pinopipi
2026-05-18 23:07:05
99483文字
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交錯する恋花にレクイエムを②

ヌヴィフリ花吐き病の話②/長編/捏造しかない/何でも許せる人向け/メタ発言注意/ほぼ地獄のターン/一部キャラ崩壊注意


人目を避けるため、フリーナ、ナヴィア、クロリンデの3人は一旦隣の執務室へと移動した。
主人がいなくなったその部屋には以前よりもあまり人が寄り付かくなったものの、油断はできない。セドナの計らいで執務室周辺の人払いと、受付業務の傍ら見張りをしてもらえることとなった。

3人は来客用のソファーに並んで腰掛ける。
フリーナは事情が事情なだけに話すことを躊躇ったものの花を吐いた現場を実際に見られてしまった以上、何も話さないというわけにはいかなかった。この、あまりにも複雑な状況を説明するには、まず持って来たノートを読んでもらった方が早いと判断し、2人へ手渡した。

やがて2人がそれを読み終わり、驚愕と悲愴が入り混じる複雑な表情を浮かべている様を見て、フリーナは改めて補足も含め、自分の口からも状況を説明し始めた。

今から100年前ーーー神を演じていた時代から、僕は花吐き病を患っていたんだ。キミたちも知っての通り、僕の好きなひとはヌヴィレットさ。ずっと昔から、彼のことが好きだった。」

ナヴィアとクロリンデはフリーナの話に一切口を挟むことなく、真剣な表情で静かに耳を傾けていた。フリーナは再び発作を起こさないよう極力感情を抑えながら、時系列を整理し、淡々と、簡潔に説明した。

自分のせいでヌヴィレットも花吐き病になってしまったこと。その時に自分が咄嗟に吐いた嘘。その後お互いの完治の為に新たに築かれた協力関係。ヌヴィレットの恋の相手を自分が勝手に勘違いしてしまったこと。ヌヴィレットと想いがすれ違い、極限まで拗れた結果告白の言葉を何ひとつ信じてもらえなかったこと。そして、彼に記憶を消されてしまった後のことも全てーーーーー

それで、僕はやっと全てを思い出してヌヴィレットに会いに来たんだけど、もう遅かった。彼がどこに行ったのか分からなくて、これからどうしたら良いのかも分からない……。たぶんヌヴィレットは、僕が彼を認識できないように何か特殊な力を使ってる……。この執務室の中ですら、ヌヴィレットの元素の痕跡を一切感じ取れないんだ…………っごめん、……いきなりこんなことを話されても、キミたちも困るよね……。」

フリーナは俯き、それっきり黙り込んだ。
ナヴィアは目を潤ませながらフリーナへと両腕を伸ばす。そしてその小さな身体を柔らかくを抱き締め、酷く悔しそうに声を上げた。

「どうして今まで相談してくれなかったのよっ!」
「えっ……?」
「どうしてあんたはいつもそうやって1人で抱え込むの!?あたしあんたのことずっと応援してたのよ?!だから、あんたがこんなに辛い思いをする前に……もっと早く相談して欲しかったっ……!あたしたち、そんなに頼りなかったっ!?」

フリーナの肩口がナヴィアの涙で濡れていく。フリーナは、ナヴィアの涙声に驚き、顔を上げた。
ーーーー違う。頼りなかったとか、そんなことは全然なくて。ただ、僕はキミ達にーーーーーー

しかし、そんなナヴィアの肩をクロリンデが軽く叩く。そして、柔らかな口調で優しく諫めた。

やめるんだ、ナヴィア。今一番お辛いのはフリーナ様だ。あなたの気持ちも分かるが、感情的になって責めるべきではない。フリーナ様はきっと、私たちに心配をかけたくなかったんだ。そうでしょう?」

クロリンデの問いかけに、フリーナは申し訳なさを感じながらも小さく頷いた。
ーーーそう。親友達には心配をかけたくなくてこの3年間、2人には明るい話だけを聞いてもらっていた。次の告白の演出とか、ヌヴィレットの好きなところとか。けれど、2人に話した内容の殆どは、紛れもなくフリーナの本心だった。
ごめんねと、フリーナはもう一度謝罪をする。

っ、あたしこそごめん……。そうよね、すごく辛かったよね……。」

むぎゅ、と一層強く抱き締められ、フリーナの目にも涙が浮かぶ。
絶望に追いやられていた心に、親友たちの優しさが沁みた。


まさか、おふたりがこんな状況になっていたとはな。
クロリンデは厳しい表情を浮かべ、ナヴィアへと視線をやる。
やっぱり、おかしいと思っていたのよ。
ナヴィアは唇を噛みながら、クロリンデを見つめ返した。

それから凡そ十数秒。2人は目だけで会話を終え、小さく頷き合った。
昨日、ヌヴィレットが去り際に置いて行った願い。
『どうか君達が、彼女を助けてやってくれないか。』
それをまさか、こんなにすぐーーーしかも、このような形で叶えようとすることになるとは、2人はおろか………ヌヴィレット本人でさえも全く予想していなかっただろう。
ナヴィアはフリーナを解放し、その両手をしっかりと握る。
クロリンデはフリーナの目の前に膝を付き、真剣な眼差しを向けた。

「フリーナ様、何かお力になれることはありませんか?生憎、私達もヌヴィレット様の行先は知らされておりませんが、フリーナ様おひとりで捜されるより、人手は多い方が良いと思います。」

クロリンデの申し出に、フリーナは目を見開いた。
ナヴィアはクロリンデの言葉に同調し、頷いている。
頼りになる親友達からの好意。フリーナには、断る選択肢など選びようがなかった。

