ぱら子
2026-01-13 10:45:37
26376文字
Public
 

愛があるが故に

【ルカキリ】現パロで催眠術掛けられる🕯の話がやりたかった



医者をすぐさま呼んで一旦仕事に戻り、夜にまた病室を訪れた時、フリンズはベッドのリクライニングを上げて本を読んでいる所だった。彼はファルカに気づくと本を置いて「お疲れ様です」と声を掛けた。
「調子はどうだ?」
「まだあまり食事が入りませんが、大丈夫ですよ。お医者様も特に異常はないと」
「そうか、良かったな!」
久しぶりのフリンズとの会話に顔がファルカは顔を綻ばせる中、フリンズはなんだか浮かない表情をしていた。「どうした?」と声を掛ければ、彼は身を起こしてファルカに近づき、そっと首の触れる。あの首を絞められた時の痕は今はすっかり消えていた。
「すみませんでした。あの男に操られていたとはいえ、僕は貴方を……
震えながら声を潤ませるフリンズにファルカは首を振る。
「いや。それを言うなら俺だって、刑事やってんのに何も気づかないわ、お前にそんな怪我させるわで謝っても謝りきれん」
首に触れていた彼の手に自分の手を重ね、彼の目元に盛り上げる涙を指で掬ってやる。そして未だ顔に悲痛の色が現れる彼に優しく微笑む。
「俺はなぁフリンズ。お前が撃たれたあの時、かつてないほどの恐怖を感じたんだ」
目を閉じれば、鮮明に光景が蘇る。長年刑事をやってきて仲間が怪我する所なんてたくさん見てきたはずなのに、フリンズから流れる血を見て彼を失うかもしれないと思った瞬間、奈落の闇に突き落とされるかのような感覚がした。病院で治療が終わるのを待っている時も、生きた心地がしなかった。
「お前が本当に死んだら俺はこの先、立ってられないんじゃないかとも思ったさ」
それほどまでにフリンズを愛していたから。愛するが故に弱りかけていた。
そんな時、ウェンティがした愛の話を思い出した。愛は人を弱くも強くもする、君はどうなりたいのか。
ファルカはその問に答えを出す為にフリンズの目を真っ直ぐに見つめる。
「愛するものがあるからこと強い男になりたい、いや必ずなる。そんでこの先にあるやもしれん危険から町のみんなも、フリンズも、護り通すと誓う。だから、改めて言わせてくれ」
そう言ってベッドに座る彼に向かって片膝をつき、懐に入れていた小箱を取り出して開く。そこには小さな黄色い宝石が一つ埋まったシンプルな指輪があった。
「キリル、俺と結婚してください」
ファルカのプロポーズにフリンズは静かに目を閉じる。胸の奥底が熱く泡立つ感覚に口角を上げて目を開き、箱を持つファルカの手を両手で優しく包む。
「僕だって貴方を失えばどうなるか分からないほどに貴方を愛してるんですから、今更断るなんて選択肢はありませんよ。強くなりたいと言うのなら僕もお供します。二人で一緒に歩いていきましょう」
その言葉にファルカはフリンズを抱きしめた。傷が痛んで少し顔を歪めたが、耳元で聞こえたファルカの鼻を啜る音にフリンズもまた満月の瞳を潤ませて彼の背に手を回す。
二人だけの静かな病室の窓の外では、二つの星が寄り添うように光り輝いていた。