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河童の皿箱
2025-04-02 09:56:44
34188文字
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遊戯王:長め
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幸せを探しに
ワゴンとフゥリが密会する話
捏造設定多数
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暁闇に、歩みを進めるかげふたつ。肩を並べる男たちは、未だ人々が寝静まる里のあぜ道を、冷え込む空気の中、ふらふらと歩いていた。とはいえ、行く当てがないわけではない。雅楽師がふわあ、と大あくびをひとつ零せば、隣の浮世絵師もまた、ふわあ、と大あくびをひとつ。「わりぃな。本当は祭りが終わったら帰るつもりで支度してたが、なんだかんだあってバタついちまって」。
絵師がふと、小さな水路に設けられた、真新しい水門の近くにしゃがみ込み、カチャカチャとなにかをはずす。掌の上に乗った丸いそれは、水位観察用の小型カメラであった。それを雅楽師が持つケースの中にポンと入れれば、空きはまだまだある。「
…
なんだかんだ、というには、あまりに多くのことがありすぎたのう」。絵師がタブレットでカメラの位置を改めて確認する間、雅楽師はしみじみと呟いた。
そして、また歩き出す。いくつもの水路が合流するたびに、水路の幅は大きくなり、そして分岐点には、やはり真新しい水門が。今度は少し離れた場所にしゃがみ込んでカメラを回収し、ケースの中へと放り込む。「洪水、起きなくてよかったな」。絵師が笑えば、雅楽師もあぁ、と頷く。けれど、その表情はどこか曇ったまま。
「フゥリ、だったか。あの子が人を殺すことなく済んで良かったな」。絵師は意地悪く、言い方を変える。すると今度は、雅楽師が唇をツンと尖らせた。だが、反論もなく、「
…
まあ」、と。「実は、俺もお前に謝らなきゃいけねぇことがあってよ」。肩を並べて歩くふたりは、そんな一言で向き合う。
「お前は、大方セアミンにフゥリの事を頼まれたんだろう。んで、俺も
…
スパイダーに頼まれてたんだ」。がしがしと頭を掻く絵師に、雅楽師はぽかんと口を開いた。「スパイダーに?
…
あの子と何か、接点あったか?」。そう問いかければ、絵師は苦笑いをこぼして、雅楽師の手の中にあるカメラケースに指をさした。「
…
まさか、映っておったのか」、と。
「今回、スパイダーが依頼されていたのは、御鏡の水門作り
…
つっても、川は自然のものだ。ちょいとばかし、御珠の領域に入るところがあってよ。そんでたまたま、尋常ではない様子でフゥリが歩いているのがカメラに映っていた。こんな時間に髪をずぶ濡れにさせて、がっくり肩を落として、体を引きずるように歩いていた」。雅楽師は絵師の言葉に、真剣に耳を傾ける。「御剣や御鏡の茶屋まで、お前があの子を連れて行ってるのも映った。俺もお前が夕方になれば黙ってどっか行って、何してんのか気になったし
…
スパイダーからカメラに映ったこの子が気になるっつう相談も受けてた。だから
……
あー、俺もこういう時間にジョギングだっつって、お前にも、あの子にも、監視まがいのことしてたんだ。
…
お前は先に謝ってくれただろ? だから俺も、謝りたかったんだ。
…
遅くなっちまって、わりぃ」。
……
なるほど。雅楽師は腕を組み、深く頷き、そして笑った。「なぁんだ。お前の妙な察しの良さにゃあ、からくりがあったんか。掌で転がされてると思ったのも、あながち間違いじゃあなかったんじゃな」。「時間がなかったとはいえ、俺もお前に相談しなかった。
…
ちゃんと相談してりゃあ、もっと連携を取る時間だって確保できたはずだ。スマートな解決手段も他にあったかもな。
……
これに関しては、俺の判断ミスだ」、と。けれど、雅楽師は首を横に振った。「いんや。わしも相談しなかった。どっちがじゃない。どっちもじゃ。どっちも」。
それから、ふたりはカメラの回収を進めながら、互いに知りえることを伝え合った。雅楽師は、能楽師から伝えられた御珠の企みや、件の少女は日々、空腹のままに舞の練習に励んでいたことを。浮世絵師は、人形師から伝えられたカメラの映像や、件の少女が濡れていた原因を。
…
とどのつまり、親からの虐待である、と結論付けたふたりは、はぁとため息をついた。「どう考えても」、「そーだよなぁ」。わかってはいたが、なあ。
そしてやはり、最後の壁にぶち当たる。本人か、あるいは親が、関係を断つと決意をしなくては二進も三進もいかない。部外者が身勝手に、子と親を引きはがすことはできない。かといって、本人と親を引き合わせるなんて酷なことを、するべきか、否か。ふたりは、口々に方法を探りながら、カメラの回収を進めていく。すっかり夜が明けて、空腹を腹の虫が知らせる頃、ようやく里中に仕掛けられていたカメラを回収し終えた。
「っし、一旦帰るか。セアミンもスパイダーも腹空かせて待ってる。昼には撤収しねぇとだし
……
最後の詰めをしなくちゃな」。
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