猫は、家屋の中に入っていった。古い家屋だ。家の玄関だと思われる場所の扉は、細く隙間が開いている。猫はその隙間から家屋に入ったらしい。家の中は、真っ暗で何も見えない。ジャミルは、スマホのライトでそこを照らしてみた。土でできた玄関のような場所に、銀色に光るものが見える。恐らくそれは、ジャミルの髪飾りであろう。手を伸ばすが絶妙に届かない。レオナの助けを借りても、だ。
魔法が使えないため、そこにある鈴を引き寄せることもできない。
「
……諦めて中に入るしかねぇんじゃねぇか?」
レオナが呟く。扉を横にスライドさせると、重そうな木の扉は、すんなりと開いた。
二人は、建物の中に入る。その時だった、唯一の出入り口であったそこがピシャリと閉まったのだ。再び開かないかと二人で試してみたが、扉はびくともしなかった。
「おい、あそこ」
レオナがスマホで、2階に繋がる階段を照らす。階上に上がる猫の足音。近くまで行くと、猫の通れるような細い隙間しか開いていない。2階に繋がる扉は、ゲートのようなもので塞がれている。ゲートには、番号を合わせるタイプの南京錠がかけられていた。
「2階に南京錠、ですか」
ジャミルはじっとそれを見つめた。こういった家屋で、2階に登る場所に南京錠を仕掛けていることは珍しい。
「ここでいても埒があかねぇ、家の中を探索してみるぞ。他に、出口があるかもしれねぇだろう」
レオナは言って、スマホのライトを廊下に向けた。
「あ、危ない!」
思わずジャミルが叫び、レオナは足を止める。
床に大きな穴が空いていた。こういった家屋は、朽ちるのが早い。老朽化に伴って、床のあちこちに穴が空いているのだろう。二人は、床をライトで照らしながら、入れそうな部屋を探していく。
「この家は、中庭があるんだな」
レオナは呟いた。ロの字型になっている屋敷を囲むように、中庭がある。中庭の出入り口はガラス戸になっており、そのガラス戸に鍵がかかっているため、中庭の中に降りることはできない。中庭の中央には、大きな木が植わっており、満月に照らされて桃色の花が、咲き誇っている。
「あの花、この辺にはない花だ。授業で聞いたが何という花だったか」
「アンタも真面目に授業を受けることがあるんですね」
「
……おい、バカにしてんのか?」
レオナの低い唸り声が聞こえた。
「おっと、ここは穴が空いているな。どうやらここまでだ」
移動が可能な場所は、家全体の中で少ししかない。部屋にして、三部屋といったところだろう。玄関の右側に続く、物置のような部屋、玄関のほぼ向かいにあるワシツ、と呼ばれる畳の部屋、そして、玄関の左側にある部屋。ここは炊事場のようだ。
「まずは、この部屋を探索してみましょうか」
ジャミルの言葉に、レオナは小さく頷いた。
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