかもね」
賢者に何かあれば、世界がどうなるかわからない。そんな机上の空論だけで辛うじて生きているけれど、己の心臓がどこにあるか分からないオーエンは、いつでも死ぬ覚悟ができてしまっているのだろう。だから、世界を滅ぼすかもしれない行為にも簡単に手を伸ばせる。
「
……
私を殺しても世界は滅びないかもしれないし、オーエンは無事に心臓を取り戻せますよ」
「あはは。その自信は一体どこからくるの」
「自信なんてないけど、そう信じたいじゃないですか。だって、あなたを、一人にしたくないから」
オーエンにはしがらみが無い。しがらみがないというのは恐ろしい。
そう言ったのは誰だったか。賢者は今まさに、それがどういうことなのかを思い知っている。
オーエンはまるで玩具で遊ぶように人を弄んで、自分の命を諦めて、世界を滅ぼしてみようなんて考える。もしそれが叶ったら、ひとりぼっちだ。滅びれば誰もいない。滅びなかったとしても、危険因子と世界中から疎まれて。
しがらみがないから、そんな未来を、誰もが忌避する結末を選べてしまえる。賢者など、この世界中でひとりぼっちになってしまうことを思うと、それだけで目の前が真っ暗になって、呼吸が出来なくなるというのに。
「
……
」
オーエンは、賢者を見つめている。途方に暮れたような、こちらの思惑を測るような雰囲気だった。
「
……
えーと。あの、それで、最近どうですか? 何かあったりしていませんか」
沈黙に耐えきれずに、賢者はしどろもどろに尋ねた。オーエンもどうすればいいのか迷っていたのだろう、賢者の態度を指摘することはなかった。
「
……
何かって?」
「その
……
。オーエンのことを知ってるって人が、会いに来たりとか」
「
……
来たけど、それがなに」
「そうですか
……
。って、えっ!?」
きっとまた拒絶されるだろうと思っていた。自分から言ってくれない気がしたから、その場しのぎで聞いたのだ。だから、あっさりと貰えた返答への対応など、考えていなかった。賢者はオーエンと話す時は、彼の言葉に惑わされ、自分の気持ちが揺らがないように、いつも事前に覚悟を決めているのに。
「何も無いなら、僕は行くよ」
「えっ、あ、いやその」
どんな覚悟や決意をしようとも、オーエンの気まぐれには敵わないことを思い知る。彼は本当に悩んですらいないのだろうか。確かに、悩んでいないのなら相談しようがない。長く生きているから、自分の感情を一人で昇華させる方法を知っているのだろう。
でも、やっぱりそれは、少し寂しくて。
「わ、私がオーエンに! 聞いているんですけど!!」
「なにを?」
「えと、会いに来られて、困ってないか、とか
……
」
「まあ、すごく迷惑だよね」
「じゃあ、私が力になれることはないですか?」
「あるわけないだろ。どうしてそんなこと聞くの」
「どうしてって
……
。仲間だから
……
」
オーエンは失笑した。そうされると、悲しくて、悔しくて、涙が出そうになる。オーエンにとって自分は役に立たない。それがこんなにも苦しい。
困っている人を目の前にして、何も出来ない自分。その無力感。はっきりそう言われることが、無力に拍車をかけてくる。無力どころか、彼らに守ってもらうだけの、穀潰しだ。賢者なんて呼ばれて、なんの力も持たないのに。
「押し付けられただけの、見せかけの仲間だろ。賢者様だって、負わなくてもいい役目を押し付けられて、本当はうんざりしているでしょう?」
「
……
っそんなこと、」
ない、とは、言えなかった。
大いなる厄災から世界を守る役目とはいえ、寄せられる言葉は賞賛や感謝ばかりではない。非難を浴びせられることが続けば、「どうして」と思い詰めてしまうことだってある。
「世界を呪う言葉なら聞いてあげるよ。きみの汚いところを引きずり出すようにね。ほら、どんな酷い言葉を吐かれたのか、僕に教えて。どうしたの、そんな苦しそうな顔をして。きみが僕にしようとしていたことだよ」
「違います
……
! 私は、あなたを傷つけるつもりは
……
」
「酷いなぁ、僕だってそうだ。賢者様自身のことを、ただ教えてあげたいだけ。僕は長生きの魔法使い。だから貴方がどうしてそう思うのか、どうしてそう感じるのか、なんでも知ってるよ。知りたいだろう? 自分のこと
……
」
可笑しい、と思った。傷つけられているし、オーエンもそのつもりなのだろう。にやにやと、取り乱す賢者を眺めて楽しそうにしている。
