Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ちこと
2024-10-29 20:36:55
56961文字
Public
poke小説・SS
Clear cache
【2012年発行個人誌】drip,drop,daydream
2012年に発行した個人誌の再掲です。サトシとラティアスで人魚姫パロのようなお話。
完成版のデータが見当たらなかったのですが、ほぼ同じ内容のはずです。
もう何年も前の作品で、つたないところも多くはずかしいのですが、せっかくなので……。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
ラティアスは気づいたとき、とてもきれいな島にいた。
いろんなことが、ぼんやりとしていた。自分がなんであるのか、どうしてここにいるのか。いままで、なにをしていたのか。
たしかなことは、なにもわからない。ただ、なんとなく、感じていた。外の世界で、ラティアスは、かなしい出来事に遭った。だから、この世界にやってきたのだ。傷を慰めるために。
きれいな島の向こうでは、海が、大きく荒れ狂っていた。
ラティアスはあの日、男の子を見つけた。名前はわからない。だけどどこか、なつかしく感じた。男の子を見た途端、こころの奥が、きゅううと鳴った。
男の子は、嵐の中、海に落ちたポケモンを助けようとしていた。ポケモンは無事に助けられたけど、男の子はそのまま、海に沈んでしまった。
それを見たとき、助けたいと思った。
あの男の子を、助けに行こうと思った。
ボートの上で男の子の名前を呼ぶ黄色いポケモンには気づかれないように、こっそりと海の中に入る。ごうごうとうねる水流の中に、男の子はいた。真っ暗な海の中でも、ラティアスにはなぜか、男の子がわかった。
意識をなくして、海底へと沈んでいく男の子のからだを、ラティアスは両手でそっと抱きあげた。荒れ狂う海流に逆らいながら、ラティアスは海面を目指した。
ざぱりと、男の子を海上へ導く。男の子のからだを水面に浮かばせて、すいと砂浜へ向かう。男の子は、目を閉じたまま動かない。
無事岸辺にたどり着き、男の子のからだを陸地にあげたとき、ラティアスはふと、こんな光景をどこかで見た気がした。あれはたしか
……
そう、絵本だ。だれかが読み聞かせてくれた、おひめさまの物語だ。
そこまで思い出したところで、ラティアスは気づく。男の子が乗っていたボートが、この島に近づいてくる。あそこにはたしか、男の子を呼ぶ黄色のポケモンが乗っていた。
自分のことがばれてはいけないと、ラティアスはふいに思った。見知らぬ存在に見られてはならないのだと、なぜだか、強く思った。
だからラティアスは、姿をかえることにした。
どうしてこの姿になれるのかも、よくは覚えていない。だけど、この姿になれば「大丈夫」であることを、ラティアスは知っていた。
もうひとつの姿になって、男の子のそばに寄り添う。そうっと、目元に貼りつく髪の毛をよけてあげる。濡れた黒髪は、光の反射で深緑にも見える。まだ海水を含んで、しっとりと重い。
この姿でいれば、だいじょうぶ。
だからラティアスは、その姿を保ったまま、男の子のそばにいようと思った。
それが崩れたのは、ある日のことだ。
ラティアスは元の姿に戻って、朝日の下を飛び回っていた。男の子がこの島にやってきた日から、嵐は嘘のようにやみ、打って変わって爽やかな快晴が続いている。陽の光を浴びて風を切るのはとても気持ちよかった。
すると、地上から、あの男の子の声がした。
ラティアスは焦った。元の姿がばれてはいけない。自分のことを知られてはいけないのだ。頭の中に鳴る警鐘がそう言っているのだから、間違いはないのだ。
だけど男の子は、ラティアスを呼びとめようとした。その声が、ラティアスのこころを引きとめる。応えたい、でも、応えちゃいけない。ふたつの声がラティアスの中で飛びかう。
今度は、地上でなにか、ずしゃっと音がした。ラティアスはつい、下へ振り向く。男の子が転んでしまったのだ。それでもラティアスは、駆け寄りたい気持ちをおさえて、もっと遠くへと飛んで行こうとした。
だけど、そのとき届いた声が、今度こそラティアスを、こころごと引きとめた。
「待ってくれ、ラティアス!」
告げたはずのない名前を呼ばれて、ラティアスはもう、夢中になって男の子の元へと向かった。
元の姿を男の子に知られてしまった。
だけどラティアスは、自分の正体がばれなければいいのだ、と思っていた。
ふたつの姿で男の子に接する日々が続く。そのふたつが同じ存在であるとばれさえしなければ、きっとだいじょうぶなのだ。
気づかれないと、思っていた。
だからだいじょうぶだと、思った。
だけどとうとう、気づかれてしまった。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内