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鳴上
2024-01-22 17:38:37
73645文字
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ナツシン
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ナツシンまとめ2022〜23
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歳下と先輩
「セバ〜いる?」
大きな音を立てて扉を開けたシンは、もう見慣れてしまった武器製造科の研究室を見渡した。棚に並ぶたくさんの資料、机の上に広げられた製図と作りかけの武器。椅子は少しだけ乱れていて、それはいつも通りの光景だった。そんな中、シンはいつもの背中を探す。
「おう暗1の、ナツキならお前が来た瞬間透明になったぜ」
ニヤニヤしながら先輩がシンに話しかける。シンに良くコーヒーを淹れてくれる先輩だ。良い人なのだが、たまによく分からない悪戯をしてくるから、シンは警戒しながら指差す方向を見た。そこには、確かに誰も座っていないように見える椅子があった。ピーン、と思考を読み取ったシンは小走りでそこへ向かい、その勢いのまま腕を前へと突き出した。
「っ何すんだよくそエスパー!」
「お、ちゃんといた」
所謂アッパーと呼ばれるものを仕掛けたシンは、どちゃ、と音を立てて椅子から落ちたらしい夏生を見下ろしニヤニヤと笑った。バチバチと鳴らしながら透明化を解いた夏生は恨めしそうにシンを睨む。
「てめ〜」
「まさか椅子から落ちるなんて
…
はは、だせ〜、ちょ、やめろ叩くな」
笑っているシンに苛ついたのか、夏生がシンの頭を二回ほど叩いた。笑いながらそれを受け止めて、夏生を見る。何を考えているか、エスパーを使わなくても読み取れそうな顔だ。
「お前ら仲良いのもほどほどにして、さっさと帰れよ」
「お〜先輩また明日!」
シンと夏生が遊んでいるうちに帰る準備を終えた先輩はじゃあな、と手を振りながら研究室を後にした。ピシャリ、と扉が閉められて、二人きりの空間になる。
「おまえ明日も来る気かよ
…
」
夏生はため息をつきながら倒れていた身体を起こす。シンは何が楽しいのかさっぱりとした顔で笑いながら、夏生の前にしゃがみ込んだ。
「いいじゃん。明日は一緒に屋上でメシ食おうぜ、学校あるあるだろ?」
「どっちかって言うと屋上開放されてない学校の方が多いぞ」
「え、まじ?」
「まじ」
なんだよ想像とちげー、と頬を膨らませぶつくさと言うシンを見て、夏生はもう一度ため息を吐く。
「はあ、お前ほんとに21かよ。信じらんね〜」
子供じゃん、なんて思っていたら、心を読んだのだろう。シンはムッとした表情を浮かべた。
「なんだよ、お前だって歳変わんねーだろ」
「変わるよ俺まだ18だし」
「へえ、18
……
はあ?!?18ぃ?!?!」
シンの出した声が思いのほか大きく、夏生は顔を顰めた。シンは目を見開き、前のめりになり夏生の肩を掴んだ。
「え、距離ちか」
「おまっ
…
〜えぇ?18なの?」
「そうだって言ってんだろ」
「まじか
…
なんか勝手に歳変わんないと思ってたわ」
「あっそ」
そもそも夏生がシンの年齢を知っていたのだってただの偶然で、会話の拍子にシンが溢したのを聞いていたからだった。だからシンの年齢を知っていても、シンが夏生の年齢を知るはずはなかった。驚くのも無理はない。自分の言動で相手の心を乱せたと思ったら気分がよかった。
うそだろ、信じらんね〜とぶつくさ言いながら未だ驚くシンをよそに、目線を一度逸らした夏生は、しかし悪いことを思いついた顔でシンを下から覗き込んだ。ふいに視界に入り込んだ夏生にシンが少しだけ仰け反る。
「俺の方が歳下なんだよ。な、せ〜んぱい」
ニヤリ、と効果音がつきそうなほど悪い顔をした夏生の瞳に、シンの顔がぶわりとりんごのように赤く染まった。
「な、っ、思ってもないこと言うな!」
そう言うや否や、素早く立ち上がったシンはセバの上を降り、そのままの勢いで扉へと向かった。
「とにかく、明日は屋上でメシな!じゃ〜な!」
大きな音を立てて研究室を出たシンを見送って、夏生はそのまま仰向けに寝転がった。手を枕にして、大きくため息を吐く。あいつの距離感、バグってんじゃねーの。頭の中に、顔を真っ赤にしたシンの顔を思い浮かべた。
「ザマアミロ」
ドクドクとなる心臓を無視して、シンは足速に廊下を歩く。なんなんだよ、あいつ!急にシンせんぱい、なんて。
歳下は可愛い。今まで自分の周りには大人がいることが多かったから知らなかったけど、歳下は可愛いということに、坂本商店で働き始めて気がついた。ルーだって平助だって、なんだかんだ憎まれ口を叩きつつも、可愛いと思って接している。JCCで出会った晶や周や真冬だって、素直じゃない奴もいるけど可愛がっている。
だから、夏生だって同じじゃないか。他のみんなと同じ、歳下。一緒にいるとムカつくことも多いけど楽しくて、それでいて落ち着く。武器造りやそれに向ける信念は尊敬できるし、才能もある。勝手に同じくらいの歳だと思ってたけど、歳下だと思えばあのムカつくところも可愛く思える気がする。気がする、けど。
「なんで俺、こんなにドキドキしてんだよ
……
」
初めて呼ばれた"センパイ"と、悪戯っ子のような夏生の笑み。
グルグルと頭の中を、よく分からない感情で支配される。他の人に感じる可愛さと、セバに感じたこの気持ちの、違いって、なんだ?
シンは夏生の声を頭から追い出すように大きく振ると、誰もいない廊下を走り出した。
初出2022/11/14 加筆修正2023/12/29
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