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pinopipi
2025-11-09 16:05:18
57241文字
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交鎖する恋花にレクイエムを①
ヌヴィフリ花吐き病の話①/長編/捏造過多注意/何でも許せる人向け/地獄→ハピエン/2026.05.加筆修正
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フリーナが花吐き病を発症したのは、今からおよそ100年前。まだ水神を演じていた頃だった。
いつ、どこで感染したのかは分からない。おそらくだが、ファンから受け取った花束のどれかに感染性のあるそれが紛れ込んでいたのだろう。
フリーナがヌヴィレットに対して長年抱いていた淡い恋心は、当時のフリーナが誰にも打ち明けられない秘密のひとつだった。
好きになったきっかけは、はっきりとは覚えていない。彼と日々を共に過ごす中でいつの間にか好きになっていたのだ。
役職上、フリーナを一番近くで支える立場にあったヌヴィレットは、時にフリーナの言動に呆れたような表情をすることも多かったが、小言を言いながらもなんだかんだ最終的にはいつもフリーナを傷付けないよう守ってくれた。
ヌヴィレットには少々頑固で分からず屋な一面があり、時には意見が衝突することもあったが、彼の言い分は常に民やフリーナを思ってのもので、その厳しい表情や言動の裏にはいつも彼なりの優しさがあった。
だからこそ、いつもの厳格な表情から一変してたまに見せる穏やかな笑みは、フリーナの心を掴んで離さなかった。それは彼が美味しい水を飲んだ時やメリュジーヌの頭を撫でる時にしか見られず、フリーナに向けられたものではなかったが、それでもフリーナは彼の笑顔を見ると胸が高鳴り、幸せな気持ちになった。
だが、そんなヌヴィレットにも唯一、フリーナへ純粋な好意を示す瞬間がある。彼はフォンテーヌへ招かれてから観劇をすることがとても気に入ったようで、フリーナが出演する舞台は必ず観に来てくれていた。初日と千秋楽は必ず。公務の都合がつけば、それ以外の日程も複数回。そして彼は観劇後、毎回大きな花束をフリーナへ差し出し、眩しそうに目を細めてこう言うのだ。「此度の劇も素晴らしかった。」と。フリーナは毎回、受け取った花束を両手いっぱいに抱えながら紅潮する頬をヌヴィレットに気付かれないよう必死に隠した。今では良い思い出だ。
こうして日に日にヌヴィレットへの想いは膨れ上がり、数百年。いつしかフリーナの恋心は抱えきれないほど大きな愛へと変化していった。
水神を演じている以上、決して告げることのできない叶わぬ恋だったが、それでも傍にいられるだけで幸せだった。ヌヴィレットの存在は、果てしない孤独に苦しむフリーナの心を支えてくれた。
拗らせている自覚はあったが、幸い、”鏡の中の僕”ーーー本物の水神フォカロルスから受けた呪いによって、この病が進行することはなかった。
しかし予言が解決し、呪いが解けてただの人間へと戻ると、病は急速にフリーナの身体と精神を蝕み始めた。ゆえにフリーナは考えた。どうすれば人の身で上手く病と付き合い、少しでも長く生きていけるかを。
未だこの奇病に有効な治療法はないが、唯一、恋する相手と両想いになれば完治することが分かっている。
であれば、ヌヴィレットへ自らの恋心を打ち明けようとフリーナは決意した。
ただし、病のことは伏せた状態で。余計な心配はかけたくなかったし、何より情けで付き合ってもらうなんてことが起きてしまったら、それこそ惨めで一生完治なんてできないと思ったからだ。
だが、突然告白をしてもヌヴィレットを困らせてしまうだろう。少しでも勝率を上げたかったフリーナは、少しずつアプローチを始めた。
