pinopipi
2026-05-18 23:07:05
99483文字
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交錯する恋花にレクイエムを②

ヌヴィフリ花吐き病の話②/長編/捏造しかない/何でも許せる人向け/メタ発言注意/ほぼ地獄のターン/一部キャラ崩壊注意


パレ・メルモニアに辿り着いたフリーナは、息を整える間もなく、肩を上下させながら真っ直ぐ受付へと向かった。
乱れた髪と、擦り過ぎて赤く腫れた目元、脱げかけのジャケット、斜めを向いた服飾品の数々。それらを全く気にする余裕もなく、フリーナはセドナに話しかけた。

「セドナ!ヌヴィレットは居るかいっ!?」

話しかけられたセドナは驚き、目を見開いた。いつも優雅に振る舞い、一糸乱れぬ完璧な装いを徹底しているフリーナが、声を荒げ、突然ぐちゃぐちゃな姿で現れたからだ。

「ヌヌヴィレット様でしたら、昨日フォンテーヌ廷を出られました。……もしかして、ご存知なかったのですか?!」

フリーナは顔を歪め、頷く。心臓が、バクバクと忙しなく嫌な音を立てる。

「っ、どこに行ったか知ってる!?僕、彼に急ぎの用事があって!」

しかし、セドナは首を横に振った。

私たちパレ・メルモニアの職員は皆、ヌヴィレット様の行き先までは知らされておりません。お力になれず、申し訳ありません

ーーーー間に合わなかった。
フリーナは全身の力が抜け、膝から崩れ落ちた。

おそらくヌヴィレットは、再び権能でフリーナから身を隠しているのだろう。彼が500年近く過ごした執務室に意識を集中させてみても、彼の元素の痕跡を微塵も感じることはできなかった。
ヌヴィレットがまだフォンテーヌにいるとも限らないし、陸と海、どちらにいるかも分からない。水を好む性質ゆえに海にいる可能性は高いが、そうなると更に捜索が困難になる。水龍であるヌヴィレットは泳ぐのがとてつもなく速いのだ。ただの人間であるフリーナが追い付けるわけがない。奇跡的に見つけたとしても、彼に気持ちを伝える前に振り切られてしまうだろう。

絶望的な状況に、さぁっと血の気が引いた。
あの日、ヌヴィレットから最後に掛けられた言葉を思い出す。
本当に、本当に、

ーーーー僕たち、もう二度と会えないの……

誰よりも責任感の強いヌヴィレットが、急ぐように最高審判官を辞めた。誰にも行き先を告げずフォンテーヌ廷を出て行ったのは……周りに隠し切れないほど病状が悪化していたからだとしか思えない。もしかして、ヌヴィレットは独りで死ぬつもりなのかと、そこまで想像してフリーナの視界はぼやけ始めた。次から次へと大粒の涙が青い絨毯へ落ち、色濃く染みになっていく。
そして、急に吐き気が込み上げる。
まずい、ここで吐いてしまったらーーーーー

「ねぇ。あれ、フリーナじゃない?」
「フリーナ様?」

背後から2つの足音が近付いて来る。高めのヒールを鳴らし、よく知った声がフリーナの名を紡いだ。
その人物は、棘薔薇の会会長のナヴィアと、最強の決闘代理人クロリンデ。フリーナの親友達だった。
2人がフリーナへと駆け寄り、顔を覗くと、その瞬間、フリーナは激しく咳き込んだ。

「げほっ!げほっ、げほっ!!」
「ち、ちょっと!あんた大丈夫っ?!」
「フリーナ様!大丈夫ですか!?」

床に転がるロイヤルブルー。確かにフリーナの口から溢れ落ちたそれは、通常、人の身体から出てくるものではない。

……な、何よ、これ……
!?」

フリーナは初めて、ヌヴィレット以外の前で花を吐いた。

不意に、ナヴィアが花へと手を伸ばす。
フリーナは視界の端でそれを確認すると、考えるよりも先にナヴィアの手を払い退け、声を上げていた。

「触っちゃ、ダメだっ!うつっちゃう、からっおぇっ、げほっ!!」

フリーナは花を吐きながら、細い両腕で必死に花をかき集め、それらを抱え込むようにして床にうずくまる。
状況を上手く飲み込めないままのナヴィアとクロリンデは、フリーナの発作が収まるまでただただ見守ることしかできなかった。