うん。ありがとう、クロリンデ。巻き込んでしまって申し訳ないけれどキミたちを頼っても良いかな?」
!もちろんです。それに、フリーナ様のお身体のことが心配です。まずはこれから看護師長のところへ参りましょう。それからでも遅くはないはずです。」
「そうね。ヌヴィレットさんがどこに行ったのか分からないから、捜索範囲が広いもの。あんたには少しでも回復してもらわないとね!それに、リオセスリってヌヴィレットさんと仲が良かったんでしょ?もしかしたら何か知ってるかもしれない!よーし、行き先は決まりね!フリーナ、歩ける?メロピデ要塞に行くわよ!」

3人は執務室を出て、セドナのいる受付へと顔を出した。人払いと見張りをしてくれたセドナへ、フリーナが感謝を述べると、セドナはフリーナの少し元気を取り戻した様子に安堵の笑みを浮かべた。

「フリーナ様、無理はなさらないでくださいね。私はいつでもフリーナ様の味方です。先程のことも、絶対に誰にも言いません。もし私にお力になれることがありましたら、いつでもお申し付けください。フリーナ様が笑顔でいられることが、私たちメリュジーヌの願いです。そしてヌヴィレット様も同じお気持ちだと思います。あの方は、フリーナ様の笑顔が何よりもお好きでしたから。」

フリーナはうん、と頷いてセドナの頭を撫でた。気になることが山ほどある筈なのに、深くは聞かないでいてくれる。その優しさに、フリーナは心から感謝した。

「ありがとう、セドナ。僕もう一度ヌヴィレットに会いたいんだ。今でもずっと、彼のことが大好きだから。」
「ふふ、こんなにお可愛らしいフリーナ様のお顔を見逃してしまうなんて、ヌヴィレット様はとても惜しいことをしましたね。後から知られたら、悔しくて雨が降ってしまうかもしれません。」
「ははっ、そうかい?……って、セドナ、キミ……もしかして、ヌヴィレットの気持ちに気付いていたの?」

セドナは、まあるい両手で口元を可愛らしく隠しながら、「もちろんです」と笑った。

「私だけではないですよ。メリュジーヌは皆気付いています。だって、ヌヴィレット様ったらいつもフリーナ様のことを目で追っているんですもの。フリーナ様のお姿が見えない時には、必ずフリーナ様の所在を確認なさっていましたし……最近ですと、フリーナ様が好まれそうなスイーツについて相談されたんですよ。限定のマカロン、覚えていらっしゃいますか?ヌヴィレット様、あの時とっても真剣なお顔をされていました。いつもより2時間も早起きして出勤前にご自分で並ばれて。フリーナ様へ直接お渡しになられた後も、喜んでいただけたのだととっても嬉しそうでした。ですから、気付かない方がおかしいのです。」

フリーナは顔を真っ赤にして思わず一歩後ろへと下がる。すると、クロリンデとナヴィアの肩にぶつかりそうになり、2人に肩を支えられた。

「もちろん、あたしたちも知ってたわよ。どうしてヌヴィレットさんがあんたの告白を断り続けていたのか、本当に意味が分からなかったもの。まぁ、自覚するのは時間の問題かなって思っていたけれど。そういえばあの人、いつもあんたが傷付くことだけは絶対に避けたがっていたよね。一見厳しくしているように見えるけど、なんだかんだ言って、あんたにだけはとんでもなく甘いのよ。見るからに"フリーナは特別"って感じのあの目。あれは好きな女の子だけに向けるものよ。砂糖や蜂蜜よりも甘〜い視線を送ってるの、あたし何度も見たことがあるわ。それで何度胸焼けしそうになったか……たぶん気付いてないのは、あんただけだったんじゃない?」
「そうだな。ナヴィアの言う通り、ヌヴィレット様はいつもフリーナ様だけを見つめておられました。舞台に立たれている時はもちろんですが、それは日常的なことでしたよ。フリーナ様が退位される前の少々雑な扱いは、最上級の愛情の裏返しだったのでしょう。ご存知ですか?あの方がフリーナ様のお耳に触れないような場所では、あなた様をまるでご自身のものであるかのような物言いで悠々と語られていたことを。フォンテーヌへ訪れたばかりの旅人にすら、しっかりと牽制なさっていたことを。先日、フリーナ様が璃月へご旅行に行かれた後は、心ここに在らずなご様子でした。気分転換に散歩へ出られた際はフリーナ様のご自宅前で立ち止まり、色々と考えておられるようでしたので……きっと、フリーナ様のことを想われていたのでしょうね。」
「ん゛ん゛っ」

フリーナはあまりに具体的過ぎる数々の証言に耐えきれず、両手で顔を覆った。
え、気付いてなかったの僕だけ?全ッッッ然知らなかったんだけど?!うぅ恥ずかし過ぎる……

ナヴィアとクロリンデとセドナは、耳まで真っ赤になったフリーナを見て優しい笑みを向けた。

「ほら、行くわよ!」とナヴィアがフリーナの手を引き、クロリンデがその後に続く。
3人は、セドナに見送られながらパレ・メルモニアを後にした。

道中、フリーナの鼓動は早鐘を打ち続け、頬は薔薇色に色付いたまま、発作を起こすこともなかった。
あの日ヌヴィレット自身が語っていたように、随分と前から彼に愛されていた。
第三者から見てもそれが明け透けだったというのはかなり衝撃的だったがーーーフリーナは嬉しくて、嬉しくて、ヌヴィレットに会いたい気持ちがより一層高まった。

向かう先は、シグウィンとリオセスリがいるメロピデ要塞。
ナヴィアとクロリンデと同じく、ヌヴィレットから例の願いを託された人物達である。
そのことをフリーナは知らないがーーーー少しでも何か手掛かりを掴めますように、とフリーナは祈った。