せいら
革命を説くくちびるが夕闇に紛れて低く歌う旋律
【選評コメント】
★一目見た瞬間から好きです。ララバイ・鎮魂歌・望郷の歌あたりを歌っていてほしい
……
高らかに歌う革命歌ではないのでしょう、たぶん歌っている彼(彼女?)に近い者しかその歌を知らない。あるいは誰もそれを知らない。立場上、心の柔らかいところを見せることのできない人間の、物寂しく、気高いシルエットが見える気がします。それ故に求心力のある人なんだろうな、とも。──南天
★申し訳ございません、原作はわかりませんでした。私は「革命」という単語にどうしても血の匂いを感じます。そしてやはり血の匂いを感じる「夕闇」という言葉がそれを引き立てているように感じました。革命を説くからには普段はきっと厳しい言葉の多いくちびるなのでしょう、しかし夕闇の中、その人はどんな歌をどのような気持ちで歌うのか、想像を掻き立てられるお歌でした。──水川怜
●サウンドホライズンかタクトオーパスかな、と思って読みました。切なさを感じます。──月ノ華
●「革命を説く」のと同じ口が、「低い」音楽を奏でる。そのどちらもが語り手の人となりであり、表裏一体の真実でしょう。フィクションの世界で生きているであろう語り手の、血の通った人間としての厚みを感じました。──おかのきくと
●「革命を説く」強く、激しく時に鼓舞しておそらく多くの熱や羨望を浴びているだろう人が周囲の目から少し離れた瞬間に見せた姿にハッとして詠んだ歌かなと想像しました。「低く歌う旋律」に普段のその堂々とした大人(少なくとも声変わりしているくらい?)の言葉とその歌声が同じくちびるから生まれるギャップにびっくりしたのかな。小さな子が歌うような童謡を想像しました。相手に対する一心な眼差しが伝わる歌だと思います。──山と森と街
●もうこのキャラクターがカッコいいことが伝わってきます、知らないキャラクターの濃縮されたいいところを味わえるのは二次創作短歌の醍醐味だと思います。自分を鼓舞するような歌でも良いですし、命懸けの革命の前では不似合いな、なんでもない日常の歌を歌っていても良いなと思いました。──四月
●視覚と聴覚に訴えかけてくる歌です。主体は何を歌っているのでしょうか。「改革」という熱を感じさせる単語で始まりながら、どんどん全体の印象が暗く冷たく低くなっていき、不穏な気配で終わるスリリングな構成。「夕闇」「歌う」という単語が時間の経過を意識させます。主体は改革の成功を本当に望んでいるのだろうか、実は権力者側の工作員ではないか、など楽しく想像しました。──ゆの
●革命を説く役割からひととき解放されて、休息の時間を過ごすシーンを想像しました。──toico
●「革命」という初句から始まる歌が鮮烈な印象です。広場や街頭でビラをまき、革命を促す演説をしている主体の熱を帯びたまま、下の句ではそのくちびるが低く静かな旋律の口笛を吹いている、あるいは歌を口ずさんでいる。そんな情景を思い浮かべました。
昼間には革命を熱く説いていたくちびるが、夕方にはその闇にまぎれるようにして今度は静かに歌っている、そのギャップごと歌に描かれているのが「革命」という語の強さに負けない物語性があって格好いいと思います。
黄昏の橋の下に身を隠し、ひそやかに歌う姿は一枚の絵のようで美しい。それはどんな歌なのかまでは書かれていませんが、革命とは真逆の、あかるく穏やかな子守歌のようなものであったり、恋や愛を唄ったものであったなら、よりドラマティックで、主体という人物像にとても興味が湧きます。
革命家であっても、ひとりの人間でもある。そんなふとした瞬間をとらえた歌だと読みました。
何となく、フランス革命の時代を想像しました。──ナツ
●重厚な雰囲気があって格好良い歌だと思います。民衆を鼓舞し、人から人へ情報を伝達させていく歌ってなんとなく革命と相性が良い気がして(これは個人的にミュージカルとかの印象が強いだけかもしれないです)、そういう内容を「短歌」という媒体で歌い上げられているのが面白いと思いました。時間帯としては日没が迫っている頃かと思うのですが、くちびるが見えないくらいの状況はガチの闇では?という点は気になりました。夕景はあくまでも喩えで、社会が暗く傾いていくなかで顔の見えない匿名の人間が歌い始める革命歌、という状況とも読めるかもしれません。──池田いくら
●情景がとても格好良いですね。革命の先駆者が密かに歌を歌う、とても好みで素敵な場面です。──海月雪夜
●〈革命〉と歌(旋律)が〈くちびる〉でつながるところに味わいを感じてとっても好きです。ギャップでもあり地続きでもあるという印象で、奥行きのある風景が自然と立ち上がってくるような
……
〈説く〉からはそそのかすようなニュアンスも感じるのですが、〈説く〉と〈旋律〉が〈くちびる〉の動作としてまっすぐつながる反面、屈折の感じられる〈説く〉と夕闇に紛れつつも伸びてゆく〈旋律〉で対比としても感じられて、順接と逆接が同時に成り立っているような、不思議だけれどすごく馴染む感覚にうっとりしてしまいます。〈革命〉は理屈によってなされ、〈旋律〉はその外側にある、というようなイメージ。とっても好きな歌の一つです。──Dr.ギャップ
