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pinopipi
2026-05-18 23:07:05
99483文字
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交錯する恋花にレクイエムを②
ヌヴィフリ花吐き病の話②/長編/捏造しかない/何でも許せる人向け/メタ発言注意/ほぼ地獄のターン/一部キャラ崩壊注意
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ヌヴィレットの足取りについて、棘薔薇の会が連日聞き込み調査をしているものの、エピクレシス歌劇場付近での目撃情報以外得られず、調査は難航していた。
フリーナは旅人とパイモンと共に目撃情報のあった場所へと実際に足を運び、何か手掛かりがないか調査をすることにした。
ルキナの泉、それからエピクレシス歌劇場へと繋がる道を歩く。フリーナは目を閉じてヌヴィレットの元素力を探ろうとしたが、やはり何も感じ取ることはできなかった。
ヌヴィレットは人の姿をしているが、彼を構成する全ては高純度の水元素である。そのため、彼が触れたものや通った道には必ず水元素が付着する。ヌヴィレットほどの元素力の持ち主であれば通常、その力の強大さゆえに痕跡も長く濃く残る。要するに、ヌヴィレットが元素生命体である以上、痕跡を残さずに移動することは不可能であるということだ。しかし、フリーナがそれらを一切感じ取れないということは、ヌヴィレットがフリーナに認識されないようにする術を再び使用しているという証拠だった。
また、痕跡に関して言えば、ヌヴィレットの捜索を進める中で新たに判明したことがある。ナヴィアやクロリンデなど神の目の扱いに慣れている者でさえ、ヌヴィレットの痕跡を殆ど感じ取れなかったのだ。この事実から推測されるのは、ヌヴィレットはフォンテーヌ廷を去った時点で、かなり衰弱していた可能性が高いということである。
フリーナは捜索が長引けば長引くほど、日々焦る気持ちが募っていった。小さな手掛かりを見落とさないためにも常に冷静さを保ち、目の前の調査に集中しなければいけないと分かってはいるが
……
ふとした瞬間に嫌な想像が頭をよぎってしまい、どうしても気が急いてしまう。
ヌヴィレットはまだ、どこかで生きているって信じたい。でも、もし見つけるのが間に合わなかったらーーーーー
「
…
フリーナ、大丈夫?」
いつの間にか調査の足を止めてしまっていたフリーナへ、旅人が声を掛ける。
「っ、ごめん、大丈夫だよ。少し考え事をしていただけさ。」
旅人の声で我に返ったフリーナは、咄嗟に笑顔を繕った。だが、パイモンがフリーナの傍へ飛んで行き、その顔を至近距離で観察した後
……
心配そうな表情を浮かべた。
「おまえ、すごく顔色が悪いぞ
…
?少し休憩した方がいいんじゃないか
…
?」
しかしフリーナは、「そんな大袈裟だなぁ!僕は本当に大丈夫だから!」と言ってぶんぶんと両手を横に振り、少々大袈裟なくらい笑って見せた。それから調査を再開すべく、足早に旅人とパイモンから離れて行った。
その場に残された2人は、フリーナの背中を黙って見つめながらその心情を察する。そして、それぞれ憂うような表情で目を見合わせた。
「
……
あいつ、絶対無理してるよな
……
」
「うん
…
。でも、大切な人をあてもなく捜す不安は、痛いほど分かるよ
…
。」
だから、旅人とパイモンがフリーナのために出来ることは、ヌヴィレットの捜索に協力し、一刻も早くその手掛かりを掴むことだ。
フリーナの後に続き、2人もすぐに調査を再開した。
*・*・*・*・*・*
旅人は歌劇場を軸に、その周辺で何度も細かく場所を移動し、元素視覚でヌヴィレットの痕跡を探した。
元素視覚の範囲は半径10m程に限られており、元素の痕跡が薄い場合はその範囲内であっても上手く感じ取れないことがある。ゆえに旅人は水元素のみに意識を集中させ、一歩ずつ慎重に調査を進めていった。
付近にルキナの泉があるからか、この場所は特に水元素が多い。少しでも気を緩めれば、簡単にそちらへと意識が引っ張られてしまう。それに、その水元素がヌヴィレットの痕跡なのか、そうでないかの判別が非常に難しく、調査は難航した。
そのため、旅人は一旦感覚をリセットさせようと歌劇場から少し離れてみることにした。
歌劇場向かって左側にある丘。一面に広大な緑が広がり、コウハクジュや青い小花が点々としている。水辺が隣接しているものの、ここは土地が高く少し距離があるため、大地に根付く草元素と吹き抜ける風元素に満ちていた。
旅人は何度か深呼吸をし、心を鎮める。
そして、静かに元素視覚を発動させるとーーーー微かに水元素を捉えた。
それはか細い線を成し、"人ひとりが歩いて移動した時に残る軌道のような痕跡"のように見えた。
示す方角はヌヴィレットの目撃情報と同様、北の方角。
それに、はっきりとは感じ取れないものの、それは普通の人間とは異なるヌヴィレットの気配ーーー水龍を構成する水元素力と類似している。
