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pinopipi
2026-05-18 23:07:05
99483文字
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交錯する恋花にレクイエムを②
ヌヴィフリ花吐き病の話②/長編/捏造しかない/何でも許せる人向け/メタ発言注意/ほぼ地獄のターン/一部キャラ崩壊注意
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「お
…
おい、鍾離、本当にここで合ってるのか
…
?」
「ああ。"彼女"と定期的に文を送り合う仲である堂主に"彼女"の住所を確認しておいた。此処で間違いない筈だ。」
「えっと
……
つまり、ナヒーダが言っていた"大輪の勿忘草"の正体は、フリーナ
…
ってこと?」
鍾離は旅人の問いに静かに頷いた。
旅人とパイモンは鍾離の案内に従って璃月港を出た後、沈玉の谷を経由し、真っ直ぐフォンテーヌへと向かった。
道中、鍾離は頑なに届け先の"彼女"の名を語ることは一切なく、旅人とパイモンは困惑したが、2人は鍾離を信じて案内に従った。
こうして辿り着いたのはフォンテーヌ廷にあるフリーナの自宅前。旅人とパイモンは目を合わせて頷き合い、呼び鈴を鳴らした。
「おーい、フリーナー!オイラたちだぞー!」
「こんにちは、フリーナ。いる?」
家の中からバタバタと足音がする。そしてガチャリと扉が開くと、フリーナは驚きの表情を浮かべていた。
「えっ
…
!?」
フリーナの視線は旅人とパイモン
……
を通り越し、その後ろに控えている異国の美丈夫へと釘付けになっている。
「し、鍾離先生
…
?!」
「フリーナ殿、先日振りだな。」
「ど、どうして鍾離先生がフォンテーヌに
……
?!」
「お前宛ての届け物があってな。旅人、"例の物"を。」
旅人は鍾離の声に頷き、小包をフリーナへと手渡す。
「ナヒーダからだよ。」
「えぇっ、ナヒーダから
…
?何だろう
……
」
「私達も中に何が入っているか知らないんだ。開けてみてよ。」
「う、うん
…
!」
フリーナが小包を開封すると、中には青い液体が入った小瓶と、若草色の封筒ーーーナヒーダからの手紙が入っていた。
手紙を手に取った瞬間、フリーナは目を見開く。ヌヴィレットの部屋で草元素の痕跡と共に残っていた異国の花の香りと全く同じ香りがしたからだ。
「ーーーっ!」
フリーナは慌ててクロリンデを呼ぶ。
クロリンデは素早くフリーナの元へと駆け寄ると、フリーナが手紙を差し出す。
「クロリンデ。この香り
…
ヌヴィレットの部屋に残っていたものと同じだよね
…
?!」
「これは
……
。
…
ええ、間違いありません。あの香りです。」
フリーナとクロリンデの意味深な会話と神妙な面持ちに、旅人とパイモンは首を傾げる。何かあったのか、とパイモンが声を掛けようとした瞬間、リビングの方からナヴィアとシグウィンも顔を出した。
「やっほー、相棒。久しぶり。」
「ナヴィア!」
「旅人とパイモンちゃん、こんにちは。」
「看護師長もいたのか!」
「ふふっ、公爵もいるのよ。」
「えぇっ!?」
「
……
どうも。」
リオセスリは椅子に腰掛たまま若干気不味そうにーーー
…
一切やましい事はないとはいえ、フリーナの自宅に異性である自分が出入りしていることを知られるのはかなり宜しくないことだと気にしているーーーー控えめな会釈をした。
「みんな、フリーナの家に集まってどうしたんだ
…
?!何かあったのか
……
!?」
今旅人とパイモンの目の前にいる人物は全員2人の知り合いではあるが、普段あまり揃うことがない面子。家の中を覗くと、リビングのテーブルには大きな地図が広げられているのが見える。女性陣だけならともかく、要塞の管理者であるリオセスリまでもがフリーナの自宅に居ることに、旅人とパイモンは何か大きな事件が起こっているのではないかと、思わず想像した。
フォンテーヌの重要人物達が集まるこの空間に漂う違和感。
そしてパイモンは、とある人物が欠けていることに気付いた。
「
…
あれ、ヌヴィレットはいないのか?今日は仕事か?」
「
……
っ、」
フリーナは大きく瞳を揺らして俯いた。
クロリンデとナヴィアが優しくフリーナの肩を支える。
シグウィンは悲しみに満ちた表情で口を閉ざし、リオセスリも眉間に皺を寄せながら視線を逸らした。
予想外の皆の反応に、パイモンは困惑した。肩をすくめて後退り、表情を歪める。
「
……
ヌヴィレットに、何かあったの
…
?」
旅人が冷静な声色でそう問いかけると、フリーナの肩がほんの僅かにびくりと震えた。
クロリンデはフリーナの心を案じながら、旅人へと視線を移した。
「
…
旅人。申し訳ないが、今回は
…
」
