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鳴上
2024-01-22 17:38:37
73645文字
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ナツシン
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ナツシンまとめ2022〜23
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グッドモーニングバラード
瞼の裏に光を感じて目を覚ました。ベッド横のカーテンを見ると、昨日閉め切れていなかったのか隙間があいていて、そこから眩しい光が差し込んでいた。しんと冷えた空気に体が震え、腹の辺りにかかっていた毛布を肩まで引き上げる。細やかな塵が宙に舞い、太陽の優しい光と反射している。仕事に行くには少し遅い時間のためか、外では既に人が動き始めているようだ。
夏生はそんな朝の空気を感じ取りながら、自身の右側にある熱に意識を向けた。くうくうとかわいらしい寝息をたてながら夏生の腕の中で眠る彼の髪の毛が、いつも見ているはずなのに新鮮に感じた。夏生はついこの間21歳になった。そいつと出会ったのはまだガキでしょうもなかった18歳の頃。割りのいいバイト中に拉致しようとして間違えて違う子を拐い、でもその子を助けにきたあいつと出会った。ムカつくし、エスパーとかいう意味分からない能力持ってるし、負けるし。それでも自分の中にしこりとなって残ってしまったのは事実で、また会うことがあるかどうかも分からないのに、エスパー対策のフードを作ったりした。作り終えた時には何バカなことやってんだよって思ったのに、なぜかそれを手放せなくてずっと持ち歩いていた。いつか再会するかもしれない、なんて思っていなかったけど、それでも手元に置いておきたかった。その意味まで考えることはしなかったけれど。
JCCでまさかの再会を果たした結果、脳波遮断フードは活躍した。それはもう大いに活躍した。自覚する前はこのモヤモヤを知られたくなくて、自覚してからは邪な想いを読み取られたくなくて。自覚するのにそれなりに時間はかかったと思う。どうしても認めたくない自分がいて、考えることを拒否していたから。でも自覚してからは早かった。自分を見てもらいたくて、彼をもっと見ていたくて、必死だった。だって彼は21歳で、自分よりはるかに大人だった。生来の性格もあるのか明るくて、いろいろな奴と仲良くできる人だった。夏生の前では子供じみた行動や発言が多かったが、ふとした瞬間の表情や、煙草を吸うその仕草がどうしても目に焼き付いて離れない。自分と生きてきた年月が違うのだと、はっきりと理解させられた。自分が21になった時にどこで何をしていて、どう生きているかなんて考えられなかった。ただ早く大人になりたかった。大人になれば彼が何を考えているか分かる気がしていた。
顔を覆っているキラキラと光る金髪をそっと耳にかけてやり、その寝顔を確認する。あの頃よりも歳をとった彼は、どこか子供っぽくて、それでいて自分よりも確実に大人だった。
未だ目を覚ます気配のない彼の頬をつつく。ひんやりと冷えている頬を暖めるように左手で包み込んだ。むずむずと居心地悪そうに顔を動かし始めて、そろそろ起きそうだな、なんて思う。あの時から3年も経って、お互い立場も、考え方も変わったはずなのに、それでもこうして一緒にいる。あの時の彼と同じ年齢になったからといって、考えていることなんてひとつも分かりはしない。21歳を大人だなんて思っていたけれど、実際あの頃と何ら変わりはないのだ。
「んん
……
ん〜もう朝、か?」
寝足りない顔で目をうっすらとあけたシンが暖かさを求めて夏生に擦り寄った。夏生は頭を一撫でして、額にそっと唇を落とした。
「早く起きろよ」
「まだ寝たい
……
」
ふざけたことを抜かすので容赦なく鼻をつねると、いででででっと朝に似つかわしくない声が響く。赤くなった鼻を摩りながら、目が覚めた様子でシンが笑った。
「おはよ、セバ」
「
……
おはよう」
今日の朝ごはんは何にしようか。もう少し遅く起きてもいいけれど、せっかく2人とも休みだから、ちゃんとご飯を作って食べて、コーヒーなんかも入れたりして。それでゆっくり映画とか見るのもいいかもしれない。こいつの買い物に付き合ってやってもいいし、自分の実験に付き合わせてもいい。
平坦とした人生に落ちてきた一筋の光が、この手の中にある限りきっと、またこんな朝を繰り返したいと思うのだろう。
2022/12/17
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