ちよど
2024-11-16 13:46:37
37826文字
Public わし様など
 

練習1P 300個記念企画短編化まとめ

#練習1P、のタグで書いていたもの。
このたび、読んでくださったみなさまのおかげで300個書けたので記念企画としていくつか短編化しました。
リクエストしてくださった方々ありがとうございました。

ご注意。わし様中心SS。節操なくCP混在しています。


 No.13 生前カルヨダ+ビマさん 「これで母子が共に生きられるな」

■原文■

 まだ俺達が共に在れた青年の頃。
 理由は忘れたが俺とドゥリーヨダナ、カルナの3人で街を歩いた事がある。物珍しそうに辺りを見回すドゥリーヨダナと言葉少なに説明するカルナに、何故かつまらなさを感じていた俺の前に女が駆け込んできた。
「ドゥリーヨダナさま!」
 俺に叫んだ女は赤子を抱いていた。意味が分からず硬直した俺の横からニヤニヤとドゥリーヨダナが顔を出す。
「わし様がドゥリーヨダナだが。──さては暗くて分からなかったのか?ひどい女もいたものだなぁ、カルナ」
 暗い?今は日中で街は喧騒に溢れている。こちらを見る好奇の目を浴びてカルナが奴に何事かを囁いて女を見た。
「あ、、はい、そうです、その、それで」
 青ざめたり顔を赤らめたりと忙しい女が言い淀むのに、ドゥリーヨダナは豪快に笑った。
「分かっておる。みなまで言うな。──だが、わし様も外聞というものがある。カルナ!砂金を1袋分渡してやれ。これでおまえとその赤子とわし様は無関係だ。よいな?」
 無関係も何も端から宮殿育ちのドゥリーヨダナと市井の女に関係があるわけがない。だというのに頭を下げた女に砂金を渡したカルナにドゥリーヨダナは笑いかけた。
 奴の言葉に珍しくカルナが微笑む。
 ああ、なるほど。カルナの母親もこれくらい強かだったらよかったのに。


■短編■

 雨季が明けたばかりの賑やかな街を俺とドゥリーヨダナ、そしてカルナは歩いていた。
 森に住んでいた頃に買い出しに出る母親の後についてきていた程度の俺よりも、宮廷育ちのドゥリーヨダナは何も知らず。庶民のカルナにあれこれと聞いては笑っている。
 街の警備の視察から抜け出そうとしたふたりを見つけた俺は、さんざん問答した末に監視についてくることにしたのだ。
 先を行くふたりはなんの目的があるのかふらふらと彷徨っているが、俺達の着る服は明らかに庶民のものとは違う。ざわざわと遠巻きに人混みが割れているのをドゥリーヨダナは気づいているのかいないのか。ため息をついていると、
「ドゥリーヨダナさまっ!!」
 俺の前に飛び込んできた女は赤子を抱いていた。
 そのまま赤子を差し出して額づく女の意味が分からず硬直した俺にふたりが振り返る。この奇妙な状況を見て、悪辣な王子はにやにやとした笑みを浮かべた。
 女の背後から声を掛ける。
「わし様がドゥリーヨダナだが?」
 弾かれたように女が振り向いた。慌てて俺とドゥリーヨダナを見比べる。その様子にどちらの顔も知らず、ただ後ろを歩く俺のほうが身分が高いと判断したのだろうと分かった。
 差し出されたままの赤子にカルナが歩み寄る。
「父親は?」
「あっ、その」
 女の視線が俺とドゥリーヨダナを行ったり来たりする。
 誓って言うが俺に心当たりはない。女に見覚えはなく、それは基本宮廷から出ないドゥリーヨダナも同じだろう。
 だが、カルナの顔を見たドゥリーヨダナはにたりと笑みを浮かべた。
「──さては暗くてわし様の顔が分からなかったのか? ひどい女もいたものだなぁ、カルナ」
 トンチキな事を言いだしたドゥリーヨダナにカルナが重々しく頷く。その横で女の顔は青ざめたり赤らんだりと目まぐるしい。
「あ、、はい、そうです、その、それで」
 言い淀む女にドゥリーヨダナは豪快に笑った。
「分かっておる。分かっておる。みなまで言うな。──だが、わし様も外聞というものがある。カルナ! 砂金を1袋分渡してやれ。これでおまえとその赤子とわし様は無関係だ。よいな?」
 関係がないと金を渡してまで念押しすることは関係があると言っているようなものだ。
 これではまるでこの赤子がドゥリーヨダナの隠し子のように聞こえてしまう。
 ──そして、俺は気付いた。俺達を正確には赤子を抱く女に向けられた眼差しを。
 女が父親が誰か言えなかったこの赤子は未婚の子供なのだろう。未婚の子を産んだ女は貞淑ではない。赤子もろとも処分するのが法に適っている。
 安堵に顔を染めた女に砂金を渡しているカルナは、おそらくその未婚の子だから捨てられたと囁かれていた。
 だが、それは『婚姻できない事情がある身分が高い男』の落胤であるという保証があれば、父親をおもんばかって見逃されることもある。
 女はそれに賭けて、評判のよくない『ドゥリーヨダナ』の前に飛び出したのだろう。そして、ドゥリーヨダナは金を渡すことで暗に『自分の子供である』と認めたのだ。
 王子の子供を殺せるはずもない。母親も生かされるだろう。
 女の横で珍しく微笑んでいるカルナを見る。

 ──ヤツの母親もこの女くらい強かだったらよかったのに。

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読んでくださってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

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