しかし、フリーナはクロリンデを片手で制し、一歩前に出た。
「
…
大丈夫だよ、クロリンデ。彼女たちにも話そう。ナヒーダーーー草神とも繋がりの深い彼女たちに、もし手を貸してもらえたら
……
何か手掛かりを掴めるかもしれないからね。」
フリーナは旅人たちへ向き直る。「
…
玄関先で話せるような内容ではないんだ。中に入ってくれる?」と声を掛けると、旅人とパイモンは頷き、迷わず家の中へと足を踏み入れた。しかし、鍾離だけは腕を組んだままその場から一歩たりとも動かなかった。
「
…
俺は遠慮しておこう。旅人との契約は既に果たされた。やはり、"龍"に蹴られるのは御免だからな。部外者は早急に退散するとしよう。」
そう言って鍾離は踵を返す。しかし3歩離れたところで一度立ち止まり、何かを思い出したようにゆるりと振り返った。
「あぁ
…
そういえば。堂主から言伝がある。『フリーナ、絶対また璃月に遊びに来てよね!今度はフリーナの"愛しの彼"ーーーヌヴィレットさんも一緒に!』
…
とのことだ。どうかまた、顔を出してやって欲しい。」
その後、鍾離は一度も振り返ることなく去って行った。
鍾離と全く面識のないナヴィアは「なんかあの人
…
ヌヴィレットさんとちょっと雰囲気が似てるわね
…
」と小さく呟く。フリーナは「そうかな
…
?」と首を傾げたが、ナヴィアの意見にクロリンデやシグウィンも同意した。
*・*・*・*・*・*
フリーナは旅人とパイモンを自宅に招き入れ、丁寧に状況を説明した。
花吐き病になった経緯や、2人の間に起こったこと、ヌヴィレットが最高審判官を辞任してフォンテーヌを出たという事実を全てありのままに話した。
旅人とパイモンは、フリーナのあまりにも壮絶な話に動揺し、困惑しながらも、最後までフリーナから目を逸らすことなく真剣に聞いていた。
全てを聞き終えると、2人はフリーナへ心配そうな眼差しを向け、それぞれ優しくフリーナの手を握った。
「
…
辛かったね、フリーナ。私たちにできることなら何でも協力するからね。」
「フリーナ、絶対にヌヴィレットを見つけような!」
2人の申し出に、フリーナは「ありがとう」と小さく頷き、2人の手を握り返した。
「早速だけど、ナヒーダからの手紙を確認してみてもいいかな?この液体が一体何なのか、何故僕宛てにこれが送られて来たのか。
…
まずはそれが知りたい。」
フリーナが若草色の封筒を開けると、中には便箋が1枚入っていた。二つ折りにされたそれを開くと、草元素の光がふわりと広がり、大人びた少女の声ーーーナヒーダの声が響いた。
『ーーーー親愛なるフリーナ。
久しぶりね。突然の手紙に驚いているかしら?
実は、私は"とある人物"から依頼を受けて花吐き病の治療薬の研究を進めていたの。同封した小瓶の中に入っているのが、まさしくそれよ。この研究は難航し、長年滞っていたのだけれど
…
今回、旅人や七神の協力
……
そして"とある人物"からの惜しみない支援を得られたことで無事に開発へと至った。
まだ一般的には発売されていないものなのだけれど
……
、これは"とある人物"の強い願いによって、あなたの為だけに特別に用意したもの。小瓶に入っている薬を全量飲めば、花吐き病は完治するわ。
この薬について説明するわね。主な作用は2つ。
1つ目、"嘔吐中枢機能の正常化"。花吐き病に感染すると、嘔吐中枢が支配され、花の種子の生成が繰り返される。だから、これを正常化させることにより、新たな種子の生成を止め、花を吐くリスクを低減させるの。
そして2つ目、"恋に関する記憶の消失"。ーーーつまり、"想いを寄せている相手の記憶を全て失ってしまう"の。研究の結果、花吐き病罹患者が吐いた花は通常の花とは異なる性質を持ち、"拗らせた恋心"を養分にして開花することが明らかになった。だから、"嘔吐中枢機能の正常化"をするだけでは体内に残った種子が開花してしまうリスクがある。"拗らせた恋心"ーーー罹患者の感情に左右され、再発のリスクが高い。だから"恋に関する記憶の消失"も必要なの。
それは逆も然り。ーーー例え記憶だけを失くしたとしても、再び恋を知り、拗らせてしまえば、また再発する。だから
…
この2つが同時に叶えば、完治できるということ。
…
この薬を使うかどうかは、あなたの自由よ。決して強要はしない。よく考えて、後悔のない選択をしてちょうだい。』
フリーナは驚きに目を見開いた。
あまりの衝撃にその場に居合わせる全員が口を閉ざし、シン
…
と静まり返る。張り詰めるほどの緊張感で背中に冷汗が伝い、鼓動は強く早鐘を打った。不意に、治療薬が入った小瓶を握る手に力が籠る。フリーナは瓶の中で小さく揺れる神秘的な青の液体を、じっと見つめながら思考を巡らせた。
ーーーー全く、理解が追いつかない。これを飲めば花吐き病が治る
…
?でも、相手の記憶を全て失うって
……
?!