けど、どこか心が軽くなるのを感じているのだ。さっきまで覚えていた苦しさが、ふっと消えていくような。無力で、穀潰しで、なんの役にも立たなくても、世界を呪っていいのだと、言われた気がして。自分を守ってくれる魔法使いたちを苦しめる世界を、呪うことができるなら、それはそれで、良いような気がしてしまう。
そこまで考えが及んでしまって、ゾっとした。呪ってしまいたい。でも、それはダメだ。どうして? どうしても。賢者が言えば、魔法使いたちは味方になってくれるだろう。そして彼等は、世界を滅ぼせてしまう程の力を持っている。その事実に、ゾッとしたのだ。
「なら、おまえのことは俺が教えるよ。おまえの過去を見せてもらったから」
言葉に詰まる賢者に代わって割り込んできたのは、カインだった。爽やかに間に入ってきて、庇ってくれるこの人を、賢者の呪いに巻き込むわけにはいかない。
だから呪ってはいけないのだと理性をかき集める。
「
……
邪魔するなよ。僕は賢者様と話をしてるのに」
「ああ、分かってる。だけど、少しすれ違ってるみたいだからさ。お互い話を聞いてやりたいだけなんだろ? なら、きっと上手くいくはずだ」
「上手くいってた。おまえがくるまではね」
「そうなのか? 賢者様」
「い、いいえ
……
っ」
賢者は必死で頭を振った。カインが来てくれただけで、心が落ち着いてくるような気がする。
「はは
……
。そうやって、二人で僕を悪者にして。おまえたちは本当に酷い。すっごく傷ついた。ねえ、騎士様。僕の過去はどうだった? 悪意と恐怖に塗れて、最悪だった?」
違う。そんなつもりじゃなかった。そう言いたいのに、言葉がつまる。悪いのはオーエンではなく、彼のように上手く喋れない賢者だ。
「
……
」
「どうして黙ってるの? 記憶を失った可哀想な僕に教えてよ。僕がどこで生まれて、ここにいるのか。口に出すのもおぞましい?」
カインの沈黙が痛かった。きっと彼も、上手く言い返せないのだ。だって、オーエンの予想は、当たっていた。オーエンの記憶を遡ったカインから語られた、オーエンの過去。悪意と恐怖に塗れた、口に出すのもおぞましい、最悪の光景。北の魔法使いとしての誇りを持つオーエンは、幼い頃に小さな夢と希望を踏みにじられて絶望した。
そんな話をしたところで、本人はおろか、きっと誰も信じはしないだろう。なにより、聞かせたくない。いつか、オーエンは言ったのだ。哀れな子供の姿を見ていると、自分が自分じゃなくなるような気がする、と。それは、オーエンが弱い自分を殺したことがあるからなのだ。記憶を失うことで、元の人格を守っているのだと、フィガロが言っていた。だから、弱い自分の記憶を消して、殺したように、あの子供たちを殺そうとした。
自分の心を、守るために。
「
……
言っても、おまえは信じないだろう」
カインが重い口を開いた。
信じたとしても、裏切られた絶望が甦れば、また何が起こるか分からない。それほどオーエンの魔力は、大きすぎる。力ずくでどうにかできるものじゃない。
「
……
何を言っても信じると約束するなら、俺も見たままを話すと約束するが、どうする?」
カインは慎重に言葉を紡いでいく。嘘だと誤魔化されないために、約束を引き合いに出すのは有効だ。特に、天邪鬼だと自他ともに認めるオーエンには。
「
…………
いらない」
案の定、その言葉を聞いて、カインも賢者も安心した。教えてと言ってくるオーエンに教えたくないと言うのは意地悪だから、オーエンがそこまでして知りたくないと思ってくれて良かったと思った。その考えは、卑怯かもしれないけれど、いくらオーエンが平気だと言っても、過去を話せば傷を抉ることになっていただろう。オーエンは弱った演技や悲しい演技をするが、そんな演技が出来るのも、きっと本当に傷ついてきたからだ。
だから、良かった。彼に、平気だなんて嘘を、言わせないことができて。
賢者がそんなことを考えている間に、カインはなんでもないようにオーエンに笑いかけていた。
「そうか? それじゃあ、おまえに会いに来たってやつのことを教えてくれないか」
深く考えないからこそ、彼の口からそんな言葉が自然と出てくるのかもしれない。それは悪い意味ではない。自然体で、とても素敵で、暖かい。そんな彼の言葉は、オーエンにどう響いているのだろう。
賢者が必死になって聞き出そうとしていたことも、強引に持ってきたように感じるけれど、きっとそうではない。カインは人の心が分からないと言うけれど、だからこそ自分の心に正直で、だから、賢者は彼を信じられる。
「どうして」
