pinopipi
2026-05-18 23:07:05
99483文字
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交錯する恋花にレクイエムを②

ヌヴィフリ花吐き病の話②/長編/捏造しかない/何でも許せる人向け/メタ発言注意/ほぼ地獄のターン/一部キャラ崩壊注意


旅人とパイモンは、草神ナヒーダから"とある依頼"を受け、璃月港へと訪れていた。

ここ数ヶ月間、2人は教令院で進められている花吐き病の研究を手伝っていた。なかなか手に入らない貴重な素材を採取することを主な任務として世界各地を奔走し、つい先日やっとその治療薬が完成した。
しかし。この大掛かりな依頼が一段落し、報酬も受け取ってやっと休めると一息ついたのも束の間……今度はまた新たな依頼を受けたのだ。

『大輪の勿忘草が海を渡り璃月の地へと流れ着いているはずよ。これを"彼女"に届けてもらえるかしら。』

まるで謎掛けのような依頼。
しかもナヒーダは、『中身は絶対に見ないでちょうだいね。これは他国の要人からの依頼で、そういう約束をしているの。本来であれば私が直接届けられたら良かったのだけれど。璃月の土地勘があって、私が最も信頼するあなた達に託したいの。先方の意向で詳細を話せなくて申し訳ないのだけれど……お願いね。』と話し、それ以上は何も教えてもらえなかった。

「うぅ……璃月まで来てみたはいいものの……やっぱり誰に届けたらいいのか全然分からないぞ!ナヒーダのやつ、一体誰のことを言っているんだ?」

「手掛かりは"大輪の勿忘草"……、それと"彼女"っていうことは、その人は女性なのかな?」

2人は璃月港を歩き、何か手掛かりがないか情報を集めることにした。



*・*・*・*・*・*



「結局何も分からなかったぞ………

璃月港へ訪れてから8時間。旅人とパイモンは休みなく歩き続け、ひたすら聞き込み調査を行なっていたが、収穫ゼロというまさかの事態に肩を落とし、立ち止まった。
時は既に夕刻。辺りは一面、美しい茜色に色付いていた。

「む、旅人とパイモンか。久しいな。」
「あっ!鍾離だ!!」

三杯酔で田饒舌の講談へ耳を傾けながら酒を楽しんでいた鍾離は、見知った2人の姿を見つけ、声を掛けた。
旅人とパイモンは鍾離の元へと駆け寄り、嬉しそうな笑みを浮かべる。そして、鍾離ならば何か知っているのではないかと思い、ナヒーダからの依頼について説明し、情報を求めた。

「ふむ……"大輪の勿忘草"か。璃月には勿忘草やそれに近い種の草花は生息していないが、草神がそれを"彼女"と表現したのであればやはり花ではなく、性別の概念のある生物ーーーおそらく"人"なのだろう。」
「やっぱりそうだよね。鍾離先生、何か心当たりはないかな?」
「オイラたち、これを誰に届けたらいいのか全然分からなくて困ってるんだ。」

鍾離は腕を組み、思考を巡らせる。
"元は他国の要人から草神への依頼だった”……”配達物の中身を見てはいけない"……"届け先は大輪の勿忘草"……"彼女"……………あぁ、そういえば。
先日、草神から花吐き病の治療薬が完成したと報告があった。実際に医療機関で使用できるようになるのはまだもう少し先だと言っていたが、今旅人の手にあるのはもしかすると、それに先駆けた"依頼の品"なのかもしれない。
ということは………”大輪の勿忘草”とは"彼女”ーーーーフリーナ殿の異名ーーーーミオソティス・ミオマルクのことか。
依頼元である”他国の要人”とは、おそらくヌヴィレット殿のことだろう。
もしこれらの推測が正しければ、届け先はつまりーーーーー

……成程。俺に心当たりがある。だが生憎、”彼女"は今、璃月にはいない。先日、故郷へと戻った。」
「えぇっ!そいつは一体誰なんだ!?オイラたちに教えてくれよ!!」
"彼女"らには少々複雑な事情があるようだ。故に俺の口からは何も言えない。だが急いだ方が良い案件かもしれない。」

鍾離の脳裏に浮かぶのは、異国の友人の身に起きた不可解な現象を案じていた堂主ーーーー胡桃の顔。
届け先が依頼元のヌヴィレットではなく、フリーナーーーしかも、旅人にさえも名を伏せているところが鍾離には妙に引っ掛かった。
フリーナに掛けられていた"記憶を封じ込む術"は、フリーナが璃月を出る前には既に綻びが生じていた。
あの様子からして、おそらく今頃フリーナは…………

鍾離は腰を上げ、旅人とパイモンに向き直る。

「その依頼、俺も同行させてもらおう。」
「えぇっ!?さっき『俺の口からは何も言えない。』って言ってたのに、いいのか?!」
「ああ。何も言えないことに変わりは無いが、逆にその依頼を無事に完遂できなかった方が俺にとっても火急の事態になり得る。であれば、同行した方が早いだろう。」

鍾離の意味深な言い分を全く理解できなかった旅人とパイモンは互いに顔を見合わせたが、何はともあれ解決の糸口が見えたことに安堵した。
確かに鍾離がいれば心強い。
2人は鍾離の申し出をありがたく受け、余計な詮索はしないことを約束し、彼を頼ることにした。



*・*・*・*・*・*



堂主。今、良いだろうか。」

届け先へと向かう前夜、鍾離は一度往生堂へと戻った。
堂主の部屋を訪ね、入室はせずに外から声を掛ける。
その瞬間、部屋の中の蝋燭の火が大きく揺らめき、部屋の中の人物ーーー胡桃が鍾離の声に反応し振り向いたのだと分かった。

「鍾離さん?こんな時間にどうしたの?」

胡桃は部屋の中から静かに応答する。

「明日から数日間、暇を貰いたい。」
「ふぅん……いいけど、何かあったの?」
「旅人と共にフォンテーヌへ行くことになった。」
「フォンテーヌかぁ……

胡桃は少し間を置いてから、鍾離へと再び質問を投げ掛けた。

それって、”例の件”と関係ある?」
ああ。正に、その件だ。」
「そう………

胡桃が部屋から顔を出す。そして、血色の瞳で鍾離の黄金の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「鍾離さん。あの子は私の大事な友達なの。」
「ああ。分かっている。」
「もしあの子が何かに苦しんでいたら、絶対、ぜぇーーーーーったい助けてあげて。」
それは俺ではなく、"彼"の役目だろう。だが……善処はしよう。"彼"に蹴られない程度にな。」


それから胡桃が「外国では往生堂にツケ払いなんてできないし、『モラがない』なんて言ったら即捕まっちゃうんだからね!ちゃんと財布は持って行ってよ!」と鍾離へ冗談交じりに忠告すると、鍾離は「問題ない。既に懐に入れてある。」と笑った。