つまり、これはヌヴィレットの痕跡である可能性が高いと、旅人は判断した。
旅人は急いで歌劇場の方へと戻り、別の場所を調査していたフリーナとパイモンへ集合をかける。
そして自身が発見した痕跡について報告し、フリーナの手を取った。
「こっちだよ!行こう!」
やっと行く先が見えた。3人の足取りにもう迷いはない。その表情は明るく、先程までの憂いは幾分も和らいでいた。
フリーナは旅人に手を引かれながら「ありがとう。キミは本当に頼りになるね。」と感謝を伝えた。その声に旅人が振り返ると、微笑むフリーナの色違いの瞳は朝露のように煌めき、確かに希望の光を宿していた。旅人とパイモンはフリーナへ得意げに笑みを返した後、3人は元素力を頼りに北へ北へと足早に歩みを進めていった。
*・*・*・*・*・*
その後。痕跡を辿っていくと、ヌヴィレットの足取りはほぼ直進だということに気付いた。歌劇場を離れてから、彼はどこにも寄り道をしなかったようだ。ただ、人通りのある道を避けていたことだけは伺える。
フリーナ、旅人、パイモンは、フォンテーヌの地図に記されている土地を越えて、やがて荒々しい岩場が続く海岸へと辿り着いた。辺りを調査すると、波打ち際ギリギリの場所でヌヴィレットの元素の痕跡は途切れていることが分かった。きっと、ここから海の中へと潜ったのだろう。フリーナは波が荒れる海面を眺めながら、きゅっと唇を噛み締め、両手を強く握りしめた。
実は、この海岸にはよく覚えがあった。
忘れもしない、ここはフリーナにとって思い出の場所ーーーヌヴィレットと初めて出会った海岸なのである。
フリーナは古い記憶ーーー今から約500年前の記憶を遡る。
フォカロルスが送った招待状を読んだヌヴィレットが水面から顔を出すのをひたすら待ち、ひとり出迎えたあの夜。フリーナはフォカロルスの指示に従って動いていた。しかし、実際は本当に上手くいくのか内心不安でたまらなかったのだ。だって、相手は水元素の龍王で、当時のフリーナにとって彼は全くもって得体の知れない生物だったのだから。そもそも、その名称だけで既に、怖そうだな
…
というイメージを抱いてしまっていた。フォカロルス曰く、彼ーーー2代目の水龍は比較的気性が穏やかで、人間のような見た目をしているらしいが。フリーナは、水龍に人の言葉は通じるのか、急に襲ってきたりしないか不安で、もしその場で殺されてしまったらどうしよう
…
と、悪い想像ばかりをしてしまっていた。
それでも、予め考えておいた誘い文句とともに水龍ーーーヌヴィレットへ手を差し伸べると、彼は特に迷う様子もなくフリーナの手を取った。
彼の第一印象は、月のように綺麗なひと。
海水に濡れた彼の銀髪が月光に照らされてキラキラと輝き、この世のものとは思えないほど、とても美しいと思った。
朝焼け色の瞳に見つめられると、恐怖ではなく、胸が焼かれるような
…
どこか落ち着かない感覚に襲われた。
その理由が、今なら理解できる。
「
……
なんだ、僕もキミと同じだったんじゃないか。」
それはきっと、一目惚れだったのだ。
自覚したのはヌヴィレットが最高審判官になって暫くしてからだったけれど。
この気持ちは、最初からずっとずっと自分の中にあったのだ。
「フリーナ
…
?」
海面を見つめたまま動かないフリーナを心配した旅人が、フリーナへと声を掛ける。
しかし、フリーナが旅人の方へと振り返ろうとした、その時。
「
……
っ?!」
突然、フリーナの神の目が不安定な光を放ち始める。それと同時に、急に感じ取れるようになった水元素力。
この気配を、よく知っている。
これはまさしくーーーー
「ヌヴィレット
…
!!」
フリーナが波打ち際から海へと飛び込む。海水の冷たさなんて気にしていられなかった。ヌヴィレットの居場所が突然、手に取るように分かるようになったのだから。
早く、早く、と焦る気持ちが先行して、フリーナは飛び込む前に息を十分に吸い込むことを忘れていた。
ここはフォンテーヌの海域ではない。息が続かなければ溺れてしまうことだってあり得る。
フリーナは神の目を握りしめ、ヌヴィレットの居る深海へと急いだ。
*・*・*・*・*・*
「どどどどうするんだよ
…
!飛び込んで行っちゃったぞ
…
!」
パイモンはすぐに波打ち際から海面を覗き込み、フリーナを探した。だが、既にその姿は潮流に飲まれ、見つけることは叶わなかった。
旅人は考えるよりも先に、フリーナを追い掛けようと海へ飛び込もうとする。
しかし、危険を知らせる赤が視界いっぱいに迫り、波打ち際より先へ進むことは不可能だった。
本来旅人の身を守るためにあるこのシステムを、これほどまでに恨んだことはない。
「っ
…
パイモン、急いで皆を呼んで来て!」
「おう
…
!!オイラに任せろ
…
!!」
旅人はフリーナの帰還を待つためにその場で待機、パイモンは皆を呼ぶため最高速度で飛んでいった。
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