碧月
2026-01-28 20:55:17
14637文字
Public 満月の裏側
 

満月の裏側(1)




「竈(かまど)って言うらしいですね、これ」
ジャミルは、部屋の奥にある炊事用具を照らした。
「見てください、レオナ先輩。ここに住んでいた人間は、随分背が低かったみたいです」
ジャミルは竈の隣に立ってみた。ジャミルが立つと、その竈の低さが際立って見える。
「ほら、しゃがまないと、配膳ができない」
ジャミルが膝をついて屈んでみせる。確かに、この竈の高さは、二人が思ったよりもかなり低かった。
「下に穴がある。そこから火を起こして、調理をするんだ。……おそらく、火力を見ながら調理ができるように設計されたんだろうよ」
レオナは、その様子をじっと見ていた。
「それより、こっちに気になるモンがある。見てみろ」
レオナがスマホの灯りを別の方に向ける。そこには小さな桶があった。
桶には水が張られ、ちゃぷ、と音がしている。その水は濁っていて底が見えない。その側に置かれた竹のかごには茶碗や食器が置かれている。

「随分と、深い皿ですね」
茶碗の形状を見ながら、ジャミルは呟いた。
「コップに、皿に、それから、……この棒は?」
「ハシ、だ。二本一組で使う。こういった家に住む人間は、ハシを使って食事をしていたらしい」
よく見ると、長さの違うハシが、6本、二本一組で使うとすると、3組ある。湯呑みも三つ。他には、同じサイズの深みのあるオワンと平皿が3枚ずつ。そして。
……ん?」
チャワン、と呼ばれる皿を、ジャミルはじっと見つめた。これだけ、数が違う。大、中、小の大きさの違う皿が、綺麗に洗われ、3つ重ねられている。それと離れたところにもう一つ。隅に、土で汚れた茶碗があった。他の新品のような茶碗と違い、その茶碗は、縁がギザギザと欠けている。ジャミルは、そっと、その茶碗をひっくり返してみた。
「汚いぞ」
レオナが、ジャミルにそう声をかけた。レオナが言った通り、その茶碗は汚い。内側にはカピカピに乾いた米粒や、野菜くずの切れ端がこびりついている。

「思った以上に汚ねぇな。猫の茶碗か何かか?」
それを覗き込んだレオナは、そう声をかけた。確かにその内側は、まるで舐められた時のように綺麗だ。
……この皿が猫の皿?」
ジャミルは、首を傾げた。

炊事道具の探索を終える