はりぼて自家発電所
2024-12-27 03:47:10
108331文字
Public 因縁
 

天邪鬼のかくしごと 前編

魔法舎に北の魔法使い、オーエンの迎えが来た。記憶喪失、ショタ化など。








 食堂では、オーエンの処遇についての話し合いが行われていた。本来、魔法使いは干渉を嫌う。賢者の魔法使いとて、前回の厄災のことが無ければ、魔法舎に居座ることもなかった。犬猫や普通の子供のように接していいものかどうか。北の魔法使いならば尚更だ。

「とはいえ、放っておく訳にはいかないだろう。子供たちの教育にも悪いし」

 魔力も弱くなり、記憶もないオーエンが北の国に帰るのは無理だし、生きていけるとも思えない。賢者の魔法使いとして魔法舎にいてもらいたい。さらにいつ記憶と魔力が戻るか分からない以上、次の厄災に備えて今の状態でも魔法を扱えるようになって貰わなければ困る。

……教育に悪いから、保護するのか?」
「もともとオーエンは厄介な魔法使いだしね。本人も無条件に保護されるのを嫌うだろう」
「あの状況で迷わず飛び降りたところを見るに、気質は北の魔法使いそのもののようじゃしの」

 カインの問いに、フィガロが穏やかに、スノウが呆れたように言った。そんな話をしていると、意気消沈したクロエが食堂に来た。オーエンに食事を拒否されたらしい。

「どうせ賢者の魔法使いの役目からは逃れられぬ。要はどうやって従わせるかじゃ」
「従わせるって」
「甘いもの作戦は失敗のようじゃしの」
「あ……ごめんね、ネロ。せっかく作ってくれたのに、俺、上手く誘えなくて」
「気にすんなよ」

 カインとネロに励まされるクロエを横目に、双子が悩ましげに表情を曇らせる。
 問題は、オーエンの中身がどの程度なのかであった。魔法使いは見た目じゃない。彼の精神年齢が子供のままなら、やりようはいくらでもある。だがクロエの話を聞くと、その精神はかなり老熟しているようにも思えた。

「老熟していると、なにかまずいんですか?」
「考え方が変わりにくくなる。素直に間違いを認められなかったりね」
「頑固ってこと……?」
「そうとも言うね」
「肉体と共に、精神も幼くなっておれば、まだ扱い易いんじゃが……
「北の場法使いは元々ピュアじゃから分かりにくいが、子供にしては達観しておるようじゃしのう」
「でも、彼は今、魔法は使えないんですよね……?」

 賢者の疑問に、双子ははたと顔を見合わせた。そう言えば飛び降りてそのまま死んでしまったことを考えると、魔力のコントロールはまだ未熟。魔法を扱えないということは、心も成長しきっていないということであった。
 ファウストが言っていた。まだ幼いオーエンになら、色々教えてやれるかもしれないと。まだやり直せるということだと。彼の記憶が戻ったとき、またどうなるか分からないけれど、これからの出来事が心の片隅にでも残っていてくれれば、あるいは。

「やさしいね、賢者様。このままの方がいいんじゃないかって言うのが正直なところだけど」
「フィガロ……

 確かに、悪意を振りまく彼は厄介なことこの上ないだろう。だけど、否定しかされなかった彼が漸く辿り着いた自我を、また否定するのか。また、奪うのか。そんなこと、許されて良い訳がないだろう。行き場のない感情を、フィガロにぶつけそうになったところで、双子が声をあげた。

……おや」
「む……。オーエンが魔法舎から出て行ってしまったようじゃ」
「え……っ!?」

 あっさりと言われて、一同は目を丸くする。

「どこにも行く所がないと思うて油断した」
「探しに行くぞ」

 考える暇もなく、双子とフィガロ、賢者とクロエ、そしてカインは、慌てて魔法舎を飛び出した。