【作者コメント】
原作:『ヒプノシスマイク
—Division Rap Battle
—』
主要な悪役のひとり、東方天乙統女について詠みました。乙統女は男性中心の社会からの革命を成し遂げた、いわば強いフェミニストであり、わたし自身の政治的な思想とは相容れないことも多くあるのですが、どうしても嫌いになれないキャラクターです。総理大臣という政治のトップであると同時に、その地位をめざすからこそ切り捨てなければならなかった、彼女自身の子供を深く愛しています(すくなくともわたしはそう思っています
……!)。「旋律」は子守唄のつもりですが、これでは子守唄と伝わらなかったなと今頃後悔しています。よく語られる「良い母」のテンプレートになってしまわないか、その点はとても悩んだのですが、きっと総理大臣になるまでの間、魑魅魍魎のうごめく政治の中で、将来への不安や現在の世界への絶望を抱えながら子供にそっと子守唄を歌ったこともあるだろうな、と想像しました。彼女はなにより「言葉」の力を信じているキャラクターでもあるので、きっと音楽や歌が好きなんだと思います。
このあたり気になった方は、ぜひヒプマイの「中王区 言の葉党」のドラマトラック「流転は篠突く雨でも流せない」「山雨来らんと欲して風楼に満つ」を聴いてみてください
……!音楽から入りたいかたは「Femne Fatale」という曲を。どれもapple musicなどのサブスクで聴けます。──せいら
(おかあさん)あれがあなたの愛だった 俺だってそう信じてた、けど
【選評コメント】
★最後の「けど」が効いてますね!何か思っていたことや言いたいことがあっても直接母に言えない子だったのでしょう
…。切ない
…。ヒプマイのだいすくんを思い出しました。──石ころ
●家族からの異常な愛情は、成長して初めて分かるもの。逆に言うと、語り手は大人になりかけているか、なってしまったかのどちらかでしょう。信じてきたものが、崩れてしまう。こんなに痛ましいこともないと思います。──おかのきくと
●初句を()で囲み、ひらがなにすることによって、幼さやいじらしさを感じます。主体は一人称が「俺」なので、おそらくある程度成長した状態であると考えられ、初句とのギャップに胸が締め付けられます。自然なフレーズが短歌の音の中に嵌められているのが素晴らしいと思いました。──四月
●愛だと信じていたものは愛ではなかった。母親の愛がどのような形のものだったのかは分かりませんが、主体はかなり以前からおかしいと気付いていたのではないでしょうか。それでも必死に「信じて」きたのに、もう誤魔化せない決定的な何かが起きてしまった。絶望と、それでも絶ちきりがたい母への愛に混乱する主体の胸中が「けど」に表れています。──ゆの
●小説のシーンの一節を切り出したような独白で、「あれ」を読み手が知る術はありませんが、自分のためだと思っていた行動に別の思惑があったことが判明してショックって感じでしょうか。後半からは主体がもうしっかりした大人であるような印象を受ける一方、初句の呼びかけが平仮名表記からは幼い雰囲気を感じます。主体の母親との時間はその頃に終わってしまったのでしょうか。──池田いくら
●一人称が「俺」の主体が「おかあさん」と呼んでいることにより母親への心理的距離の遠さや、幼い頃から変化していない畏怖と依存を感じました。──谷澤
●〈信じてた〉と一度言い切ってから〈、けど〉と接がれることに切なくなってしまいます。かつて確かに信じていた、けど、という、〈信じていた〉という断定では終われない葛藤。〈俺だって〉が指すのは「あなた(母親)がそう言っていた」ということだと考えます。〈けど〉と続くのは、〈俺〉の世界が母親の影響下にあるそれから広がり、他の価値観や考え方に触れたためでしょう。
色濃く感じる葛藤や苦悩とともに、そんな一首が〈おかあさん〉という幼さを思わせる呼びかけで始まるところに胸が詰まりました。かつてはそう呼んでいたのか、今もそう呼びたいのか。──Dr.ギャップ
【作者コメント】
原作:『青野くんに触りたいから死にたい』
もう一首でも「母」を詠んだので、どうせなら母親をテーマに詠みたい
……と思って考えついたのが、大好きであり畏怖しているホラー漫画『青野くんに触りたいから死にたい』の母親像でした。いろいろな意味で原作が「これからどうなっちゃうの!?」な展開の真っ最中であり、もうこの歌ではほかに捕捉するようなこともない気がするので、背景などはあまりお話ししません(できません)が、『青野くん』における家族の描写というのは物凄いので、気になった方はぜひ読んでみてください。ホラー漫画なだけあり、じとっと怖いのですが、基本的にホラーを楽しめないわたしも大好きです。あとものすごく短歌と相性が良い作品な気がするので、青野くんに触りたいから死にたい二次創作短歌増えろ〜!の気持ちです。──せいら
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