ちこと
2024-10-29 20:36:55
56961文字
Public poke小説・SS
 

【2012年発行個人誌】drip,drop,daydream

2012年に発行した個人誌の再掲です。サトシとラティアスで人魚姫パロのようなお話。
完成版のデータが見当たらなかったのですが、ほぼ同じ内容のはずです。
もう何年も前の作品で、つたないところも多くはずかしいのですが、せっかくなので……。





 ポケモンセンターの自動ドアが音をたてる。それとともに、慌てて立ち上がる女の子が見えた。
「デント!」
 いてもたってもいられなくて、ずっとロビーで待っていた。そんな様子が手に取るようにわかる。デントは、いまにも泣きだしそうなアイリスの元へと足早に向かった。
「みつかった!?」
 息を切らせて瞳を潤ませる仲間に、ほんとうは良い報告をしてあげたかった。もとより、自分の心の安寧のためにも。
 けれど、現実というのはときとして残酷で。デントは苦い顔をしながら、首を横に振った。
「残念ながら」
……、そっか……
「きぃば……
 アイリスの胸に抱かれたままで、キバゴも主人と同じく顔を曇らせてうなだれた。
「サトシのポケモンたちは?」
「いまはジョーイさんのところ。ちょっとでも落ち着かせてあげたくて、寝かしつけてもらってるの」
 そう言いながらも、アイリス自身、そのちいさな肩がふるえている。キバゴを支える腕に、ぎゅっとちからが入る。
 むりもなかった。デントは、ぐっと拳をにぎりしめる。十回目の捜索をもってしても、サトシとピカチュウを見つけることはできなかった。
 ジュンサーさんに船を出してもらい、デントは捜索に同行する。アイリスの役目は男の子たちの留守を守ることだ。サトシたちを探しに行きたがるポケモンたちをそっとなだめて、毎日、ただただ吉報を待った。
 周囲の海はひたすら探した。だけど、サトシたちがたどり着けそうな島はどこにもない。最悪の事態を仮定して、海の中の捜索だって進められた。だけど、ジュンサーさん自慢のみずポケモンたちのちからをもってしても、探し人の姿は影もかたちも見つからない。
 誰もかれもが焦燥し、そして憔悴していた。暗闇の出口がまったく見えない。
……ねえ、デント」
「なんだい?」
「サトシとピカチュウ、どこに行っちゃったんだろう……
 この十日間で、だれもが幾度となく考えた言葉だ。だけど、いまのアイリスにとっては、すこし意味がかわる。
 ふたりは、どこか、自分たちのあずかり知らぬところ、まったく手の届かないところに行ってしまったのではないだろうか。アイリスには、そんな気がしていた。
「いなくなっちゃったなんて、思わないよ。でも、どこか、ぜんぜんべつのところに、行っちゃったんじゃないかって……
……シックスセンス、かい?」
「どーせ、デントは信じないでしょうけど」
「いや……そういう話なら、信じるよ。今回はね」
 思いもよらない返答に、うつむいていたアイリスはふっと顔を上げた。あのいつもめんどくさいサイエンスソムリエが、さんざん否定していた第六感を信じるのか。
「え……?」
「不自然なことが多すぎるんだよ。今回の状況は」
 自称サイエンスソムリエの目は、真剣そのものだった