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河童の皿箱
2025-04-02 09:56:44
34188文字
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遊戯王:長め
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幸せを探しに
ワゴンとフゥリが密会する話
捏造設定多数
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「
…
高天の原皆暗く、天の下ことごとに暗し
…
」
長らの娘ら。赤と青の装束を纏いて、すいと構える。己たちが修練を重ねてきた神聖な場に、禍々しき岩がでんと横たわっていた。
人形師がその身ほどの機械人形をぐいと動かしては、巨大な音響装置へと変身させた。低く、低く唸るような電子音と共に、湧き上がるかのような光の帯が空へ、空へと向かうように、人形の身を這い上がり、徐々にボルテージが上がる旋律が鼓動を鷲掴む。
「
…
神集ひに集ひてあれば、汝命深く遠く思ひ謀りて、しかじかせよと仰せ給はば、各々その業にいそしみ仕へまつらん
…
」
その足元に、数々の楽器を率いた雅楽師が立つ。ざあと降りしきる雨の中、はたと光り輝く書をしゅるり紐解けば、遥か過去から受け継がれ続けた唄は中空を舞い
…
水辺の蛍のような煌めきに、里中から集められた観衆たちが感嘆の声を上げた。
「
…
日の御形の鏡を作らしめ
…
太刀、斧、またさなぎを作らしめ
…
八尺の曲玉の五百箇の御統の玉を作らしめ
…
」
神々に扮した少女らを、まるで式神のような小さな筆たちが宙を舞い、ぐるり取り囲む。筆の群れは神々のもとへ美しき剣を、鏡を、そして珠を描き出し、献上する。神々は恭しくそれを受け取り、掲げ、そして己たちの懐からも、剣と帯を取り出しては、また楽師の声に声を重ねた。
「
…
急ぎ候ほどに天の岩戸の御前に参る来て候へば、この處に燎火を焚き上げ、常夜の長鳴鳥を集へて時を作らしめ
…
」
謡い奏でるは、岩屋の奥へと御隠れになった太陽の神への贈り物。雅楽師はその煌々とした翼を広げ、のびやかに、高らかに、祝詞を謡い
――
そして、弾ける。
「
…
神遊び、仕へまつらん」
ドォン、と響き渡る爆音と共に、楽師の演奏はドッと激しさを増し、ザアザア雨音をかき消すほど。その叫びにも似た旋律と共に、神々は華やかに舞い踊る。筆たちはその手先へと追従し、暗闇に光の軌跡を描き続けては、神々の舞を先導する。
くらり、くらりと頭を、身を震わすほどの快音に、観客たちは圧倒され、そして呑み込まれ。次第に歓声を上げては、楽師の声に重ねて共に謡う。わあ、わあ、と。いつもの静謐な神楽は、粛々と、淡々と進められる儀式は何処やら。どんちゃん騒ぎのちゃんちき音頭を、楽師は謡う。楽師は奏でる。人々は神々の舞姿と共に熱狂し、天井知らずのボルテージをさらに、さらに押し上げていく。
剣が炎を呼び起こし、岩戸の前に猛々しい炎を灯す。轟々と燃え盛るその周囲を取り囲むように、雨水の帯がギュッと結ばれれば、幾つもの水鏡がその輝きを写し取る。すると、今までうんともすんとも言わなかった岩戸がすぅっと、ひとりでに、ほんのわずかに開いては、遠い遠い空にほんのりと陽が登り始める。
喉が焼き切れるほどの歌声を、たった1人の楽師は琴の音によって導く。密かに筆を操っていた絵師が大岩に手をかければ、その身よりも遥かに巨大な大岩がずりずりと動いては、その奥に隠れていた太陽が顔を覗かせた。そのあまりの眩さに、人々は歌声を忘れ、感嘆の声をあげたが、けれど楽師は歌い奏で続ける。太陽は、一際大きな水鏡に映った自らの姿を見ようと、白無垢姿のまま、ぱっちりと開いた目で、誘われるかのように岩屋の外へと身を乗り出した。
さあ、ともなれば面白くないのは岩屋の方であった。広く、遍く降り注がせた妖気の腕が、太陽を追う。けれど、清き炎がそれを拒む。鏡の元へと太陽がたどり着いた時、陽の輝きを受けた剣は、大岩を一太刀で真っ二つに両断した。
姿を見せたのは、肉体を捨て、渦巻く風と化した妖狐であった。けれど妖狐が術のために口を開こうとしたその瞬間。狐の面をかけた能楽師が、妖狐の直前へとトッと降り立つ。これ好機と見た妖狐は、狐に化けた能楽師の身にすうと入り込み、そして構えては、楽師へと向き合った。楽師は、なおも口ずさむ。
「
…
汝もとより殺生石。問う石霊。いずれの所より来たり。今生かくのごとくなる。急急に去れ去れ。自今以後、汝を成仏せしめ。仏体真如の善心となさん。摂取せよ」
石に精あり。水に音あり。風は、大虚にわたる。
里の者らの知らぬ詩を、僧に扮した雅楽師は、狐に扮した能楽師は、共に歌う。罠にかかった妖狐の声すらかき消して、古き教えと法を説く。
やがて五体を、苦しめて。やがて五体を苦しめて。幣帛をおっ取り飛ぶ空の。雪居にかけり海山を、越えてこの野に隠れ住む。
妖狐はただ、紡がれる言葉に身を委ねるほかなくなっていた。剣の炎、水の鏡、太陽を宿せし珠。相対するは、己がものにし損ねた力。人こそ騙せる狐であれど、神の力までは騙すことなど。ましてや、人の子の身では。
なお執心は。この野に残って。殺生石となって。人をとること多年なれども、今会いがたきみ法を受けて。この後悪事をいたす事。あるべからずとおん僧に。約束かたき石となって。約束かたき、石となって。
狐の力から妖しきが抜け、ただの茫然なる石へと姿を変えていく。太陽の微笑みと共に、結びの言葉と共に。とうとう落つることのなかった陽の鳥の美しき翼を、妖狐はただ、呆然と眺めていた。暗き空には煌々と照らす陽が登り、穢れを雨は清め流し、風は狐の怨を攫って行った。
鬼神の姿は、失せにけり。
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