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pinopipi
2026-05-18 23:07:05
99483文字
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交錯する恋花にレクイエムを②
ヌヴィフリ花吐き病の話②/長編/捏造しかない/何でも許せる人向け/メタ発言注意/ほぼ地獄のターン/一部キャラ崩壊注意
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「
…………
はぁ。」
パレ・メルモニア、執務室。ヌヴィレットは山積みの書類に囲まれ、黙々とそれらの処理をしていた。
いつにも増して膨大な業務量。それもそのはず、ヌヴィレットは今、通常業務と並行してとある重要書類の確認と承認作業を行っていた。
では、とある重要書類とは一体何か。それを語るにはまず、事の経緯から説明をする必要がある。
予言後、フォンテーヌ政府は科学院と協力関係を結び、諭示裁定カーディナルに替わる装置の開発を進めていた。
主たる目的は2つ。プネウムシアエネルギー供給の安定化と永続的な運用を可能にすること。そして、審判において公正公平な判決を下す補助をすることである。
ヌヴィレットをこの開発計画の最高統括責任者とし、科学院の上級研究員、上級技術者、検律庭に所属する審判官らが2つのチームに分かれ、その開発に携わった。
発電機能の開発チームは研究者と神の目を所有する技術者を中心に構成された。プネウムシアエネルギーの制御に関することについては、ヌヴィレットも(自身の出自に関することなど諸々の詳細は伏せて)助言を行った。こちらは既にアルケーに関する研究がある程度進んでいたこともあり、順調に開発が進んだ。
審判で判決を下す機能の開発チームは、神の目を持たない技術者と検律庭に所属するベテランの審判官で構成された。こちらは設計の時点から非常に難航したが、一部ナド・クライの精巧な技術ーーー俗に言う人工知能技術を輸入し、フォンテーヌの技術と組み合わせて応用することで理論上発明が可能となった。正確な判決が下せるよう、過去の膨大な判例を人工知能に学習させる作業と、審判を模した簡易的な検証実験も審判官により繰り返し行われた。ヌヴィレットが過去に判決を下した審判の中でも特に複雑な判例に関しては、ヌヴィレット自らもその学習作業と検証実験に参加した。
こうして凡そ3年の歳月を掛け、ついにその2つの機能を兼ね備えた装置の開発に成功したのだ。
政府は2ヶ月程前からエピクレシス歌劇場での試運転を始め、正式な運用に向けての準備を進めていた。
ヌヴィレットは現在、発電機としての役割ーーープネウムシアエネルギーの供給を行っていない状態だが、完成した装置のおかげでフォンテーヌの全ての動力は正常に機能している。
また、最近ヌヴィレットが担当する審判が減っていたのも このためだった。試運転期間はヌヴィレット以外の審判官が殆どの審判を担当していたが、その裏ではヌヴィレットも審理と判決を行い、装置の機能に問題がないかを検証していた。結果として装置は正常に機能し、全ての事例で正しい判決を下すという役割をこなすことができている。
そしてつい数日前に検証期間を終え、フォンテーヌ政府はこれらの結果を踏まえて正式にこの装置を採用する方向で決定した。
この装置が採用されたことにより、ヌヴィレットは業務の大半を手放せることとなった。よって、今は業務の引き継ぎを行うための業務ーーーつまり、各権限の移行作業を行っている。これらの書類はそのために必要なものだ。
かねてよりヌヴィレットの業務量は常人には捌けないほどの膨大な量であった。だからこそ、それらを引き継ぐ作業も膨大なのである。故に、文字通り山積みの書類がヌヴィレットを囲んでいる。
しかし、ヌヴィレットはあまり集中できていなかった。
「ヌヴィレット様
…
?最近ため息が多いですね。なんだかお顔色がよろしくないように感じます。
…
