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河童の皿箱
2025-04-02 09:56:44
34188文字
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遊戯王:長め
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幸せを探しに
ワゴンとフゥリが密会する話
捏造設定多数
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呆気に取られてされるがままに、少女を抱き留め、外へと追い出された雅楽師の男。いったい何が起きたのやら。全く、あいつはいつもこうだ、と心の中で愚痴をこぼすのもつかの間。腕の中でポカンとしたままの、あの日存在ごと消えたと思っていた少女の姿。目元はあの日の幼い能楽師の様に真っ赤に腫れあがり、けれど混乱のさなかに戸惑い、ふと、じっと見上げた丸い目は、抱きしめる男の瞳も見えぬ細い目とかち合った。
「
……
」
「
……
」
さて、何を口にするべきだろう。互いが互いに思慮を巡らすも、積もる話もかける言葉もあまりに多く、果たして何から話すのが正しいのだろう。再会への喜びか、悪逆への非難か、無力への嘆きか、無事への安堵か、未来への問いかけか。思い浮かぶそれらの言葉を話すには、残念ながらタイミングを逃している。容疑者の身柄を『ちょっと持ってて』といわんばかりにこの身に託され、あっち行ってろと追い出され、挙句の果てに、見つめあって。如何せん間抜けが過ぎる。男も少女も逡巡する長い間にも、太陽がさんさんと輝き、晴渡る空から降りてきた清々しく、あたたかな春風が、集会所に飾り付けられた鮮やかな布を揺らし、ぶら下がる彫刻の施された石飾りがかちかちと音を鳴らした。
「ふふっ」。沈黙を初めに破ったのは、少女の小さな笑い声であった。「あの人、強引ですね」、と。そんな言葉に、男もまた、はははと頬をかく。「あいつはいつもそうなんだ」、と。そして、ふと。「
…
そうか。あいつに会ったのは、これが初めてだったか」。「はい。いつもは
…
修練場かお店かを行き来していたでしょう? お話は聞いていましたが、ふふ。本当に、強引な人」。「そうだろう?
…
その強引さも
……
まあ、悪くはない、ないんじゃが」。
自然と、ぽろぽろ零れ落ちたその言葉に、照れ臭いような、むず痒いような。良いようにしてやられたような気もするが、けれどそれが良い結果に結びつくのもよく知っている。なんというか、なぁ。「しゃらくせぇのう、
…
ったく」。
そんな言葉を聞いた少女は、目を丸くして男を見上げた。まるでギョッとしたかのような目に気づいた男は、今しがた自分が吐いた言葉を思い返し、そしてハッと。「い、いや、違うんじゃ
…
あ
……
と、とにかく違うんだ、フゥリ、その。わし、いや、私は
……
」。突如として慌てふためく男の姿に、少女の目は皿のように丸くなった。
「
……
ワゴン、さん?」。疑うような目が、男を貫く。目をそらして、あー、とか、うー、とか。口ごもることまたしばらく、男はとうとう手を挙げた。
「その、フゥリ
…
すまない、私は、いや
……
わしは
……
その。なんちゅうか
……
う、嘘を
…
ついとった。
…
あー
…
君たちが習っているのが神楽じゃろう。外の街じゃあ、神楽も雅楽もやる奴は居らん。だから、同士がいるって、それだけで嬉しくてな
…
そのぉ
……
うぅ
……
かっこ、つけたくてのう
……
」。明らかにしょぼくれた男の顔を、腕の中から見上げる少女。どれだけ気まずく沈黙していようがなんだろうが、ぽかぽか陽気は降り注ぐ。そう、陽気がすぐそこに。
「あっ、居ました! 探したんですよ!」。ふたりの背に投げかけられた、穏やかな女性の声。恥ずかしがる男も、驚いたままの少女も、ばっと振り返れば、そこには太陽が在った。陽の光を浴びて美しく煌めく翼飾り、舞衣装から覗く素肌は滑らかで眩しく、何よりその表情は、喜びに満ち溢れており、ぱたぱたと小走りで駆け寄ってくる姿に、とっさに動こうとしたふたりの体はもつれにもつれ、ばたんと大地に倒れ込んだ。
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