「魔法舎に不審な気配が入り込んだことはわかっているんだ。これはおまえだけの問題じゃない。だから、話して欲しい。おまえに協力することで、俺達も不安を解消できる」
「ふうん。それで面倒な役回りをさせられているんだ、騎士様は。可哀想」
「いや。これは俺がそうしたいと思ってやってる。けど、心配してくれてありがとな」
てらいのないカインの言葉に、オーエンがぎょっと目を見開いた。
「は!? 心配なんてしてないんだけど」
「そうか? 俺はそう感じたんだが
……
」
「見下されたことにも気づかないなんて、馬鹿じゃないの」
「俺はそうは思わないよ」
カインとオーエンは暫く睨み合っていた。相互不理解。だけど分かろうとして、分かってもらおうとして、歩み寄っているようにも見える。
賢者はただ、オーエンがこの場から去らないことを願って、息を殺していた。
彼がここに留まるということは、少なからず心の内を見せてもいいと思っているということだと思うから。誰にも見せられない弱さを、誰かに、この場にいるカインと賢者になら、聞いて欲しいと、少しでも思ってくれている証拠。
オーエンをそんな気分にさせてくれたこの空気を、カインが作ってくれた機会を、絶対に壊したくない。
「
…………
おまえたちと同じだよ」
やがて、オーエンはぽつりと呟いた。
「
……
え
……
」
「僕の過去を知ってるって、知りたくないかって、鳥に手紙を運ばせてきたんだよ」
「手紙って?」
「これだよ」
話してくれる気になったオーエンに泣きそうになりながら尋ねる。オーエンはそんな賢者には気づいた様だが、眉を寄せただけでなにも言わなかった。その代わり、手を振って、魔法で封筒と石を一緒に取り出した。
「なんだ? この石」
カインがそれを受け取って、しげしげと眺める。何の変哲もない、ただの石に見えた。
「僕の石だって。その手紙に書いてある」
「どういうことだ?
……
というかこれ、読めないんだが
……
、どこの言葉だ?」
「ああ、赤ちゃんだから分からないんだ。それは、昔の文字だよ」
「昔の文字」
「その石は、僕を見てきた石だと書いてある。僕がいたところに転がっていた石。だから、その記憶を読めば、僕は僕のことを知れるんだって」
「
……
それで、見たんですか?」
「そんなことするのは馬鹿だけだよ。その石には呪がかかってる。言われた通りに石の記憶なんか覗いたら、どうなるか分からない」
それを聞いて、ほっと息を吐いた。折角話さずに済んだと思っていたのに、既にオーエンが記憶を取り戻していたらと思うと、笑えなかった。
オーエンの判断は、正しかった。危険だと思うから、手を伸ばすことを、躊躇うのだ。約束してまで知りたいと思えないのもそういうことなのだろう。ただ、オーエンから知りたいという願望が消えた訳では無い。彼は忘れた理由すら、忘れてしまった。
心というものは、矛盾している。
覚えていたくないから忘れたのに、忘れたことを思い出したくなる。心を守りたいのだと言うのなら、思い出したいという欲求はあるべきじゃないのに。
なのに、それは嘘つきな彼の言葉の中で、あまりにも純粋で、素直な、嘘偽りのない本心。
「他には、なんて書いてあるんですか?」
「
……
この手紙の主のことが書いてある」
オーエンは、そこに記されていることが事実なのかどうか、図りかねているように口を曲げていた。だけど、賢者とカインには内容を読むことが出来ない。だから、オーエンは手紙の内容であろう文書を読み上げようとして、固まった。
「オーエン?」
「
……
っ吐き気がする
……
」
本当に気分が悪そうにしながら、オーエンは持っていた手紙をカインに押し付けて、ふらふらと壁に寄りかかって座り込んでしまった。何が書いてあるのか分からないが、これをオーエン自身に読み上げさせるのは酷なのかもしれない。
「オーエン、シュガーを
……
」
「いらない」
「なら、この話は双子先生かフィガロに持っていく。構わないな?」
カインが膝を着いて背中を支えてやりながら、鋭く言葉を吐き出すと、オーエンは浅い息を吐き出して、ゆっくりと瞼を閉じた。やがて、諦めたように頷く。
「好きにすれば
……
」
途方に暮れて、頼る他どうしようもないのだというのが伝わってくる。そこまで追い詰められているのだ。
だけど、その選択肢が彼の中にちゃんと存在していたという事実が、嬉しかった。
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