もしかして、璃月へ行かれたフリーナ様がご心配なのでしょうか?」
完成した書類を受け取りに来たセドナは、ヌヴィレットを心配そうに見つめた。
「
……
いや、すまない。そうではなく
……
」
「差し出がましいことを申し上げて恐縮ですが、フリーナ様と喧嘩でもされたのですか。近頃全くお会いになられていないようですが。」
そう問いかけるのは最強の決闘代理人、クロリンデ。恐縮とは言葉だけで、必要以上に畏まった様子もない。クロリンデはフリーナの親友の1人である。もしフリーナを傷付けたとあらば、例え最高審判官が相手であろうとも容赦なく銃口を向ける度胸を持ち合わせているのだ。
「
………………
フリーナ殿は無関係だ。確かに最近は公務の予定が立て込み、彼女と会う時間を取れていないが、喧嘩はしていない。」
「
……
そうですか。失礼いたしました。」
クロリンデはヌヴィレットの返答に納得がいっていない様子だったが、それ以上言及することなく引き下がった。そしてズン、と重たくなったその場の空気に動揺するセドナに代わり、クロリンデは話題を変えた。
「
……
やはり、お心はお変わりありませんか?」
先程とは一変し、クロリンデはヌヴィレットを心配して憂うような声色で問いかけた。
セドナもそれに同調し、不安げな面持ちでヌヴィレットを見上げている。
ヌヴィレットは少し視線を落として思考を巡らせた後、迷いも何もないと言わんばかりの強い眼差しでクロリンデを見た。
「
……
ああ。すまない、皆に心配を掛けてしまっているようだな。だが、安心してもらいたい。至って前向きな理由なのでね。」
ヌヴィレットは僅かに目を細める。口調こそ柔らかいものであったが、朝焼けの瞳には「それ以上は何も訊くな」と静かに牽制の色を湛えていた。ヌヴィレットの意思を正しく読み取ったクロリンデは、怯む様子もなくヌヴィレットの瞳をただ真っ直ぐに見据え、その真意を探った。側から見ればまるで睨み合っているかのような重苦しい沈黙がヌヴィレットとクロリンデの間に流れる。常人であれば失神してもおかしくないほどの緊張感がセドナを襲った。しかし、セドナは泣きそうになりながらも思い切って声を上げた。
「私は良いご選択だと思います
…
!そもそもヌヴィレット様は働き過ぎなのです!普段からあまり休暇も取られず
…
この3年間は特に、国のために尽力されていました。ですから私は
…
私たちメリュジーヌは皆、ヌヴィレット様のご意思を尊重したいと思っています。確かに寂しくはなりますが、それでもヌヴィレット様がお幸せなら、私たちはとても嬉しいのです!」
「
………
、ありがとう、セドナ。」
ヌヴィレットは緊張を解き、心優しい娘を愛おしむような手つきでセドナの頭を撫で、穏やかな笑みを浮かべた。
その光景を前に、クロリンデも肩の力を抜く。
「
…
ヌヴィレット様。やはり私の目には、かなりお疲れのように見えます。ですから、今から少し休憩をされてはいかがでしょうか。」
「そうですね!本日中にいただきたい急ぎの書類はもう全て受け取りましたので!本当は半休を取っていただきたいところですが
…
1時間程でしたら本日の残りの業務にも支障ないかと思いますよ!」
「
………
そうだな。では、お言葉に甘えるとしよう。」
ヌヴィレットの返答にセドナとクロリンデは安堵の笑みを浮かべた。セドナは欠かさず「外に出られてみてはいかがですか?きっと気分転換になると思います!」と提案し、ヌヴィレットの手を引いて執務室の外へと誘導した。それは、執務室にいるとすぐに仕事を再開してしまうヌヴィレットをよく理解した上での行動だった。ヌヴィレットは可愛い娘の提案に従い、手を引かれるがまま出口へと向かった。
セドナが両手でペンを持ち、紙に【只今休憩中】と大きく太い文字で書く。それをクロリンデが執務室の扉の中心に分かりやすく貼り付ける。そして2人はパレ・メルモニアの出入口で、ヌヴィレットを笑顔で送り出した。
「「行ってらっしゃいませ」」
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