だが、ナヒーダの説明には説得力があった。何故ならフリーナはつい先日、それを身をもって体験したからだ。ヌヴィレットの記憶を失った後は花吐き病が一時的に寛解したもののーーー記憶を取り戻した瞬間、すぐに再発した。
便箋を持つ手がじとりと汗ばむ。実体験と照らし合わせることで、この薬についてなんとなく理解はしたが、心は置いてけぼりのままだ。何の心の準備もなく突然究極の選択を迫られ、声が出ない。
だが、その沈黙を破ったのは少し躊躇いがちなナヒーダの声だった。手紙の内容には、まだ続きがあったのだ。
『最後に
…
この薬に込められた"とある人物"の想いを、あなたに伝えるわね。』
手紙から放たれていた緑の草元素の光が消え、青い水元素の光へと切り替わる。刹那、フリーナの眼前には"よく見慣れた筆跡の文字"が浮かび上がり、思わず便箋を持つ手に力が籠った。流るる水の如く美しく丁寧に綴られた文字。それはーーーー
『仮に彼女が薬を使用しない選択をしたとしても、完治へと至る選択肢のひとつとして彼女の手元にあって欲しいと
……
私は彼女を大切に思う者のひとりとして、そう願わずにはいられない。』
フリーナがそれを読み終えると、水元素の光と共にその文字は空中へと霧散した。
フリーナは肩を震わせ、膝から崩れ落ちる。
…
これは、間違いなくーーーーー
「ヌヴィレットだ
……
!ヌヴィレットがこの薬をナヒーダに依頼したんだ
……
!!」
そう理解して、フリーナの視界は涙でぼやける。
ヌヴィレットの部屋に残っていた草元素の痕跡と異国の花の香りは、おそらくナヒーダと文を交わしていたからなのだろう。
本質が龍であるがゆえ神を忌避する性質を持つヌヴィレットが、フリーナのために孤高のプライドをかなぐり捨ててまで他国の神へと助けを求めた。
それが一体何を意味するのか。フリーナはその想いを正しく理解し、泣き崩れた。
「
…
うぅっ
……
ぬゔぃ、れっと
……
!!」
ヌヴィレットの深く大きな愛に、涙が止まらない。
小瓶をぎゅうっと抱き締めながら、声を上げて泣いた。
一方、旅人とパイモンは、ここで初めて先日完了した依頼の全貌を理解した。
ナヒーダから花吐き病治療薬に使用する素材を集めて欲しいと依頼を受けた時、急いでいるのだと言われたのみで、その他の情報は一切告げられなかった。治療薬が完成した後も詳細を知らされなかったことに違和感を感じていたが、依頼元がヌヴィレットであるならばその理由も納得できる。
ヌヴィレットがどれだけフリーナを大切に想っているか。それは3年前、予言問題の解決に助力した際の彼のフリーナに対する発言や行動からよく伝わってきた。かくいう旅人も、ヌヴィレットに牽制ーーーー言うなれば、"あれは私のものアピール"を受けたうちのひとりである。2人は付き合っているのか、もしかしたら既に夫婦なのでは?と、旅人は思っていたのだが
………
まさか未だに付き合ってすらいないどころか、こんな拗れた状況になっていたなんて。
…
つまり、だ。ヌヴィレットが、フリーナの弱みである病について無闇矢鱈に他者へ話すわけがないし、話したとしても必要最低限の極小数に留めるだろう。そして、真実を知った者には厳しく箝口令を敷くに決まっている。旅人に詳細を言わなかったのは、おそらくパイモンがうっかり口を滑らせるリスクを懸念したからなのかもしれない。
旅人は崩れ落ちたフリーナの横に膝を付き、震える背中を優しく支えた。
「フリーナ
……
」
「旅人っ
…
僕っ
…
」
「
…
うん。フリーナはどうしたい?」
フリーナは蜂蜜色の旅人の瞳を真っ直ぐに見つめ、しゃくり上げながらもハッキリと声を上げた。
「せっかく用意してくれたけどっ
……
僕っ
…
もう二度と、ヌヴィレットのこと
…
忘れたくないよ
…
!」
フリーナの意思に、その場にいた全員が納得の表情を浮かべた。
それならば早くヌヴィレットを見つけ出さねばと、一同は作戦会議を再開した。
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