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河童の皿箱
2025-04-02 09:56:44
34188文字
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遊戯王:長め
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幸せを探しに
ワゴンとフゥリが密会する話
捏造設定多数
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家族の言いつけ通り、日の昇るよりも少しだけ早く起き、家族の目の前で体重を量る。記録し、それに合わせて母親が朝餉を作る間、寝間着を脱いで裸になり、父親が準備した禊に身を投じる。
氷が張っていないのが不思議なほどに冷たいその水を、父が桶に注ぎ込んで、朝日と共にこの身へ浴びせる。浴びる。幾度も、幾度も。それが禊。幼き頃から続けてきた、大切な儀式。舞を捧げ、オオヒメ様に選ばれて、その身に降ろすのですから、純潔でありなさい、と。
なにも、自ら穢れるつもりはないし、そういう人に近づくつもりもない。かの雅楽師がそういう人でもないということも知っている。けれど、かの雅楽師に会う約束というのは、少女の家族には全く共有していない秘密の約束であった。故に少女は口を噤み、がくがくと背骨が震えようが、唇が碌に動かなかろうが、常にその口で弧を描いた。
濡れた体を拭き、私服を纏い、食卓に座る。今日は、魚1匹と漬物3切れ、そして色どりで添えられている菜っ葉。父と母にはこんもり盛られた米とみそ汁もある。母は言う。「フゥリ。あなた、どこかで買い食いしているわね? 体重が増えすぎているわよ」、と。父は言う。「それはダメだな。フゥリ、数字は噓を吐かないぞ?」、と。「はい。父様、母様。申し訳ございません」。唱え、頭を下げる。「そう、良い子ね」。微笑む顔に胸中、胸を撫で下ろして、視線を外し、「いただきます」と手を合わせ、川辺の命をいただく。
早々に片づけて、「舞の練習に行って参ります」、と。父と母が未だ朝食を食べている中、そう言って荷物を手に持ち、家を飛び出した。舞の練習に行くのは、決して嘘じゃない。でも、良い言い訳に使っているのもまた、事実だった。
ざわめく木々と、広がる田畑のあぜ道を歩く。今日は晴天。お天道様の舞台は青く澄み渡っていて、まだ月が居残りをしている。
…
別に、禊だって嫌いじゃない。夏の禊は気持ちがいい。でも、冬の禊は冷たすぎて嫌だ。父と母のことも、嫌いじゃない。作ってくれるご飯はおいしいし、いつも気にかけてくれるし
……
でも。
開け放たれた窓から、楽しそうな食卓が見える。みんなで同じご飯を食べている。みんなは、こんな寒い日に禊なんてしない。それに気づいたのは、いつだっただろう。
動いても動いてもあたたまらない身体が、ぐぅと空腹を訴える。腕や足の筋か、骨か。肉の奥深くが痛くてたまらない。少女はため息をついた。いや。こうして厳しい生活をしているからこそ、わたしはみんなよりも舞が上手いのだ。我慢を一杯しているから、わたしは御剣のあの子や、御鏡のあの子よりも、舞が上手。そうに違いない。そうして、誰かの家族の笑顔を振り切った。
長い長い階段を登った先にある稽古場。まだ誰も来ていないようだった。少女はひとり、衣裳部屋に滑り込んで、また誰もいないことを確認して、個室のカーテンを閉めては、舞衣装に着替える。そして、もう一度だけ確認して、自分のための籠を開けた。
風呂敷をそっと開けて、ケープコートに腕を通した。相変わらず、衣装の振袖がだらーんと飛び出ている。昨日の彼の苦笑いを思い出して、つい苦笑いがこぼれた。カーテンで区切られた小さな部屋のその中で、小さく蹲っては、軋む体が温まるのを待つ。
今日の稽古の後は、長鳴鶏の像の前に行く。彼が待っている。待っていてくれる。
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