彼の迷惑にならない程度に会いに行く頻度を増やした。マナー違反にならない程度にさり気なくボディータッチもしてみた。彼の好きなものーーー世界各地の名水を取り寄せてプレゼントもしてみた。フリーナは勇気を振り絞って頑張ったのだ。
しかし、ヌヴィレットはフリーナの特別な好意に全くと言っていいほど気付かなかった。それでもめげずに3ヶ月ほど頑張ってみたものの、辛うじて小さな笑みを向けられるようになっただけで、他は特に何も進展せず
…
。
やはりヌヴィレットには直接的な言葉で伝えないと伝わらないのだと、フリーナは確信した。
実際、過去に何度かそういう場面を目撃している。彼は未だ他人の感情には疎いところがあるからか、相手の好意をスルーし、どんなフラグも悪気なくへし折ってきた。結果、そうやって何人もの恋する乙女たちを泣かせてきたのだ。
だがフリーナは、どんなに好意をスルーされようが、フラグをへし折られようが、簡単に諦めたくなかった。
そうと決まればフリーナの行動は早い。
毎日デイリー任務のようにヌヴィレットの前に現れ、幼い子供でも理解できるような、あからさまな好意をヌヴィレットへと伝えた。
情熱的に、そしてロマンチックに。
まるでプロポーズのような愛の告白をし続けた。
かつて水神を演じていた頃のように大胆にーーー多少我儘に振る舞えば、彼はフリーナを見て「仕方のないやつだ」と呆れながらも、最終的には絆されて付き合ってくれるのではないかと、僅かながらそんな狡い望みも込めて。
告白の回数がまだ一桁のうちは虚無だった。告白に対して何も反応を示さず、無言でフリーナを見つめ続けるヌヴィレットと、羞恥に耐えきれず真っ赤な顔で脱兎の如く走り去るフリーナという、なんとも言えない微妙な空気に、見ていた周りの人々も少々困惑していた。
しかし10回目の告白をした日、ヌヴィレットはいつものようにフリーナを見つめながらも、初めて反応を示した。そして、「最近よく私の前で行われているそのパフォーマンスは次の舞台の練習か
…
?」と少々引き気味にフリーナへと問いかけたのである。
まさか本気の告白だと受け取られていなかったという事実にフリーナはショックを受けた。しかしフリーナは負けない。これは演技ではなく本心なのだとフリーナが告げると、ヌヴィレットは困惑の表情を見せた。そして暫く黙り込んだ後、あまりの気不味さに気を遣わせてしまったのか、この日はやんわりとNOを返された。
だが、ヌヴィレットは慣れない状況に困惑しているだけで、拒絶の反応は示していなかったことをフリーナはポジティブに捉えた。これからもめげずに告白をし続ければ、いつか彼が振り向いてくれるかもしれない!と期待をしながら、翌日以降も毎日ヌヴィレットの元へ通った。
しかし、結果はご覧の通り全敗。0勝964敗。連敗記録を更新し続けている。
どんなに趣向を凝らした演出で告白をしても、ヌヴィレットの回答は毎回決まってNO。
そう、ヌヴィレットはフリーナを恋愛対象として見ていなかったのである。そもそも、ヌヴィレットには恋愛感情がない。この告白という行為の回数が3桁を超えたあたりから、彼の迷惑になっているのも分かっていた。ヌヴィレットが恋愛感情を理解出来ない状況が続く限り、この恋は叶わない。このままではずっと、何千、何万年後も。
だけど、ーーーいや、だからこそフリーナは彼に告白することをやめられなかった。
毎日大好きな彼に会い、嘘偽りない愛を告げる行為を続けることで、花吐き病の進行が驚くほど緩やかになったのだ。
その理由は分からないがーーー未だ恋が叶わずともフリーナが直向きに希望を持ち続けていることで、想いを拗らせていなかったからかもしれない。
そして何より、彼がフリーナの告白を受け入れない理由に、彼なりの優しさを感じてしまったから。
ーーー彼の中に、愛はある。それなら恋だって、いつか
……
きっと。
ゆえにフリーナは、ヌヴィレットに会えなくなってしまうまで諦めることができなかったのである。
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